表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/95

第52話 兄弟喧嘩

ボルグハルト王国軍がヴァーグナー率いるカルリング帝国軍に負けたという報告が入る。まあボルグハルト王国軍側の兵力は7500人だったのに対し、カルリング帝国軍側の兵力はヴァーグナーだけで7500人だ。その他の公爵や伯爵に補佐され、死に体のカルリング帝国軍本体も動員すれば飢饉中で弱った兵でも跳ね返せる。


というか現在、クラウス家の三兄弟というか三馬鹿が動員できる兵力は全員7500人か。俺は奴隷兵3000人、常備軍1500人、農民兵3000人という構成だけど、農民兵の練度は一番低いだろうな。一方で奴隷兵の練度は通常の常備軍よりも遥かに強いから、ヴァーグナー単体相手なら勝てる気もする。


というわけでヴァーグナーの本拠地であるクラウス公爵領。その中心になっているクラウス伯爵領に奴隷兵3000人、常備軍1500人で攻め入ろうとするけど、国境地帯にあるヴァーグナーの城塞の存在が中々に厄介だ。守りの農民兵は1500人程度で、追加でヴァーグナーの常備軍2000人が入っている。


俺に宣戦布告をされてから、すぐにこの地に守りの兵を割いて、それでなおボルグハルト王国軍を撃退したならヴァーグナーは相当頑張ってるな。そして守りの兵を割いたということは、この早期の宣戦布告にも意味があったということだ。


城塞は山の上に築かれており、日本のお城みたいな造りになっている。ここを迂回して行くには、あまりにも時間がかかるし、退路を断たれる危険性もある。攻略せざるを得ない位置に、きっちりと守りの城を築城してくるのはヴァーグナーの堅実性故だな。


しかも……。


「パルマー様ぁ!ここもおそらく敵大砲の射程内です!お下がり下さい!」

「いや、直撃しても大丈夫だから本陣が不安なようならグラミリアンだけ下がれ。

……あと、直接攻撃してくるほどの射程はねーよ。あの山の高さを加味しても、ここまではギリギリ届かない」


大砲の弾がどこら辺に着弾するか、全て計算されているのかやたらと部隊の中心地に炸裂弾を撃ち込んで来る。おそらく、大砲を設置する段階でどの辺の敵をどの大砲で倒すか決めているな。如何にも届きそうなこちらの本陣にただの一発すら撃ち込んで来ないということは、そういうことなんだろう。マジノ線かよ。


向こうも大砲の弾は量産出来ないのか、しばらくしたら弓での攻撃に切り替えて来るのでこちらも弩で撃ち返すけど、高低差の差がそのまま矢の飛距離の差にもなるので形勢は普通に不利だ。特に前列にいる奴隷兵、全身に矢が突き刺さってハリネズミのようになっているじゃないか。


しかしそれでも動揺せずに弩に矢をセットし打ち返す様はマジ不死隊。そして向こうは普通の弓だから疲弊していくけど、こちらは弩なので疲労と弓矢の速度は相関しません。どんどん向こうの矢が、こちらの奴隷の身体を貫きさえしなくなっていく。こうなれば、普通に前進しても大丈夫そうだ。


城壁に向かって、破城槌をぶつけて強引な突破を図る。矢で屋根は貫通しないし、投石とかも屋根の角度を工夫しているからそこまで致命的なダメージは負わない。屋根から吊り下げられた、巨大な丸太が、多くの鉄を纏って、城壁に叩きつけられる。破城槌を運ぶ奴隷達は、全員身体特性持ちだ。


巨大な衝撃音が、一回二回三回と鳴り響くと、城壁には穴が空いてそこから敵兵が見える。即座に手榴弾を投げ込む奴隷達は、あっという間に中へと入り込み、橋頭堡を確保した。あ、もうこれ終わりましたわ。


ボルグハルト王国軍とカルリング帝国軍が争っていたのは、クラウス公爵領から離れている上テレンス公爵領と下テレンス公爵領の国境周辺。情報の鮮度は比較的高かったから、カルリング帝国軍はまだ戻って来れない。だから守備兵を切り分けたんだと思うし、流石に練度は高かったけど、うちの精強な奴隷兵が中へ侵入して防げるわけがない。


しばらくすると、城の裏門から撤退を始める守備隊達。その瞬間、即座に嫌な予感がしたので新人奴隷は城へ侵入しないよう指示する。……たぶんこれ、崩れるな。


敵兵が撤退していくのを、側面から追撃を始めたところで、城が崩れて行く。ほらやっぱり。こういう城ごと爆破とか、アルフレートや俺がよくやる手だけど、流石にヴァーグナーもやられまくったら摸倣するわな。


でもまあ、城へ入っていったのは化け物染みた耐久力と再生力を持つ精鋭奴隷達。城への崩落にも、間違いなく耐える。結局、この城を巡る攻防は白紙になったかと思ったところで……。


地鳴りと共に、山面が崩れ始めた。は?


いや待って。城を崩すのは分かる。敵に再利用とかされたら厄介だし、俺の領内の砦の幾つかにはそういう仕掛けをしているのもある。しかし山を崩して、下手すれば領民にすら大ダメージを与える土砂崩れを起こす仕掛けまではしたことがない。


誤爆とかは最早考えていない、数年以内に確実に起爆する必要があるからこそ仕掛けた罠、か。やっべー。普通に見落としてたわ。


地面が崩れる。俺は窒息耐性や圧迫耐性もあるから土砂崩れに巻き込まれてもおそらく生き残るが、後方にいた新人奴隷や常備軍が生き残るかは運だな。はは、ヴァーグナーの兵ですら一部は巻き込まれているわ。こりゃ向こうの兵も、大多数が被災するな。


上を見ると土砂が更に降りかかって来て、俺の視界は真っ暗になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
一人だけバケモノ軍隊みたいになってるけど、向こうも向こうで火力高いんだよな やべぇー奴らは封印するに限る
[良い点] びかーん! 土耐性があがった!
[良い点] >クラウス家の三兄弟というか三馬鹿 淡々と自分すら三馬鹿に加えてて草ww >前列にいる奴隷兵、全身に矢が突き刺さってハリネズミのようになっているじゃないか。 ヒェッ…… ……それは…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