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Ep.2 レオ・グライフ

 ・オウル 今作主人公。女性。精霊術を扱う。

 魔術国家。私、オウルが旅をし始めて最初の目標として選んだ国の名前だ。

 魔術を学ぶのにこれ以上の国は無いだろう。


 村や里、時には国の首都のような大きさの街を転々としながらただひたすらに進む。

 実際国の数自体はそこまで多くは無い。現在いる国は騎兵隊が主力である国らしく、馬は勿論のこと、小型のドラゴン(普通に大きい)やグリフォンのような幻獣と呼ばれる類の動物までいた。


「今日も依頼をこなしてきたのかい?お疲れさん。これおまけしとくね」

「わ、ありがとう」


 今では人間を見て驚くこともなくなったし、会話も普通にできるようになった。

 最初こそ常識知らずとかマナーがどうとか言われて追い出されることが多かったのだが。


 人間の国には共通してギルドというものがある。

 ギルドは依頼を出し、問題解決により報酬を出す。身分証も発行が出来たので私のようなものにはぴったりだった。


「そういえば、そろそろ行ってしまうのかい?」

「そうかなぁ。知りたいことは知れたし、緊急の依頼もないから頃合いを見計らってって感じかな」

「寂しくなるねぇ」


 知りたかったのはこの国の戦術や衣食住、エルフ様の森に対するスタンスなど。

 まとめた用紙を精霊様が運んでくれたので一度戻るということは無かったが、この国が森にいい感情を抱いていないというのがネックだった。

 というのも森を囲んで存在する国々は、どう頑張っても森の外周沿いに物資が通り、単純計算の日数が横断するよりかかるのだ。日数も人もかかればお金もかかる。森の横断さえできればもっと楽が出来る。直球表現してしまえば邪魔なのだ。

