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テントで大騒ぎ

アドハーツの面々は疲れからか無口になっていく。


ラクダの足音が虚しい。


文豪の腹が鳴る。


腹減ったのう。

文豪!


仕方ないじゃろ。昼を食ってないんだから。

我慢してよ! こっちまで耐えられなくなるじゃない。

しかし……


揉めてる最中にタイミングよく獲物が。


モンスター出現。

サソリが三匹 かなりの大きさだ。


毒に気を付けて! 猛毒ですよ。


皆が構えた。


儂に任せろ!


尻尾を切り落とす。

よし、これで大丈夫。


文豪は続けて三匹の尻尾を切り鷲掴みにする。


ほれ、見てみ。まだ動いておるわ。

文豪! 止めて! こっちに来ないで!


ははっは。これは焼けば美味しいぞ。

パス。

蓮もわがままじゃのう。では夜にでも。


ゲインが減っていく。


どういう事じゃ?

ここの生き物もやたらに捌いてはいけないと言う事でしょう。


顧問!


勿体ないですから食べますが次回からは気を付けてください。

そんな殺生な!


文豪さん気を落とさないで。

サンチャゴよ。慰めてくれるか。よし、おまえにたくさんやろう。

いえ、遠慮致します。自分はサソリは苦手で熱が出ると困るので。ついでに自分はホセです。


私は嫌よ!

だが他には食べるものなど無いぞ。

私は水だけでいいわ。


その水も貴重でもう残り少ない。オアシスでもあればいいが……


文豪と顧問が話し合った結果少しルートを外れるもののオアシスを探すことにした。


水はサバイバルの基本。もちろん地図も大事だが水と食料の確保が第一だ。


文豪たちアドハーツのメンバーは二時間をかけオアシスに辿り着いた。


人間はもちろんラクダも想定外の長旅と疲れから足が止まってきている。

まもなく限界を迎えるに違いない。


よし、皆。ここらで休憩としよう。

賛成!


ラクダを降りると一斉にオアシスに駆け出していく。


喉が渇いた!

水! 水!

おお! 助かったわ!


辺りは急激に冷えだした。間もなく太陽も沈む。


風が強まった。


どきなさいよ!

蓮! 独り占めは許さん!


文豪さんも人の事言えないですよ。

何? サンチャゴよお主もこちらに入ってくるでない! 


水は皆の者です。

どかぬか!


文豪があっちに行って!

早い者勝ち!


止めなさい! 文豪君も蓮さんもホセ君も大人しく飲んでください。

ほらサマーマンはこんなに落ち着いています。見習いなさい。


水をたらふく飲んだ文豪は寝そべった。


顧問はラクダの世話に余念がない。


太陽が姿を隠し月が現れた。


空は透き通っていて星が無数に煌めいている。


この世界は真実? 虚構?


月は満たされている。


先ほどから遠吠えが断続的に聞こえる。


よし、これ以上の活動は危険です。今日はここまで。明日一番に出発しましょう。


おい! 道具係。テントを出せ!

顧問が仕切り始めた。


テント? 私外では眠れない。肌が荒れちゃう。美容にもよくない。

我がままを言うな。早くテントを出せ!


仕方ないわねー。ほらこの薄汚いのかしら。

テントを張り、寝床の準備をする。


続いて火をおこし、晩飯の支度。


道具袋から缶詰とチョコ、パン。鍋と調味料も忘れずに出す。


サソリを焼き、水草でバランスをとる。


おい、砂も食えるぞ。

止めてよ! 文豪。


蓮は水とパンのみで頑張る。


旨い! このサソリは実に旨い! あっさりしておる。身もぎっしりじゃ!

もう! 大人しく食べなさいよ!


旨いのにのう。良いのか本当にこれが最後の一匹じゃぞ。

誘惑しないで。 


臭いもそこまできつくない。食べてみるか?

冗談じゃない!


仕方ない。サンチャゴはどうじゃ?


ホセは力任せにひったくる。

サソリの肉に食らいつく。


蓮は羨ましそうにじっと見る。


はっはは。やはり空腹には敵わんと見る。よろしい。次捕まえたら蓮にやるとしよう。


さあ、冗談言ってないで食ったら寝ますよ。文豪さん。あなたはそちら。


テントは二つ。


公平にくじで決めた結果、文豪と蓮とサマーマンが手前のテント。

残り二人が後方のテント。


テントは月明りのみ。薄暗くて敵わない。


ちょっとどいてよ!

お主がどかぬか!


文豪!

蓮!


三人は寝床を確保しようと醜い争いを始めた。


主に文豪と蓮が奪い合っている。


サマーマンは戦況を見守るしかない。


ちょっとお爺さん私の横とは図々しい。端に寄ってよ!

何を! 娘さんなんとはしたない。


私は暗いと眠れないの!

なんと情けない。まるで子供ではないか!


良いからどいてよ! 月明りは私の特等席。

まったく! なんとわがままな娘さんじゃ。


うるさい! ランタンぐらい無いの?

我が隊は金欠じゃ。無駄なお金は一切出せん。


そんな事言って暗闇に乗じて私を襲うつもり……

違う! 本当じゃ! 信じてくれ!


まあ、いいわ。文豪が離れて寝てくれれば。うるさいし、暑苦しいし、爺くさい。

無茶苦茶な言いがかりを言いおる。


それにしても男二人に女一人。デリカシーがないっていうか。

あちらに移籍してはどうじゃ?


あら、それはいいわね。っていうか普通女一人に男四人でいいんじゃない。

冗談のつもりじゃが。いいか若者同士は危険すぎる。

だから一人でいいって!


顧問が普通か? いや普通では余計にマズい。

文豪!


良いかよく聞け! この布陣がベストじゃ。他は危険だ。

説得力がないんだけど。


儂は大人しい。サマーマンも物静か。ほれベストじゃろ。


あのー。

サマーマンが口を開く。


ぶつぶつ。


端がいいそうよ。


では儂が真ん中?

えー! 暑苦しい!


人影が見えた。


うるさい! 早く寝なさい! 枕投げ厳禁!


顧問は昔の癖が抜けないようで顔をこすりながら怒鳴る。


文豪は仕方なく真ん中で寝る事となった。


仮面と鎧をとったサマーマンは月明りにその正体をさらした。


あなたは?


文豪は永遠の旅立ちへ。

まるで子供のようにすやすやと。


ゴーーー グォーーー


文豪。起きて! 文豪! 文豪!


あなたはいったい何者?


サマーマンは答えない。


苦笑いをし何か言いたそうな顔。


蓮はこれ以上の追及を避け、おやすみとだけ告げる。


文豪のいびきは段階的に酷くなっていく。


まったく寝れないじゃない!


文豪が蓮に迫ってきた。


夏!

夏? 夏って誰よ!


追い払っても何度も文豪は迫ってくる。


そう、文豪はいびきもするが寝相もすこぶる良くない。


こら、爺さん! 寝たふりして!


夏!

また夏? ふふふ……


蓮!

ちょっとやめてよ。ふふふ……


夏!

もう!


サマーマンにも迫る。


夏!

…… ごめんなさい……


蓮からサマーマンへ。

文豪の動きは誰にも止められない。


蓮はようやく眠ることができた。


                         続く


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