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第31話 封書

ジェレミアス伯爵からの手紙の封を開けて中身を見ると、内容は「未来のディール公爵へ、未来のポワチエ公爵である私と同盟を結びましょう」的な文章が書かれている。何かおしゃれな言い回しだったから読んでて鳥肌が立った。寒い。


……しかしまあ、内容は悪くない。今回のヨアヒム伯爵との戦争で、俺がロイター伯爵領を分捕ることが前提の書き方は色々と気になるけどな。いや分捕るが。向こうの軍が壊滅的打撃を受けた以上、ほぼ確定で分捕れるが。


ジェレミアス伯爵は今年で47歳の女性、というか婆である。父の屋敷に来たこともあるので顔は知っているが、その当時で44歳ぐらいか?とても44歳とは思えないぐらいに、老けていたな。きっと鯖は読んでいる。でもこの時代、年齢はほとんど自己申告制だし……。


男子優先の分割相続制では、滅多なことでは女性に領土が渡ることはない。しかしジェレミアス伯爵の父は、ジェレミアス伯爵だけを残して逝ったので、鉱山のあるエニュレ伯爵領をそのまま父から引き継いだ。その後は常備軍を揃え、ポワチエ公爵領の6つある伯爵領の内3つを支配するまでに成長し、ディール公爵領内にあるディール伯爵領を分捕ったところ。


彼女には子供がいて、内訳は男1人と女1人の計2人だ。要するにジェレミアス伯爵が死ねば、4伯爵領を丸々長男が引き継ぐことになる。そしてそれをジェレミアス伯爵自身が望んでいる節もあるけど、彼女はたぶん長男に、ポワチエ公爵の座を引き継がせたいのだろう。


しかしポワチエ公爵領の残り3つの伯爵領の内、1つは皇帝の直轄地。残り2つの伯爵領は、第四皇子と第六皇子が保有しています。何だこのムリゲー。息子である皇子を攻撃すれば、当然パウルス陛下が参戦してくる可能性があるし、単独なら負け確定の戦だ。だからといって皇帝に直接喧嘩を売れば、投獄間違いなし。何なら独立戦争にまで話が飛躍する。


「内容は、何が書かれていますの?」

「んー?ジェレミアス伯爵側から同盟を締結しようって話を持ち掛けて来ただけ。向こうも公爵になりたいそうだし、協力関係を築けるなら良い話ではある」

「……ジェレミアス伯爵の孫は、無神論者として有名ですの。何か縁談に関わることは書かれていません?」

「ジェレミアス伯爵の長男、ミランダ・エニュレの次女カーラ・エニュレをディール伯爵とし、貴殿の側室として嫁がせるとあるぞ」

「それは……待って下さいまし。ジュレミアス伯爵が公爵になるなら、必然的に相手は」

「皇帝だな。まあジェレミアス伯爵との共闘ができるなら勝てるだろ。パウルス陛下が抱えている戦争、現段階でもわりと多いし。……第一皇子が死んだことで、これから皇帝相手に仕掛ける奴は更に増えるだろうし」


リンデが手紙のことを聞いてくるけど、縁談があることを伝えるととても微妙そうな顔をして、相手がカーラというジュレミアス伯爵の孫であることを伝えると「ゲッ」と言いたそうな顔をしている。まあこの時代の無神論者は、基本教皇から破門されるし、せっかく仲良くした教会勢力からの評価も……。


いや、この無神論者に再度神を信じさせれば教会勢力からの評価上がるのでは?クヌート教の熱心な信徒にさせてみせますと伝えておけば、そこまで評価も下がらないのでは?ぶっちゃけ婚姻同盟相手とディール伯爵領がセット売りされている以上、断る選択肢がないぐらいにはお得な話だ。


まあ俺がディール公爵になった後、ジェレミアス伯爵をポワチエ公爵にするためのお手伝いはしないといけないのだろうけど……ヴァーグナーの軍と皇子の軍を相手にするの、どちらがマシだろうか。


それにしても孫のカーラをディール伯爵にしてから嫁がせるというの向こうのやり方は、こちらから切り辛い同盟だな。逆に向こうからは、切りやすい同盟だけど、そこを気にしても仕方ないか。こちらも一早く公爵になりたいのは事実だし、隠す必要もない。


ひょっとして向こうも、皇帝の代替わり直後の独立を狙っているのかな。となれば、将来的には隣国同士になる可能性もあるということだ。そこまで見越して同盟を持ち掛けて来る相手なら、評価は改めないといけない。


そして女性であるカーラが両親の死以外で伯爵になれるということは、15歳以上の大人だということ。彼女が何歳か知らないけど、15歳以上の孫を持つジェレミアス伯爵が47歳というのは無理があるだろ。長男何歳なんだよ。31歳前後か?それならまあ……47歳で15歳の孫かあ。


「……カーラって、どんな子なんだろ」

「貴族の一員であるのに15歳、大人になるまで婚約者がいないという時点で地雷であることは覚悟しておいた方が良いですわよ?」

「あー、本来なら正妻としてどこぞの伯爵やら公爵に嫁がせるのが普通だよなあ。……そもそも無神論者の時点でまともじゃないし」


15歳までの婚約者がいないというのは、貴族では早々ない話ではある。何なら俺ですら10歳で決まったし、リンデさんなんか8歳で決まったことになる。ついでに言うと、これで遅い方です。ヴァーグナーとか5歳の時には第六皇女と婚約していました。当時の第六皇女は、2歳です。話がはえーよ。


まあとにもかくにも、会って話をするしかないか。手紙のやり取りだけだと話が中々進まないし、直接会って真意を探ろう。返事の手紙には直接会う約束のことも加えて……なんかリンデさんが話し合いの席に参加したがっているから、リンデさんが来ることも書き加えておくか。これでも彼女は、護衛として最高の戦力です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今話もありがとうございます! [気になる点] >ジェレミアス伯爵は今年で47歳の女性、というか婆である。 >父の屋敷に来たこともあるので顔は知っているが、その当時で44歳ぐらいか?とても4…
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