ホセ編
ホセ編
トレインは黒を基調としてシックな趣。
ところどころ錆びついているが味があっていい。
ただ、持つかが心配である。トラブルなく無事につくことを願うばかりである。
センターポールまでの六時間の旅。
文豪!
早速トラブル発生。
儂は皆のためを思って。そうじゃろサンチャゴ。
爺さんが顧問に叱られている。
文豪さん! 私はね……
顧問の小言はかれこれ三十分。
自分を巻き込もうとこちらにいちいち確認を取る。
文豪さんも反省してくださいよ。顧問の機嫌が悪いと何かと面倒なんですから。
サンチャゴよ。儂を見捨てるのか? 悲しいぞ!
そんな大げさな。
儂が…… たぶん…… ちょっとだけ…… 悪かった。
ちっとも反省も後悔もしていない爺さん。
まあ、まあ、文豪さんもこんなに反省しているんですから許してあげましょう。
しかしホセ君。ゲインを目いっぱい使うとは…… 今後に影響するんだぞ。
良いじゃない。文豪なんだもの。ねえサマーマン。
通路を挟んで蓮の甘ったるい声が聞こえる。
我々、アドハーツは二号車に乗車した。
自分と文豪は左側。
蓮とサマーマンが右側。
顧問は自分の席に戻った。
顧問は地元のおばーさんとの相席。
文句ひとつ言わずにじっと座っている。
それに比べて……
海じゃ! 海じゃ!
さっきから騒ぎっぱなし。反省の様子は全く見られない。
文豪さん。抑えて。抑えて。
暴走の気配を感じ取ったので注意をする。
海は良い! あっぱれじゃ!
ハイハイ。
サンチャゴよ。また釣りをしようではないか。
ハイハイ。
でっかい魚を一緒に。
ハイハイ。
文豪のハイテンションに付き合っているほど今は心穏やかではない。
蓮が笑っている。
相手はサマーマン。
いつの間にこんなに仲が良くなったんだろうか。
サマーマン。奴の素顔は全く分からない。
蓮はサマーマンのどこを気に入ったのだろうか。
ハイハイと文豪を宥め、隣の会話に耳を傾ける。
爺さんが大人しくなった。
文豪さん?
お腹空いたのう。
ええ、朝から何も食べていませんからね。
蓮…… 君は?
ライバルになりそうなのはやはりサマーマン。
爺さんは安全パイ。
顧問は興味はありそうだがさほど気にかけている様子はない。
目がヤバイぐらいか。
本命はサマーマン。
マズい展開になっている。
夏……
さっきからこの調子。
夏…… ひもじいよ。
文豪さん。落ち着いてください。もうゲインがないんです。
分かっておる。
あの指輪をゲインに替えるのはどうじゃ。腹が減って仕方がない。
文豪! 私の指輪よ。勝手に売り飛ばさないでよ!
爺さんと蓮が争っている。
私もお腹空いてるんだから。誰のせいだと思っているのよ?
蓮さんであろうぞ。
あんたよ。爺さん!
サマーマンが割って入るも効果がない。
またサマーマンが出しゃばってきた。何者なのだろうか?
蓮よ 騙されるなよ。
うるさい!
顧問の一喝で場は静まり返った。
文豪に限らず自分、顧問と腹ペコに違いなくイライラが倍増。雰囲気が悪くなっていく。仕方ない事とはいえ我慢すれば我慢するほど爆発してしまう。
私ちょっと偵察に行ってくる。
蓮が席を立つ。
顧問編
あれま。あんたもこれかい?
良いだろこれ。
隣のおばーさんが乗り放題のチケットを見せてくれた。
便利になってねー。イチイチ買うのが面倒臭いからね。
どこで買いましたか?
うーん。わたしゃあよくわからんよ。ほれあそこの奥さんにやってもらったから。
二人組のやせ形の女性が窮屈そうに手を振る。もう一人はどっぷり太っており菓子を食っている。
旨そう。いや、いかん。顧問たるものお零れを頂くなど出来ない。
彼女たちはサウスエンドからの観光で五人組。
後ろの席に残りの爺さんが控えている。
あんたらはどういう関係?
親子にも見えんし兄弟や友達にしては年齢はバラバラだし。
無遠慮に入っていく図々しさ。これだから……
我々は旅をしていまして。何を隠そう魔王退治の命を受けまして全国を回っているのでございます。何か役に立つ情報があれば有難いのですが。
おお! この兄ちゃん。立派やなあ。よし、教えてやる。耳を貸せ。
随分酔っぱらっておられる御仁。果たして信用できるのか?
いいか。魔王はお前の心の中にいる。
じゃから自分と向き合うがよろしい。
すみませんね。戯言ですから気にしないでください。
では何か他に?
魔王はセンターポールにはいません。それだけは断言できます。
全国を移動しているそうですがセンターポールとサウスエンドにはいないようですよ。まあ噂に過ぎませんが。どうやら追い出されたとか何とか。
助かります。それだけ限定できれば一歩前進です。
私達の知っている情報はそれくらい。ああ、あんたなんか言ってたよね。
菓子を独り占めしてパンを頬張った状態のどっぷりした女性が反応した。
ああ、魔王を倒すには元気が一番。たくさん食いな!
ありがとうございます。
顧問も空腹には勝てない。
おらが知ってんのは二つ。
喋りながら食べながらといった具合に食糧を離さない。
食うのも止めずしゃべるものだから聞き取りずらい。
はい? もう一度お願いします。
だから! 何でも北の方にそれはそれは優秀な鍛冶師が居てなあ。もぐもぐ。
錬金術師とか何とか。
はあ?
どんなものも金に変えるとよ。
どんなものでも?
そうだ! 鉄でも錫でも銅でも何でもだ。金属ならな。
それは素晴らしい。
ほれ、これがその男の住処だ。
渡された紙切れにはノースエンドの地図が書かれていた。
ボリボリ グビグビ
それとその妻も大変優秀らしくあらゆるものを合成する研究を続けてるんだとさ。
一度会ってみるがいい。
ありがとうございました。大変参考になりました。
俺も何か言うべ。
顔を赤くした酔っぱらいの爺さんが絡んでくる。
このトレインはよ。すぐ止まるだ。それから夜になると化け物がよう。
訳の分からん戯言として受け流す。
続く