 この国が森を手中に収めれば開拓がすぐに始まるだろう。


「もう数日はいるよ。じゃあまた来るね。ありがと」

「あぁ、またねぇ」


 ここ数日数週間で得られたこの国に対する印象は『キレイ』

 騎士団の人達が街を巡回し、路地にゴミ一つ落ちていない。

 貧富の差も然程なく、貧民街のような場所もない。


 子供たちが走り回るような活気もあって犯罪も余り起きない。

 理想的だ。森を嫌っていなければ。


 荷物を宿に置いて、鍵をかけてからまた街に出る。

 夕暮れ時になり、少し星が見えるくらいの時間は飲食店が混みやすい。

 空いていた二人用の席に案内してもらい、注文をしておく。しばらくして


「お客様、こちら相席よろしいでしょうか?」

「ええ。構いませんよ」


 体面に座ったのは長い銀髪をたなびかせた金色の瞳の少年だった。


「すまないな。助かるよ」

「いえ。お気になさらず」


 目測ではあるが身長は私の肩くらいだろうか。

 人間の女性としては普通程度だから少年で間違いないと思うけれど、不思議なことに、精霊様がこの人が来てからしんとしている。

 精霊様は基本的に自由奔放にそこらじゅうを飛び跳ねているが、物陰に隠れてこちらを見る精霊様の多いこと。


「……俺の顔に何かついているか?」

「あ、そういうのじゃないです。すいません」


 今まで精霊様はこういった反応を示したことがない。

 一見少年のように見えるのだが。


「お待たせしましたぁ」

「ありがとうございます」


 店員さんからもらったコーヒーと軽食を口に運びながら精霊様を眺める。

 それから少しして、近場の席にいた冒険者らしき二人組が気になることを話し始めた。


「そういや最近騎士団がなんかやってるって聞いたが、知ってるか?」

「あぁ、近々魔術国家との国境あたりで問題になってるあのドラゴン。捕まえに行くらしいぞ」


 ドラゴンが云々という話は聞いていたけれど、討伐しない方向になったらしい。

 聞いた限りかなりでかいドラゴンだったはず。


「……馬鹿共が」

「え?」

「この国で飼われているようなのと同じじゃない」


 そう言って呼んだ店員に二人分の料金を払った少年はそのまま立ち上がった。


「え? あの」

「邪魔した」

「あ、ありがとうございます……?」


 振り返ることなく店を出て行ってしまった。

 今度会えたときにちゃんとお礼を言おう。


 その日からは特にすることもなく出立の日を迎えた。

 馬車の警護役としての依頼を受け、そのまま魔術国家に向かう。


「あ」

「ん?」


 馬車に客人としてあの少年が乗っていた。


「えっと、この間はありがとうございました」

「ああ、カフェの……お金については構わない。何なら面白いものも見れた。感謝したいくらいだ」

「?」


「そういえば、名前窺っても?」

「……レオ・グライフ。こう見えても結構な年だから子ども扱いはしないでくれ」

「グライフさんですね。ありがとうございます。いくつなんですか?」

「忘れた。が、少なくとも二十歳かそこらの……君よりは年上だ」

「オウルです」

「……感謝する」


 明らかに年下だがそういう人間もいるのか。


「やめろ。そんな目で見るな」


 そんな会話していたらそろそろ出発するとのこと。


 私は護衛なので、外に出て違う馬車に乗る。

 馬車は合計三台。真ん中が客人用で先頭と後ろが護衛用。

 護衛用には物資も乗っていて、護衛は私を入れて六人ほど。

 本当は三、四人でいいそうだが、国境のドラゴンやそれから逃げる獣が増え、護衛を増やさなければいけないとのこと。


「とは言ったものの、賊も出るから馬乗れる連中は馬車と並走しながら警戒頼んだ」


 三人ほどの男性が各々返事しながら馬に乗った。

 今回女性はいなかったが、知り合い? がいたので少し安心した。


 馬車の荷台の足場に腰掛け、足をぶらぶらさせながら流れていく景色を眺める。

 今のところ平和そのもの。


 道はどちらかといえば整備されている感じで、眠気が誘われるような揺れだった。

 何があるか分からないので寝はしないけれど、やることがない。


 背負っていた弓矢やナイフを整備しながら周りを眺める。

 精霊様が飛び交う光景は私しか見えないだろうけれど。


 時間をそうして潰す。特に何もなく野営予定地に着き、テントを張る。

 女性ということで客人用の馬車のソファで寝かせてもらえるとのこと。


 夜中、就寝の時間になってグライフさんがいないのに気が付いた。

 彼も同じく、客人用のソファで寝るようになっていたのだが、姿が見当たらない。

 一見高貴な身分の人だが、女である私と同じ空間で寝られないとか?


 精霊様に聞いてみたら森に歩いて行ったとのこと。こんな時間に?

