29 斜め下の決着
速報 都道府県位置氏、なんかPVが4桁になってビビる。
読んでくださりありがとうございます。
それとブックマークと評価といいねもありがとうございます。
「おやおや、バターになるつもりは無いようですねッッッッッ!」
ピットインから菊池が飛び出すと、雇われ店長はすぐさま背後を取る。律儀にもアクティブシザーでブレーキをかけ、速度を菊池に合わせる。
「バターってのは食べるもんでしょうが」
菊池の選択してちくわは、カツオ+ビンチョウ。ともに100%。シートはレフトスカート。カツオが前、後ろはビンチョウ。
ビンチョウマグロ。
ビンナガと言う呼び名のが有名かも知れない。
マグロの仲間で他に比べて小型であり、カツオと同じくらいのサイズが市場に揚がる。最も大きな個体でもでも140cm、60Kgと言われている。
外見における最大の特徴は長い胸ビレだ。トビウオほどは目立たないが、他のマグロとの違いは明白だ。
世界中どの海でも水揚げされ、唐揚げやソテーなど火を通す料理に向いているとされている。刺身でも食べられる。他のマグロよりも色は白めだが、柔らかく味も淡白なので(作者はサッパリして結構好きなのだ)醤油に生姜やレモンをかけると味が引き立つ。脂が乗っているとねっとりした食感を味わえる。
(日本での)旬は12月から2月とされている。北の漁場で脂を蓄えるからだ。
刺身で食べたい方は、旬を狙うか冷凍物を買うと良いだろう。当たり外れも多いが。
冷凍物は解凍に失敗さえしなければそう悪くない。遠い漁場では、漁獲してすぐ内臓などを切り取り急速冷凍する。冷凍には寄生虫を殺す目的もある。
生食と聞くと無条件で味が良かったり健康的に思えたりするが、冷凍だからと言って、品質が劣化するわけでは無いのだ。むしろ品質を維持するために冷凍する。
さて大きく話が逸れた。元に戻そう。
ちくフルでのビンチョウの特徴は、鋭くウイリーができて摩擦耐性が低いことである。
ウイリー重視もあるが、菊池が半分だけビンチョウのちくわをなぜ選んだのか。それは摩擦耐性の低さを望んだからだ。
小刻みにウイリーして後半分のビンチョウのリソースを削り、ちくわを短くして重心を変えるつもりなのだ。
ポンポコピー、ポンポコピー、と背後に付いた雇われ店長のチャージ。デコトラを避け、時々意味無さげなウイリーでちくわを擦る。狙い通りに菊池のシートが相対的に背後に下がった。
「いったいどこへ行こうと言うのです?」
クエストの目的地はスタート地点。
だが菊池が向かうのはピラミッドだ。地形と罠で雇われ店長を追い詰めるつもりだ。
いよいよ見えて来た。そろそろ見せねば。
右側のコントローラーをいったんシートに収納。フリーになった右手でストレージから『それ』を出す。
「その動画デバイスを渡すのですッッッッッ!」
あえてウイリーで砂に擦り速度を落とす菊池。左側から雇われ店長が回り込み手を伸ばす。
獰猛に微笑んだ菊池は、動画デバイスを咥えて右側のコントローラーを手に取り、ウイリーしながらクロック。
雇われ店長の反応は遅い。アクティブシザーは2つとも蟹100%ちくわの前方に張り付いたまま。
菊池のちくわの前後が入れ換わる。雇われ店長は2つのハサミでブレーキをかけたが、大きくつんのめり前転。ここでアクティブシザーが動き、雇われ店長が落ちくわしないようにちくわを支え元の体勢に戻した。
予想よりも脆い、と菊池は思った。同時に歓喜した。こんな簡単に終わってたまるか。
敵がもたついている間に、計画通り菊池はピラミッドを登ることに。12チクワンに達するまでピラミッドの周囲を疾走り、十分な加速を得てから突っ込む。
ピラミッドは高さ30センチくらいの長方形の石材を積んで建てられていた。ウイリーして登ると、ちくわの底を石材が削る。アスファルトほどでは無いが、リソースと速度が削れる。
「逃がすかああああああああッッッッッ!」
飛んで火に入る夏の虫、いや……蟹ッッッッッ!
