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23 KA☆SE☆KI破壊ボーナス

いつも『いいね』をくださるみなさん、ありがとうございます。

「まずは近場の怪しい場所からいこう」


 菊池公園は怪しいが遠い。乗って来たちくわもリソースがいくらかある。貧乏性では無い。ちくライダーなら可能な限りちくわを疾走させる。引き合いに出すのはおこがましいのだが、競走馬を育成する人々の心境に似ているかも知れない。


 ピットインの回りにも建物がある。万が一すぐそばに、残った『1/3』の動画デバイスがあったら目も当てられない。別の動画デバイスが出て来る可能性もある。


 まずはトタン屋根の廃屋にダイナミック入室。破壊によって吹き飛んだ薄い壁が、溜まった砂に描かれた不可思議かつ風情ある紋様を崩す。


 制作者……もう少し風景を楽しませろやッッッッッ!と心の中で毒づきダイナミック退室。


 次は博物館らしき建物。建物が博物館である根拠は、『博物館→』とか『博物館←』とか『この先100m 博物館』とか、そういう錆びた看板が多数存在したからだ。


 開きっぱなしで閉める手段の存在しない入口で減速し無難に入室。公式イベントのラリー大会でもそうだったが、砂地でダウンやウイリーしても消耗は少ない。そのわりに大きく減速する。


 博物館のエントランスには劣化していないポスターがあり、『デコトラの化石がやって来た!デカイぞッッッッッ!』とキャッチコピーが書かれていた。


「突っ込まないから……突っ込まないからッッッッッ!」


 低速で奥に進むと、大きな恐竜の化石が風化に負けず仁王立ちしている。


「『デコトラザウルス』って何じゃあああああああああッッッッッ!」


 ワールドクエスト受注を隠すつもりは無かった。むしろ使命感を持って動画を公開せねば。この感情を誰かと共有したいと菊池は決意した。


 デコトラザウルスの脇を抜ける。奥は砂で埋まっていた。


 いかにも何かありそうなデコトラザウルスを破壊すれば、KA☆SE☆KI破壊ボーナスとか出て動画デバイスが出現するのだろうか?


 引き返すついでにちくわをぶつけてみたが……無残な結果に終わる。リアルだったら重罪だろう。菊池は慌ててその場から逃げた。……プレイ動画は編集可能だ。


 他には、ショールームが完全破壊された乗用ちくわ店や、ちくわ専門料理店を探索したが、プレイ動画を編集して無かったことにする必要ができてしまった。





 とうとうこれまで乗って来たちくわのリソースが前後合わせて3%を切った。菊池はピットインに戻り、ひとっ風呂浴びて別のカツオ100%ちくわに切り換えてから探索に出た。


 ピットインの西は岩山の迷路。北側の山から見下ろして、ちくわでの踏破は不可能と判断。


 東はピラミッドがあったが、入口が無かった。ウイリーを駆使して頂上に登ったのに、得られたのは壮大な景色のみ。降りるのに苦労した分がっかりだ。


 それでも収穫はあった。デコトラが迷路やピラミッドに対処できるのか、とても重要だと菊池は考えている。


 ワールドクエストなのだ。ただイワシを届けるだけで終わるはずが無い。デコトラは強敵だが、それ以上が現れる可能性だってある。


 すでに伏線は出た。恐竜にピラミッド。ピラミッドと言えばミイラ男だろう。どちらか、あるいは両方が涌くか、はたまたデコトラの運転席に乗ったり荷台に乗ったりするかも知れない。


「ライターがプレイヤーを『不運に踊らせる』のがちくフルだもんね……」


 ミイラ男がデフォルメされたデザインであるのを、強く祈る菊池だった。食べる時に思い浮かべたらたまったものでは無い。





 ピットインに戻り2本目のカツオ100%に乗り換える。ピットイン周囲の探索は済んだ。1度菊池公園方面へ向かうことにした。


 最短距離で進むと登り坂になっていた。左右から菊池を狙ってデコトラが向かって来たが、すぐさま横転。


「最後の動画デバイスを手に入れたら、いきなりデコトラがパワーアップするかもね」


 砂漠に来てからあまりにもチョロ過ぎる。ワールドクエストはどんなVRMMOでも高難易度と相場が決まっている。


 小学校低学年向けならなおさらだ。保護者にもアカウントを取らせて、夏休みの宿題のように手伝わせるつもりで公式は企画する。商売なのだ。あらゆる業種に言えるが、法に触れなければ利益のためにエグい方法を取るのは当たり前だ。


 血眼になって周囲を警戒する。空、砂、逃げ水、デコトラと砂塵。


 正面に、タイヤを砂に取られたデコトラがいる。何かイベントでもと期待して近付くが、何も起こらず。


 いや、立ち往生するデコトラを囲むように、複数のデコトラが接近し……砂に嵌まった。何かの伏線なのか、と不安になるが、その気持ちを押し殺して菊池は目的地を目指す。






 砂漠に草花が増え、やがて緑の割合が砂のそれを上回る。背の高い植物には何らかの実がなっていて、絶賛撒水中のスプリンクラーがそれを湿らせた。


 デコトラの姿は無い。植物はそれほど視界を奪わない。


 とうとう公園が近付く。やはりデコトラの影は無い。


 端の錆びたフェンスの中に無数の遊具がある。ここか。


 公園の中に入り、鉄棒、シーソー、ジャングルジム、ブランコ、謎の回転遊具、蛇口、とチェック。砂漠ほどでは無いが、土の上は減速しやすい。


 砂場で何かが光った。崩れかけた砂の城に、動画デバイスが半分だけ顔を出している。


「これは厄介だわ」


 ちくわを傾けて拾うのは可能、とは思った。もしも地面に落ちているアイテムを拾う時に、手で触れてしまったら落ちくわにならないか?


 このコースのピットインは特殊な扱いだ。描写しなかったが、地面に降りられる、とヘルプが出たのだ。


 落ちている動画デバイスそのものが地面扱いになる可能性だってある。


「こんなつまらないことでリタイアなんて……」


 絶対にあってはならない。

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