 グライフさんがいないこと、この方角に探しに行くことを伝えた。

 一人つけようと言ってくれたが構わないとも。


 精霊様が辺りを警戒してくれているし、いざ精霊術を使うとなった時一人の方が楽なのだ。

 人間の国に来てから精霊術を使う人間は見ていない。やはりというべきか、魔術以外使わないのだろう。


「精霊様、明かりをくれますか」


 手元のランタンに火を灯してもらい、薄暗い森に入る。

 夜の森に一人で入るのは自殺行為だとしても、今日あったばかりの人間より精霊様を選ぶ。

 もう一人いればと思ったことは確かにあるが……過去に一人の方がと思ったことが多かった。


 精霊様に案内してもらいながら進むと話し声が聞こえた。一人は多分グライフさんのものだ。


「--」

「--」


 ここからでは何を言っているのか分からないが、特に言い争っているという風では無い様だ。

 盗み聞くのも悪いしとここで待つことにした。数分して足音がこちらに近づいてきた。


「何してる」

「……いや、こっちのセリフですが?」

「……話の内容は?」

「聞いてません」


 少し疑惑的な目を向けていたが、目を合わせているとため息をつかれた。


「すまないな。こんな夜中に」

「全くです。また何か奢ってください」

「そんな強かだったか?」


「そういえばだれと話してたんですか?」

「知り合い」


 聞かないことの方が正解そうだったので近づかなくて正解だったのだろう。


 お騒がせしました。見つかりましたと護衛の人達に伝え、グライフさんも謝っていた。


 その後はゆっくりと休み、また昨日のような旅路が始まった。

 あと二日ほどすれば国境を越えるのだという。そこからもう二日ほどかけ首都に向かうらしい。


「嬢ちゃんは戻り組かい?」

「いえ、そのまま魔術国家に観光に行きます」


 そんな他愛もない話をするほどに今は平和だったが、何度か盗賊の襲撃や獣の群れに遭遇したりした。

 何れも軽傷で済む程度だったが。


「最初は守る対象に見えてたが、結構動くもんだな?」

「私だって依頼受けた側ですからね。それにギルドでちゃんと仕事もしてますから」

「そりゃそうか。侮って悪かったな」


 気のいい性格なのだろう。笑いながら話せるというのは心地いい。


「魔術国家に何しに行くんだ? 観光って言っても行きたいとことか食べたいもんあるんだろ?」

「魔術について見識を深めたくて。私は現状魔術がまともに使えませんから、使えるようになるかなって」

「あー確かに珍しいよな。魔術を使わないのは」


 そうなのだ。ここが失敗したなと思った点の一つ。

 人間の生活に魔術が深く根付いているため、根付きすぎているため、使えないという人間がほぼいない。

 最初は苦労したが、そういう人もいると聞いてからは使えるようになるために魔術国家を目指していると話すようになった。


「そういえば、そろそろ国境ですね」

「昨今はこの辺りにドラゴンがうろついてるらしいな。目撃した場合はすぐに周りに知らせてくれ」


 聞いていた話ではなかなかに大きなドラゴンということだから遠目でも視認が可能のはず。

 このあたりは平原で、森は少し遠い場所に見える程度。もう少し進めば国境の砦が見えるだろう。

 少なくとも高価な品や客人の安全のために真ん中の馬車は最優先で守るように言われている。最悪先頭と私の乗っている後方の馬車どちらかは囮として走る予定だ。


 国境が近づき、関所が見えてきた。

 一度ここで荷物の監査などを行いながら身分確認をする。


「--ところで門兵さんよ。ドラゴンってどうなったよ」

「いやぁそれが姿をくらませやがって。ここ二、三日見ないんだ」

「なんだって?」

「少なくとも魔術国家側に入ったって報告は無いんだが、巨体とはいえドラゴン。上空を飛行されたら視認できない可能性もある。こちらとしても捕捉はしておきたいんだがね」


 実のところ私はドラゴンという存在を間近で見たことがない。

 騎兵隊にいるといわれる騎獣としてのドラゴンも何もなければ表には出てこないからだ。

 間近で見ておきたかったといえば見ておきたかったが……


 ドラゴンの鱗は下級飛竜レッサードラゴンですら鋼鉄並みの硬さを誇る。牙は喉にある発炎器官に常に炙られることで年々どころか日に日に鋭利になっていく。

 図書館やギルドの先輩、受付の人からもちょくちょく聞いてみたが、討伐できても一匹に対しての喪失が大きいことで有名な獣。

 確認された巨大なドラゴンはランクが分からないが、明らかに下級レッサーではないだろうというのが捕獲隊及びギルドの考えだ。


 今いる街は国境を跨いでいて、それぞれの国方面に門が存在する街だ。

 今日はもう休んでいくらしい。休むには少し早いのでは? と聞いてみれば休めるときに休まないと潰れてしまうからと言われた。


 そして私たちが関所の街に入ってから数時間後、もうそろそろ日が暮れるという時に騎士団が関所を訪れた。

 私たちを運ぶ馬を撫でながらそれを見ていたけれど、聞いていたよりも人数が多いことに気付いた。


「随分多いな」

「グライフさん。そうですね。あんな数いたら食料とか大変そうです」

「ふふ。違いない」

「おかしなこと言いました?」


 いや? という彼の顔はなんだか余分な力が抜けたような表情でした。

 ただ、騎士団を見る目は随分厳しいもので。何というか憎んでいるようにも……


「……ん?」

「どうしました?」

「いや、気のせいだと、いいん、だ、が」

「?」


 グライフさんは上を見ていました。

 綺麗なグラデーションの空に一点だけ歪な形の黒が見え、それは次第に大きくなり--白い星が降ってきました。


「ドラゴンだ! 空から来るぞ!」

「平原に展開しろ! 街に被害を出させないようこちらに気を向かせるんだ!」


 騎士団の責任者と思われる人が声高々に命令を出し、落下してくるドラゴンに向かって魔術師が攻撃を開始--すると思われた直後、ドラゴンがその長い首を攻撃が始まる前に騎士団の方へ向け……


