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難しいお話で文豪本領発揮!

翌日


センターポール滞在。


早朝に孫娘の家へ。


失礼。私は顧問。順に文豪、サマーマン。

挨拶を済ませ要件に入る。


早速ですが魔王の居場所や情報があるとありがたいんですが。


孫娘はもう間もなく結婚だそうで隣には相手の男が微笑んでいる。


ああ、では僕から。魔王の存在ぐらいは認識していました。でもここは平和と言いますか物騒と言いますか…… 問題を起こすのは人間なんです。


ええ、特に列車でやってくる物騒な連中。ほほほ、口が滑りました。


ええと。平和でモンスターは居ない。人間が恐ろしい。

顧問は几帳面にメモを取る。


魔王?

魔王ですか?

うーん。


そうだ。二軒先にある奥さんがそんな話をしていたような……

ごめんなさい。本当に平和な街で誰も魔王なんて気にしていないんです。


えっと。ここの住民は魔王に関心なし。


では他には。


えーと。これと言って…… そうだわ! 外れに化け物屋敷があるの。せっかくだからそこに行ってみるといいわ!


分かりました。では最後に異世界ポストが何処にあるかご存じありませんか?

異世界ポスト?


この世界とは別のところへ手紙を送る……


ああ、おばーちゃんに頼まれたのね。

嬉しそうに紅茶を啜る。


懐かしい。私も何度か頼まれたことがあるわ。でももうセンターポールには無いって隣の奥さんが嘆いていた。


本当ですか?


ええ、昔はどこの地域にもあったんだけど利用者が少なくてね。一昨年にほとんどのところで撤去されてイーストポールとサウスポールに一か所ずつ。時代の流れかしら。仕方ないことだけど残念ね。


ではこれで。

手紙の件はよろしく。私もおばーちゃんに手紙を書かなくちゃ。


若いカップルが手を振る。


よし次の家だ!


文豪君元気ないね?

うむ。どうも調子が出ん!


蓮君が居ないとダメ?

いや、そうではなくどうも張り合いがなくていかん。


うん?

顧問は焦りと言うものがないのか?


何を…… 私も少々焦っています。はい。

まあいい。しかしこうも敵と遭遇せんと儂の存在価値が無い。


レベルアップ。

サマーマンが久しぶりに口を開いた。


そうじゃ。敵がいないとレベルアップもできん!


そうですね。もしかしたらこの展開が一番まずいのかもしれませんね。


NO MONSTER NO LIFE


さすが顧問。しかしちょっと物騒ではないか?

サマーマンも同意する。

ハハハ…… 


御免!

あら何か用ですか?


庭木の手入れを中断して大声で話し出す。


ああ、自分だ! 魔王は居るだ!


あんたら何者だ?


魔王退治の命を受けたアドハーツの者です。


アド何とかは知らんけど偉いど偉いど。その若さでのう。


うむ。情報をくれ!


なんだ! 爺さんもいたのか!

何! この儂を誰と心得る!


あんたはただの爺さん。

違う! 文豪様である!


顧問が制止する。


それで魔王について知っていることを全部教えてください。

長くなるど。それでもいいのか?

手短にお願いします。


まず自分はサウス・エンド出身。夫の都合でこのセンターポールにやってきたわけだがそりゃあここは平和だよ。誰も魔王など気にかけていない。大分前に追い出したわけさ。ありゃあ大変だったて義母が言ってたよ。まあ何はともあれ魔王は去っていった。どこに行ったかは定かではないが一場所に落ち着く事もなく転々としているそうだよ。今もきっと移動を繰り返しているはずさ。


長い! まだ続くのか? 眠くなってきたわ。


大あくびをして顧問に問う。


マズいですよ。聞こえてしまいます。静かに!

しかし、長話は体に毒じゃ!


ちょっと爺さん。うるさいよ! 話聞いてるの?

ええ、大丈夫です。それで魔王は?


