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第8話 特性

この世界では、どんな人間でも最低一個は特性を持っている。自己修復、暗記、火事場の馬鹿力とかは生まれながらに持っている人も多い。俺はこの3つ特性、どれも持ってないけど、兄達はたぶん全部持ってるんじゃないかな。自慢する必要もないような特性だから公表してないだけで、絶対公表している特性の数じゃ済まないぐらいには多芸だ。


そしてこの特性、見るのに大体1万円ぐらい教会へ寄付する必要がある。高くはないけど安くもない。ただし10歳の時のみ、1回だけ無料で見れるので平民達の間では10歳で見に行くのが慣習になっている。一方の貴族は、最初から持っている特性を鍛えるために5歳の時に一度見るのが慣習だ。


しかし俺は自己再生特性を持ったか確認するために、わりと頻繁に奴隷達の特性は見に行っている。これは教会に多額のお金を寄付する目的もある。教会勢力と仲良くなっておくと、後々お得だろうしな。俺は無神論者だったけど、今は神の存在を信じてるし。何なら教会に行く度に女神相手に愚痴ってるし。


『女神を口説き落として特性貰ってやるっていう薄汚い本音が駄々洩れなのにずっと通い詰めるのは馬鹿じゃないの?』

「うるせえバーカ。ちょっとぐらい希望持っても良いだろ。あとなんか凄い特性寄越せ」


で、ここからが本題だけど自己再生特性を得る奴隷というのにはバラつきがあるし、槍の訓練を1か月ほど、毎日1時間しただけで槍術レベルⅡの特性を持っている奴隷がいれば、半年懸命に訓練を続けても未だに槍術レベルⅠを得ていない奴隷もいる。


……分かっていたけど要するにこれ、現在の実力を示しているだけだよな。鍛えまくればいずれはレベルⅤに届くと言うわけじゃないことは女神に確認済みだし、特性というのは残酷なまでに明確に才能を指し示す指標のようなものだ。夢も希望もない。


でもまあ、ただの箱入り娘が怪力を得て片腕懸垂をするようなゴリマッチョになったように、見えていない場合というのもあるのだろう。というわけでピアノを習ったり絵を描いてみたり料理したりアクロバティックな奇行に走ってみたりしたが、何の特性も得られず。本当に抜け道がねえ。


一方で鞭術はレベルⅢに上がったけど、女神から『今のお前じゃそのレベルが限界だからなプギャー』と毒電波を受信したのでここが限界の模様。しかしレベルⅢにもなると本当に狙った場所にバシッと鞭を打てるから奴隷を鞭打つ時に凄く便利。戦争でも活躍は出来そう。


威力も上がったのか、奴隷の脛当たりを打つと骨が見えるぐらいの重症になることもある。毎回焼けた鉄を押し当てられたような痛みが打った場所を襲うけど、そろそろ痛みが快感になって来たよ。


……いや嘘です。痛いものは痛いです。痛いのが快感って頭湧いてるだろ。でも自己再生特性を得ている奴隷ならスーっと痛みが引いて行くし、痛覚軽減レベルⅡのお蔭もあって割と何とかなってる気がする。


成人まであと4年、どうしようかなと考えていたら父親のバイヤーが倒れる。死にはしなかったけど、布団の上から起き上がれないような状態。近いうちに、死ぬのは確定だろう。症状的には、肺炎を併発している感じかな?咳が出ているからそう判断するしかないんだけど。


流石にここで死なれては困るし、病気の治療に役立ちそうな薬草を集める。兄達も「ついに俺の時代が来た」みたいな感じにはならず、果物を持ってきたり腕の良い高名な医者を連れてきたりしている。怪我には回復魔法の効果があるそうだけど、病気には効果が出ないので魔法でどうにかなったりはしません。


医者の懸命な治療の甲斐もあって、一時的に症状はマシになったけど長くはない。そもそも3年前の51歳の時点で病気になりがちだった。この世界の平均年齢は50歳ぐらいだし、貴族らしい不健康な生活だったから、そろそろ寿命だろう。


……これは不味い。奴隷の軍は100人規模になったとはいえ、300人の常備軍に追加で100人もの人を雇用したヴァーグナー軍相手に勝てるわけがない。常備軍に加えて、徴兵される農民の数の差もえげつないし、指揮官の差は埋めようもない。下手したらカルリング帝国の軍すら出て来るとかどうやって勝てば良いんだよ。


向こう側は、相続した直後に攻めて来るだろう。待つ理由がないし、俺が大人になってしまえば大義名分を一つ失う。……直轄領にした時と、封臣に任せた時の収入領はかなり違うしな。攻めない理由がない。


というわけで今から色々と相続予定の領内、ディール公爵領内にあるフェンツ伯爵領に罠を仕込む。ついでに優秀な男爵である、ハルティング男爵に元帥の地位を約束する。大々的に。この男爵、領内に13ある男爵領の内の2つを保有していて、兵も100人近く持っている有力な男爵です。


俺が無理やり彼の戦争を手伝ったから、俺への恩もある状態。こんな子供の約束事でも、裏切るとそれなりに評判へダメージが行くから貴族社会は面白い。


あとはシュルト公爵家と、縁を結べるかにかかっているな。下手すれば、というか下手しなくても父親が死んだ時点で婚約破棄という未来は十分にあり得る。その未来だけは回避しないと、本格的に詰んでしまう。

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