 空間の割れるような、強者の咆哮が轟く。

 放たれた、魔術の大半が掻き消え、形を寸でのところで留めたものもドラゴンに届くころには微々たる威力しか出てないように見える。


「……馬鹿者。何故来た」

「グライフさん。逃げましょう」

「いや、必要ない。あのドラゴンは」


 白い喉が赤く変色し、半開きされた牙の隙間から炎が見えた。


「騎士団を狙ってる」


 炎の渦が騎士団の展開した平原を舐める。

 騎士団の魔術師が重ね掛けする防衛魔術も炎に触れた瞬間に融解していく。


「いや、正確には騎士団の盗んだ卵だが……」

「卵?」

下級飛竜レッサードラゴンの卵を盗んで人工孵化させたドラゴン。それが騎士団の所有するドラゴンの正体だ。だが連中は欲張った」


「おい! あんたら逃げろ!」

「! グライフさん」

「……オウル、だったな。精霊術を使えるだろ」

「え」


「精霊術に動物を落ち着かせる術があるのは知ってるか?」

「知って、ますけど。なんで私が」

「カフェで同席したときに精霊を見ていたろう。俺も精霊は見える。あのドラゴンにその術を向けて少し遠くの森まで誘導する」

「え、いや、落ち着いたからと言って誘導できるとは……」

「誘導は俺がやる。だから術の準備をしろ」


 そう言うとドラゴンの方に走っていった。


「あーっもう!」


 私も術の準備をしながら走る。


 関所の近く、一番高い場所(一番ドラゴンに近い場所)に立つ。

 走り続けているグライフさんに合わせて唱える。


「"願い給う 彼の荒ぶる存在に 凪いだ心を"」


 精霊様がドラゴンの方へ飛び。ドラゴンの顔辺りを無邪気に飛ぶ。

 遊びに誘っている風にすら見えるその光たちにドラゴンも意識をそちらに向ける。


「好機! 魔術師たちよ! ありったけの攻撃魔術を!」

「馬鹿者……"ダウン"」


 一言の詠唱で騎士団の人達の意識が落ちる。


「そこの上位飛竜グレーター! 俺はベアンテの友人、レオ・グライフだ! この場は一度その牙を収めてくれ!」


 唸る上位飛竜は迷う様子を見せながらもグライフさんを追い始めた。


「……なんでグライフさんが精霊様のことを見れるんだろう」


 確かに初めて会った時の精霊様の様子はおかしかった。何というか、この人の前では静かにしなければいけないという決まりがあるような雰囲気で……


 兎に角、街への被害はゼロ。

 平原でのびている騎士団の人達に関しては、恐る恐る戻ってきた街の人と一緒に回収した。


 その後ギルドから護衛の完了の通達を貰った。最初は再び護衛としてついて行くつもりだったが、グライフさんのことが気になり少し残ることにした。


--


 今私はグライフさんが走っていった方向に広がる森の中にいる。

 この辺りはエルフ様の森に近いが国土的には人間が所有している。とはいえ生態系や風景は似ているものがあり、何というか懐かしい気分さえ感じる。


「!」


 森の少し開けた場所に輝く銀髪を見つけた。

 その奥には眠りについた白い飛竜がいる。白い飛竜はぱちっと目を開けこちらを視認するとその長い首を持ち上げこちらを真っ直ぐに見ていた。その眼には敵意のようなものは感じられなかったが、警戒の色は滲んでいた。


