第32話 兄弟
地名が多くて分かり辛かったのと作者の視点整理のためエクセルで地図を作りました。若干のネタバレあり。クオリティはお察し。地図を作るよりもみてみんの仕様把握の方が時間かかりました。
話し合いは俺がロイター伯爵領を分捕ってからということになり、しばらくの間、教会にお布施を積み立てる日々が続く。後でお布施は100倍にして返してもらう予定だけど、今は我慢。この世界において教皇が絶対的な権力を持っている以上、今は従うしか選択肢がない。
結局、ロイター伯爵領の請求権を得られるまで1か月近くかかったけど、その間にリンデさんは実家に帰りませんという内容の手紙を送っている。このアルビノ怪力美少女、とうとう家出しやがった。そして同棲して分かったことだけど、リンデさんちょくちょく自分でお金を稼いでは散財している。
浪費家というわけじゃないけど、私物にはめっちゃお金をかけているなこれ。時々、夜中にフラっと出ては大金を稼いで来るという言い方をするともはや如何わしい意味にしか思えないけど、実際には怪力を生かして家を解体したり、重い荷物を運んだりしているらしい。
11歳が働くというのは、まあこの世界だと普通だしな。15歳で成人、つまりは大人になると決められてはいるけど、平民なら実際には10歳になるともう働いてお金を稼いでいる人も多い。だから10歳で特性を見るわけだしな。将来を決めるのは、大体10歳前後ということ。
この世界は早熟な子が多いなと思う部分だけど、日本でも戦前なら10歳になる前から畑の手伝いや家業の手伝いをするのは当たり前だった。そして今日は、昼の鉱山で採掘された鉄鉱石を大量に運んだ模様。リンデさん、何人分の働きを一瞬でしたんだろう。
将来の公爵夫人がアルバイトみたいなことをして良いのかという疑問に関しては、俺が良いと決めたから問題なんてないです。請求権を待ちながら、戦時中なのに日常生活を過ごしていると、ヴァーグナーがオーブリー王国の上テレンス公爵領を、アルフレートがオーブリー王国の下テレンス公爵領を求めて宣戦布告。
ヴァーグナーはこの前にオーブリー王国の王都まで出向いて略奪をしていたが、その際に王子を捕縛している。その後、オーブリー王国は交渉により王子と引き換えに剣や防具をヴァーグナーに渡したらしい。アホかよ。仮想敵に武器を送るって一番ダメなことだろ。
というかオーブリー王国視点、詰みだな。ヴァーグナー軍はおよそ4000人、アルフレートが率いるボルグハルト王国軍は5000人ぐらいいるそうだし、もはや2000人も動員出来ないオーブリー王国の命運は尽きている。
案の定、13日でオーブリー王国は降伏。むしろあの鬼畜兄弟相手によく13日も持ったわ。結局、オーブリー王国はヴァーグナーとアルフレートが仲良く半分ずつ分け合ったとさ。何でだろう。凄く疎外感を感じて悲しい。そして互いに互いの獲得した領土に対して牽制し合っている兄弟の姿を見てほっこりした。
なおその間にこちらもロイター伯爵領を獲得し、3伯爵領持ちに。この後、ジェレミアス伯爵と婚姻同盟を結んで更に伯爵領を増やし、ディール公爵になる予定。
さて。ここで改めてクラウス家三兄弟の比較をしてみよう。
父親のバイヤー・クラウスが死去した時(2年前)
長男ヴァーグナー:クラウス公爵。直轄領はクラウス公爵領内の2伯爵領とディスモア公爵領の1伯爵領。伯爵の封臣はアルフレートとパルマーの2人。
次男アルフレート:直轄領はクラウス公爵領内の2伯爵領。ヴァーグナーの封臣。
三男パルマー(俺):直轄領はフェンツ伯爵領のみ。ヴァーグナーの封臣。
現在
長男ヴァーグナー:クラウス公爵であり、ディスモア公爵であり、上テレンス公爵。直轄領は6伯爵領。伯爵の封臣がいっぱい。
次男アルフレート:ボルグハルト王国(4公爵領分)の王であり、下テレンス公爵。直轄領は8伯爵領。伯爵の封臣がいっぱい。
三男パルマー(俺):直轄領はフェンツ伯爵領、トリオレ伯爵領、ロイター伯爵領の3伯爵領。ジェレミアス伯爵の孫と結婚すれば、ディール公爵がほぼ確定。
……あれ?差が広がった?
地味にヴァーグナーはディスモア伯爵領を得た後、皇帝に働きかけ続けて、ディスモア公爵の地位を金で買った。その後はパウルス陛下の封臣を譲り受けるという中世的合法手段により、版図を広げている。皇帝の第一皇子が亡くなり、カルリング帝国が危うい中、活躍を期待されている帝国一の忠臣ということになっているな。
一方でボルグハルト王国を棚ぼた的に手に入れたアルフレートは、順調に側室を増やして国内の貴族をまとめ上げているらしい。順調に側室が増えていっていると思ったら、貴族の娘をメイドにさせて、孕ませているのか。ヤることヤった上でキチンと統治しているのがアルフレートらしいが、やっていることは屑そのものである。ぶっちゃけ男としては羨ましいけど、お隣がコイツなのは本当に勘弁して欲しい。
……フェンツ伯爵領が俺の本拠地である以上、この2人の脅威には曝され続けるんだよなあ。クラウス公爵領内にあるアルフレートの領土、2伯爵領分はボルグハルト王国から見て飛び地にはなるんだけど、クラウス公爵領自体がわりと裕福な方だから手放しはしないだろう。
まあでも俺は、俺が出来る中で最善の手を打ち続けていると思うし、とりあえずは無神論者のカーラさんに会って今後どうするか決めよう。……この話が流れたら、ジェレミアス伯爵と戦争する必要もあるのが辛い。




