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第74話 恭順

「ワイバーン兵だ!」

「火球が来るぞ!気を付けろ!」


狭い地形に閉じ込めた教皇の軍から、ドラゴンみたいな生き物が数匹飛び立つ。人が乗っているし、竜騎兵だな。いや、航空戦力を持ってるとか聞いてないんだけど。諜報員はこういうのをちゃんと探って来て教えてよ。


兵とワイバーンの着ている鎧の種類から、恐らくはマシア王国の兵。たぶんマシア王国軍の、切り札的な存在だろう。僅か9人と9匹しかいないけど、あれらが大量の爆弾を持っている場合、こちら側は絨毯爆撃を受けることになる。


……でも何で、あのワイバーンに騎乗している人達は魔法で攻撃をしているんだろ。ワイバーンの方も火の玉を吐き出して攻撃してくるけど、火の玉がそこまで大きくない上、速度が遅いからこちらの兵は見てから避けられるし、一部の兵はそもそも避けてすらいない。


そしてこちらの小銃が届く距離で滞空しているせいで、何匹か撃ち抜かれ、颯爽と撤退していく。ええ……。切り札的存在があの弱さで良いの?乗っている人の魔法は確かに強い方だけど、距離減衰してこちらに届くころには普通に耐えられる程度の威力だし、強みを全く活かせてない気がする。


せめて爆弾の類を複数持っていて、高高度から一方的に爆撃されたならこちらは相当苦しかっただろうに。……この世界の魔物の類、基本は弱いし高高度まで飛べない可能性もあるけど。


相手の切り札も大したことがなく、完全にこちらの軍が押し込んだ形となったところで、反対側の砦の方で計画通り土砂崩れを起こしたらしく、1万人近い敵軍が土砂に飲み込まれた模様。ヴァーグナーが起こした山崩しと原理は一緒だ。盛り土をして、下に火薬をセットし起爆すればわりかし簡単に土砂崩れを起こせる。


こうなると、敵軍は後ろの蓋をしている軍に総攻撃するしかないと思うんだけど……ここで蓋をしていた第三師団にレナート帝国を蹂躙していた第二師団が合流。敵軍視点、前門しかない上に虎も狼もいる状態だな。


敵の後詰の部隊も来たけど、もう遅い。日没後、夜襲を仕掛けてきたけどなんか途中から敵軍が同士討ちし始めたからどうしようもないな。光源がない夜道、数メートル先が真っ暗闇で何も見えない中攻撃を仕掛けるとか馬鹿かな?


この夜戦では地味にコルネリアが敵軍を上手く誘導して同士討ちさせていたので、これでたぶん戦功はトップだな。側室とはいえ、大きく領土を渡しても身内贔屓にはならないほどの戦功だ。とりあえずクラウス公爵領の大部分を渡して、税の回収率を上げよう。


他の封臣に任せると中抜きされるけど、結婚相手を封臣にしてしまえば中抜き自体が俺の懐に入る。結構重要なことだから、リンデさんにもいずれ領土は任せるだろう。まだ未成年だから、今すぐは渡さないけど。


敵軍の夜襲が失敗し、兵と兵糧を大きく損失した敵軍は翌日、次々と部隊ごとに降伏していく。寄り合い所帯は敗色濃厚になると勝手に降伏していく部分が弱いところだな。伯爵や公爵の軍は既に兵糧が尽きているとか、何しにここまで来たんだろう。とりあえず武器と装備を回収し、改宗か死か、降伏した伯爵や公爵に迫る。


「ふざけるな!我々が何故集っていたのかも分らぬのか!我が信仰は絶対に変えん!」


最初に降伏した伯爵さんは、わりとプライドが高かったみたいで死を選んだため、ノコギリでの処刑を行う。他の捕らえられた伯爵や公爵には、処刑を見てから決断した方が良いよと告げ、プライドの塊を眼前に吊るす。


頭の上で腕を縄で固定され、足の方も拘束具で動けないようにされているので、途中で逃げ出すことは出来ないだろう。口に拘束具は付けなかったので、降伏しておきながら俺への罵詈雑言を列挙しているけど、仮面をつけた処刑人が手に持つノコギリを見てからは黙った。


このノコギリは、最近領内で大規模な伐採や木材加工をする必要性が出てきたために急遽大量生産を開始したものだ。地震からの復興のための、建築資材にも木材を使うしな。市民階級も一家に1つはノコギリを保有して、いざという時に戦えるようにもした。


その上で、処刑用具としても活用をすることにしました。この世界、下手に耐性があって頑丈な人もいるし、奴隷を確実に処刑出来る方法が欲しかったので、心臓の高さで人の身体を上下真っ二つにする処刑方法を定めた。


この伯爵は、別に頑丈じゃなかったからノコギリでギコギコするとすぐに凄まじい声量の悲鳴を上げる。口枷しなかったのが失敗だったと思うぐらいには五月蠅かった。でもまあ他の伯爵や公爵達の改宗の後押しにはなったようで、彼の死は無駄じゃなかったということにしておこう。


殉死したわけだし、きっと彼は天国に行ったよ。処刑人に対して、パルパル教で染まったわが軍の狂信者達が次々に「素晴らしい善行だ」「良い仕事をしたなあ」と言い、俺が金の入った袋を渡すといよいよ捕らえられた伯爵や公爵達は決心したのか改宗を選択。まあ命が惜しければそうなるわな。


……既に敵軍は、2万人近い死傷者が出ているはず。降伏して来たのが1万人近くいるけど、まだまだ数は残っているから1人残らず殲滅して、利用価値の高そうな存在は拘束していく。軍の損耗率を考えるとそろそろ規律が崩壊して潰走してもおかしくはないはずだけど、まだまだ戦えている辺り、宗教の力は本当に強いと思う。

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― 新着の感想 ―
[一言] 処刑人に対して、パルパル教で染まったわが軍の狂信者達が次々に「素晴らしい善行だ」「良い仕事をしたなあ」と言い ………こんなシンプルに邪教感溢れる会話ってある?
[良い点] 今話もありがとうございます! >コルネリアが敵軍を上手く誘導して同士討ちさせていたので、これでたぶん戦功はトップだな。側室とはいえ、大きく領土を渡しても身内贔屓にはならないほどの戦功だ。…
[一言] ノコギリは"切る"というよりは"削る"ための道具なので、見せしめに動けない相手に残酷な処刑に使うならいざ知らず、武器として使うのは深手を負わせるには時間がかかり過ぎて不向きでは? 民兵用の武…
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