「ん……オウルか」

「グライフさん……近づいても?」

「ああ……大丈夫。彼女は味方だから」


 そう言われると一度グライフさんの方を見た飛竜は、そのまま目を閉じながら眠りについた。


「街は?」

「問題ありませんよ。被害はゼロ。騎士団の方は、お察しですが」

「まぁ仕方ないか。それで? そんなことを言いに来たんじゃないんだろう?」

「ええ、まぁ……グライフさん、貴方は精霊様のことが見えると言いましたが、精霊術を?」

「いいや? 精霊術は使わない。見ての通り精霊は俺のことを避けるからな」


 精霊様はやはり初めて会った時と同じように遠巻きかつ静かにグライフさんを見ていた。


「俺は人間じゃない。この見てくれだから人間に溶け込みやすいが」

「人間じゃない……でも獣人やエルフ様では無いですよね」

「そうだ。一般的に言えば悪魔だな」


 悪魔。人間が魔術を使う時に契約する存在で、普段は魔界に住んでいる。

 そんな悪魔が目の前にいる……らしい。


「悪魔って、なんかもっとこう、禍々しい?」

「そんなことないぞ。長生きした悪魔程落ち着いた雰囲気になるものだ」

「銀髪金眼は落ち着いてないと思う」


 長い銀髪、宝石のような金色の瞳、身長こそ低いが顔立ちも整って落ち着いた雰囲気は無理がある。

 ただ本人はそんなこと聞こえないとばかりに上を向いた。


「来たか」

「話聞いてますか? ……え?」


 翼の--それこそ悪魔のような羽が--生えた騎士姿の女の人が下りてきた。


「助かったよレオ。そちらのお嬢さんは?」

「オウルという。精霊術士でこの上位飛竜グレーターを落ち着かせた人間だ」

「おやおや、それはそれは。ありがとうございます」

「い、いえ。グライフさんの指示に従っただけなので」


 背高っ

 いや、グライフさんを見ていたからかな


「お前今失礼なこと考えたろう?」

「イイエ」


 それにしたって高いが、その割には細いというのもあるのだろう。枝のようというよりしなやかという言葉が頭に浮かぶ。

 髪の色と同じ赤い竜の尻尾がゆらゆらとしている。


「名乗らせていただこう。ベアンテだ。見ての通り竜人ドラゴニュートで、ドラゴンをまとめている」

竜人ドラゴニュート……改めましてオウルです」


 手を差し出されたので反射的に握りながら自己紹介を済ませる。


「しかし精霊術士か……人間にはいないと思っていたが」

「まぁ最近じゃ見ないな。エルフにでも教わったか?」

「えっと……」


 なんて答えるのが正解なのか分からない。

 精霊術は高台で使ったため街の人にはバレてないはず。

 でも精霊術自体はグライフさんの指示で使ったものだし……


「まぁ精霊術を使えるのは精霊かエルフくらいだしなぁ」

「エルフの里で人間が生活すること自体は出来るだろう?レオもエルフの性格は知っているだろうし」

「あ、あのぉ……」


「いのち だいじに だな。連中は森があれば生きてられる」

「そういえばこの辺にエルフの森があったな。獣人が周りを囲んでる稀有なとこじゃなかったか?」

「……」


 そこです。まぎれもなくそこなんですけれど。


「まぁ実際誰に教わったかなんてどうだっていいんだ。大切なのはこの飛竜のために精霊術を使ってくれたってことだな」

「人間に見えないようには配慮した。俺から頼んだからな」


 配慮……?


「何かしてくれてたんですか?」

「ああ、ざっくりと言えば結界のようなものを張ってた」

「へー……ありがとうございます」


 よくわからないけれど。


「結界はここより東の技術だから馴染みないと思うが」

「ん? あぁそうだったか。まぁいい。そんなことよりこの飛竜はどうするんだ?」

「連れて帰る。だが、我々としても泣き寝入りはしたくない」


下級飛竜レッサードラゴンの卵を盗られるのも手が回ってないだけで許されない」

「人間も調子乗って上位飛竜グレータードラゴンに手を出し始めてしまったからな。これはさすがに見過ごせないだろう」

「うむ。いい加減盗られたモノも返してもらわないと困るからな」


 騎士団を狙ったという上位飛竜はただ先走っただけで、そのうちドラゴンがたくさん来る予定だったらしい。


「また戻るのも何だが……一応あの首都の街の構造は把握したし、ドラゴンの場所も見かけた」

「本当か?」

「寧ろそのためにあの街にいた。上位飛竜の卵は流石にお前も動くと思ったからな」

「なるほど……さてどうする?」


 グライフさんが顔だけ動かしてこちらを見てきた。それに合わせてベアンテさんもこちらを見て目をぱちぱちとさせている。


「俺だけでもいいんだが、純人間がいてくれた方が人手的にも助かるからな。手伝え」

「んん?」

「レオ?」


「精霊術には魔術にない使い方がある。城やら騎士団の詰め所のような重要施設には"魔術に対する準備"はあっても"精霊術に対する準備"はそうないだろ」


「それでもって俺は純悪魔。魔術のデメリットやリスクは人間に比べて低い。いけるだろ」


 また戻るの……

 こんにちわ。御堂瑞駆です。

 今回はオウルの人生におけるキーパーソンとなるレオ・グライフの登場回でした……トラブルメーカーの間違いかも?

 何はともあれここまでお読みいただきありがとうございました。次回もお楽しみにしてくれたら幸いです。


こちら筆者のTwitterアカウントです。(@Mimizuku_Oul)https://twitter.com/Mimizuku_Oul

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