ポッポッポッポッポッポッポッポッ……
ちくわを削りながら菊池は頂上を目指す。
ポッポッポッポッポッポッポッポッ……
菊池を追って雇われ店長はなりふり構わず登る。
まだ速度が上回る菊池は頂上直前でダウン。速度が緩む。蟹100%のちくわが迫る。
そこで。
チェキラ、チェキラ、チェキラ、チェキラ、チェキラ……
ラップでもヒップホップでも無い。
菊池が頂上間際から投げた動画デバイスが、ピラミッドの上を転がる音だ。
「もらったああああああああああああああッッッッッ!」
雇われ店長は急ブレーキ。
チェキラ、チェキラ、チェキラ、チェキラ、チェキラ……
菊池に後1歩のところで停ちくわ。
チェキラ、チェキラ、チェキラ、チェキラ、チェキラ……
あくまでも雇われ店長の目的は動画デバイスなのだ。
チェキラ、チェキラ、チェキラ、チェキラ、チェキラ……
ピラミッドに降りた雇われ店長は、自らの手でちくわを方向転換しようとするが。
「こうまでチョロいとはね」
菊池はダウンを止める。持ち上がっていたちくわの後方が沈んだ。カツオとビンチョウのハーフ&ハーフはまだ火を吹いている。
チェキラ、チェキラ、チェキラ、チェキラ、チェキラ……
火を吹くちくわがピラミッドに着地。ちょうど背後には……
《雇われ店長がリタイアしました》
ちくフルは全年齢向けだ。
プレイヤーにしろ、NPCにしろ、バックファイアを浴びた時点でポリゴンに変わり、崩れて粒子を残して消える。運転手を失ったちくわは、リソースを失った時と同様に燃えて灰になり崩れて消える。
チェキラ、チェキラ、チェキラ、チェキラ、チェキラ……
自分が投げた動画デバイスに向けて、菊池はちくわを疾走させる。
ポッポッポッポッポッポッポッポッポッポッポッポッポッポッポッポッポッポッポッポッポッポッ……
削れる音がうるさい。マスドライバーから飛び立つシャトル並みだ。
「もう少し何とかならなかったのかしらね」
チェキラチェキラと転がり落ちる動画デバイスの上を疾走すると、予想通りそれは飛び跳ね菊池の手元に落ちる。
この動画デバイスは駿馬の弟子から貰った方だ。自身の動画置場にコピーを保管してあるが、失わずに済むならそれに越したことは無いだろう。
ちくわのリソースはカツオが残り87%、ビンチョウが残り11%。
本来なら雇われ店長が動画デバイスを拾うタイミングにチャージするつもりだった。
「消化不良だわ」
まだ何かあるかも知れない。菊池はピットインに戻ることにした。
オッス、オラ県位置。
みんなにオラから悪いニュースがあるんだ。
9月の半ばくれえに、オラ入院すっぞ。
だいたい3週間くれえかな。
ドラゴ●ボールの使い過ぎで、どうやら体調を崩しちまったみてえでな。
ひょっとしたらパチ物だったのかもしんねえ。7個じゃなくて13個だったし。
オラ……サ●ヤ人じゃなくて地球人だから痛みに弱ぇんだ。
だからいっちょ入院してくんぞッッッッッ!
ここまで読んでくださったみんなッッッッッ!
入院中は週イチくれえで予約投稿しとくけども、誤字脱字とか致命的な勘違いとかコンプライアンス的にやべえ表現を即座に修正できなさそうだ。
感想にも返答できそうにねぇッッッッッ!
済まねえッッッッッみんなッッッッッ!
そんじゃ地球を頼んだぞッッッッッ!