再び話し出す。


魔王の正体は意外だよ。臆病で物静か。冷静沈着。逃げの一手に躊躇はない。

ただ大きくてね。パッと見ただけで魔王だと分かるわけさ。


自分も一度だけお目にかかったことがある。

サウス・エンドの外れで。

もう殺されるかと思ったよ。

少女時代の話さ。


以外かもしれないけど良い人かもしれない。

良い人?


おっと、口が滑った。人間に近いって考えればいいさ。

感情がある?

そうそう。


他には?

捉えどころがない。何を考えているのかよく分からないよ。


気を付けな。魔王の手下があんたらの動きを察知して先手を打ってくる。

一筋縄では捕まえられない。慎重で臆病。冷静さも兼ね備えてある、ほぼ完ぺきな魔王様さ。


それでどちらの方に?

知るかい! 自分で考えるんだね!


魔王の正体に少し近づいた。


よし戻ろう!


文豪たちは蓮たちと合流した。


そっちはどうじゃ?

ああ文豪! 面白いことが分かったの。


それは早く聞かせて欲しいですね。

顧問! 焦らない。焦らない。


紅茶を啜る。

パンを噛り付く。

デザートはプリンだ。


文豪も負けじと紅茶で舌を痛め、コーヒーも注文する。

パンは固くて噛み切れない。

プリンは落としてしまう。


そこへすかさずサマーマンがプリンを差し出す。


蓮は口元を拭う。


では、ホセ君どうぞ。


えー、実は私どもはめでたく結婚いたしました。


何じゃと!

違うでしょ! 冗談は文豪だけにして!


顔を真っ赤にして怒る蓮。お似合いの二人に見えるが……


冗談はさておきまず科学のお話し。ブラックホールの研究が進められているのはご存知でしょうか?

サンチャゴよ。儂は文豪じゃぞ! その手の事には造詣が深い。何でも聞くがよろしい。


それでですね。


文豪の戯言を無視して先に進める。


その手の研究家がこの近くに住んでいると聞き、さっそく会いに行ったところ貴重なお話をしてくださいました。


ブラックホールの可能性。ブラックホール出現のメカニズムは解明されていませんが周りの物をすべて飲み込む恐ろしい特性を持っています。宇宙のどこかに現れ、消えるを繰り返します。もし宇宙に行きブラックホールに吸い込まれたらあちらの世界に戻れるのではないかと推測します。


おいおい、ホセ君。それは君の仮説だろ。

いえ、博士のお墨付きです。


だとしてもどうやって宇宙に行けと? 何年、いや何十年かかると思っているのか?

顧問の厳しい叱責が続く。


まったく君たちは! 続けたまえ。


宇宙船はまだまだ先で宇宙も夢のまた夢。それは分かってます。ブラックホールだっていつ現れるか。しかし、ブラックホールが異世界に誘うものだとすれば必ず元の世界へと通じる道があるはず。


うん? 何が言いたいのかね? 分かるように説明したまえ。


ミス・コーデルは言いました。下手なところに近づくなと。思いがけないところで魔王の里に繋がっている。気を付けろと。でも魔王の里に繋がっているのと同様に元の世界にも繋がるポイントがあるのではないか。


確かに一理ある。そこへ行けば難なく元の世界に戻れる。

しかし戻って何になる。君たちは元の世界で成功を収めたのか? 私や文豪君と君たちは違う。危険を冒してまで急ぐ必要があるのか?


ですがこのままではゲームオーバー。早くレベルアップしないと取り返しのつかないことになってしまいます。


それはそれ。冷静になるんだ。危険な賭けをする必要はまったくない!


もう、さっきから否定ばかりして。レベルアップする場所に行きましょうって話なんだから最後までちゃんと聞いて! ホセも前置きが長すぎる。ほら文豪はもう夢の中よ。


文豪は涎を垂らし鼾をかいている。


もう終わりか。昼寝の時間は。


涎を拭き欠伸をかみ殺し、伸びをする。


よし、出発だ! 皆の者儂に続け!


                           続く



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