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24 砂場に埋まっている動画デバイスを拾え!

効果音は森●レオさんで脳内再生してくださると良いかも知れません。

 時間に余裕はある。何か無いかと公園内をグルグル回った。


 ジャングルジムに立てかけてあるのは……竹刀。どんなシチュエーションだ。


 シーソーには両端に座布団がくくりつけてあった。


 回転遊具とブランコには何も乗っていない。他も何も無い。


「竹刀と座布団を上手く使って……いや無理だろ」


 何らかのギミックがあるのだろうとは思うが、難解過ぎだろう。


「シナリオライターァァァァァァッッッッッ!ふざけてんのかッッッッッ!」


 ブチ切れた菊池は公園を暴走した。リアルで相当鬱憤が溜まっていたのだ。パラリラパラリラと叫び、『不運(ハードラック)(菊池音頭)っちまいなァ!』とか『ヒャッハー』とか『汚物は消毒』とか叫んで遊具の隙間を無難に疾走しまくった。


 錯乱し、ジャングルジム破壊ボーナスいただきじゃあああ、とばかりに特攻。しかしビクともしない。ちくわは跳ね返り、あわや落ちくわである。






 ズギュウウウウウン!





 ちくフルらしからぬ派手な効果音で菊池は我に返った。


 まず思ったのは生み出してしまった黒歴史の編集。


 次に効果音の出どころ。ジャングルジムへの衝突はいつもの『ポンポコピー』である。『ズギュウウウウウン』は別口だろう。


 一般的なゲームであれば、何らかの爆発。または硬い物への貫通。西洋ファンタジーなら火属性魔法。特撮だったら名乗りを上げた5人の後ろの大爆発。ミステリならば……なんだろう?


 しかし菊池がログインしているのは、愛すべきバカゲーのちくフルであった。小学校低学年向けの名残が薫る効果音だ。


「考えるのよ菊池白菊……『ズギュウウウウウン!』で小学生を爆笑させるなら……」


 名探偵……と言うか迷探偵菊池は、ジャングルジムの周りを疾走しながら推理する。





 小学生が喜ばせるなら排泄物ネタが鉄板。だがちくフルには排泄は実装されていない。つうかR18じゃないと無理。


 いや例外はある。奇妙な冒険漫画でキスした後に泥水で唇を洗うくだり。当時の(非常に……マニアックな)小学生は(誰にもわかってもらえない事実に気付かずに)唇を洗う真似をしたものだ。その時のキスの擬音。


 ……無人の公園にキスの要素は1ミリも存在しない。存在しない行為に効果音が付くはずが無い。


 事件は迷宮入りするかと諦めかけたその時、ワトソン役未満の洞察力を持つ菊池は発見した。地面に横たわる竹刀をッッッッッ!


 竹刀の上をちくわで疾走。


 ズギュウウウウウン!


 ちくわのバックファイアで竹刀が吹き飛んだ。この動画はバズる。いや違う。


「攻略法が見えたッッッッッ!」


 菊池はちくわで砂場の上を疾走する。


 ズギュウウウウウン!


 バックファイアによって天高くご都合主義的に砂ごと吹き飛ぶ動画デバイス。菊池は旋回してからシーソーへ。宙で受け取ろうとシーソーをジャンプ台がわりに飛ぼうとして……シーソーが傾き失敗。ストンと地面にちくわを落としたところに、狙ったかの如く動画デバイスが降って来た。ただし砂ごと。






《動画デバイス【動かぬ証拠 1/3】を手に入れた》







「ぺっぺっ……砂が出ないッッッッッ!」


 ちくフルに排泄は実装されていない。すなわち、口から砂が出ないッッッッッ!


「うるあああああああああああああッッッッッ!」


 諦めた菊池はストレージに動画デバイスを入れて、意気揚々と公園を出る。


 しかし。





 トラックトラックトラックトラック……


 トラックトラックトラックトラック……


 トラックトラックトラックトラック……





 唐突に積極性を増したデコトラが四方八方から菊池に向かって来る。


 ちくわのリソースは前76%、後73%。余裕はまだある。このままゴールへ向かうべきか。ピットインに戻る理由は……


「無いはずよね」


 疑っているうちに正面から向かって来たデコトラを、どうにかギリギリで回避。2時の方向からのデコトラは、当たる直前でとっさにリバースした。半回転するちくわの先端がタイヤと給油タンクの間を通り、上手くすり抜ける。


 怪我の功名だ。これまで出たデコトラは車高が高く、シャーシと地面の間に隙間がある。斜め方向から来る避けきれないデコトラは、クロックかリバースを使うことでちくわの先端を入れてすり抜けられそうだ。


 デコトラは複数の車種があり、燃料タンクは左右どちらかにある。どの車種であっても車高が高いので、跳ねない限りぶつからないだろう。


 迫るデコトラを菊池悠々とかわす。それでも彼女をつけ狙うデコトラは方向転換を試みるが、大型車両の宿命か小回りが利かず遠心力に負けて転倒。他を巻き込むデコトラもいる。


 ホーホケキョ!


 ホーホケキョ!


 ホーホケキョ!


 ちくわをダウンさせ背後からの爆風を防ぐ。きっと地獄絵図なのだろう。効果音のせいで緊迫感が全く無い。





 大通りに出る。すでに市街地に入った。標識に【ハマグリウエストポート】とある。大通りのずっと先には『クバリ』と書かれた大きな看板が回転するのが見えた。


 菊池はちくわで進む。もうアスファルトの路面だ。これまでのようにダウンとウイリー使い放題とは行くまい。





 トラックトラックトラックトラック……


 トラックトラックトラックトラック……


 トラックトラックトラックトラック……


 トラックトラックトラックトラック……





 デコトラの群れが隊列を組んで4車線を逆走する。速い。


 菊池は左に寄って歩道へ。左手は学校だろうか?


 ちょうど良い。Mリスペクトでフェンスを登り、空へ。そのまま重心移動で学校の敷地に入り着地。


 デケデケデケデケデケデケデケデケデケデケ……


 フェンスが吹き飛ぶ。デコトラの大群が追って来たのだ。

非常にマニアックな小学生は誰のことかって?



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