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第27話 逆襲

睡眠の重要性は、わざわざ説明するまでもないだろう。徹夜明けの翌日の昼間などは、仕事中や学業中に判断力低下が低下したという経験をした人も多いはず。


しかし一方で、戦争時における兵士の睡眠不足がそこまで深刻ではないことを知っている人は少ない。一日眠らせなかっただけでフラフラになっている軍や兵士達の姿を漫画や小説で描写されることが、少なくないからだ。


……人は生き死にがかかっている時、睡眠不足か否かはそこまで関係がない。10日間退却を続け、地に伏して眠る半死半生の兵士でも、敵軍が迫れば武器を持って戦う。特に善政が敷かれている地に住む兵士達は、死を恐れない。


早朝攻撃部隊である農民兵達が軽く朝駆けをして、戦果10人なのに対し、こちらの戦死者13人重傷者25人という報告聞き、ヴァーグナー軍が強いことを再確認した2日目。向こう側はほとんど寝ていないのに、投石機により一方的に被害を受けたのに、相変わらず依然として勢いがある。


……ヴァーグナー軍の4500人の内、昨夜の騒動で戦闘不能になったのは500人ぐらいか。現状、ヴァーグナー軍は3000人ぐらいの規模でこちらの城塞を攻めているけど、その3000人が精鋭じゃないのと、こちらの城塞が堅牢なこと。古参奴隷兵達が先頭に立って不死隊しているから持ちこたえているだけだな。


さて。眠らせないことで相手の軍の士気を削ぐこと自体は失敗した。しかしまあ、あの様子だとヴァーグナー自身は寝ていない。これが重要だ。夜襲があり、報告が上がって来て、対応せざるを得なかった時点でヴァーグナー自身は昨夜一睡も出来ていないはず。これが後に、効いてくる。寝てない確証はないけど。


こちら側が火炎放射器を、どうやってヴァーグナーの陣地付近に設置したのかもヴァーグナーは突き止めなければならない。その過程で、必ず地下通路の存在に気付く。そしてヴァーグナーなら、その地下通路を逆に利用した奇襲案を思いつく。


チカチカと、本来ならば光らないはずのパネルが光る。このパネルは地下通路の中間地点に設置してある感圧板と連動しており、何人ぐらいが地下通路を通っているか把握することが出来る。そして今、こちらの軍は地下通路を使用していない。必然的に、この感圧板を踏んだのはヴァーグナー軍だ。


……2日目になっても、城壁を突破出来ない時点で戦争は長期化する。こちらの投石機の存在や大砲の存在を考えると、長期化すればするだけこちら側は有利になるだろう。大砲の弾も、一日12発分ぐらいは出来るしね。兵糧も、恐らく向こうはあまり多く持ってきていないはず。必然的に、ヴァーグナーは短期決戦を挑まなくてはいけない。


そこに現れた地下通路。相手側が使用していた道を、こちら側が利用しない手はない。もしも睡眠不足なら、そう考えても不思議ではないし、仕方のないことだろう。


恐らくは、500人規模だろうな。本陣に居た、精鋭の500人。ヴァーグナーと同じように、判断力が落ちているのか探り探り地下通路を進んでいる。1つ目の感圧板が反応してから、2つ目が反応するまで3分もの時間があった。随分と慎重だな。


単純に、屈まないといけないから速度が出にくいという理由もあるけど……。本来なら、この地下通路を逆に利用するなら多少の犠牲は考えずに直進するのが最善。ただそのことに、気づかなかっただけだ。


「水門の4番と6番を開けろ。水量が足りないと思ったら、全員でしょんべんをして水量を追加しておけ」

「かしこまりました!」

「……あの地下通路、水が入るの?」

「水門を開けたら入る。むしろ何故入らないと思ったし」


水門を開けるように奴隷へ指示すると、コルネリアが地下通路に水が入っていくのか聞いてきて、水門を開けたら入ることを伝えると腕で自分を抱きしめるような恰好になって震え始める。怖がり過ぎだろ。自分がさっきまで使っていた通路が、即死トラップそのものだっただけなのに。


貯水槽から大量の水が地下通路に流入するはずなので、まあ一般人なら即溺死なんだろうけど……ヴァーグナー軍は精鋭揃いなのか、地下から爆発音やら衝撃が伝わって来る。生き埋めになるか、溺死するかは分からないけど、保険かけとこ。


「水属性魔法が使える奴は全員使っていけ。あと、毒は……今回は良いか」


保険の保険で、毒も流そうかと思ったけど手の内晒したくないし、水攻めだけで行けると思ったので今回は延期。またチカチカとパネルが光り出すけど、この光る回数を数えると半数以上は溺死したんじゃないか?あと地鳴りもあったので、崩落したのは確定。ヴァーグナー軍の精鋭部隊、生き埋めになる(2年連続2回目)。


これがヴァーグナーにとって、退却を判断する材料になるかは分からないけど、大きな痛手になることは確実。短期決戦を挑んで来たのは、俺をすぐに倒せると思ったからではないだろう。ヴァーグナー自身、周囲に敵が多いんだから悠長に俺と殴り合っている暇はない。


中間の方の感圧板は、21回しか光らなかった。その後は光っぱなしだったから、水が到達したということ。これ、最後方の数人しか生きて帰れないんじゃないかな。だとしたら帰還率数%とかだし、ヴァーグナーの悔しがる顔が簡単に想像出来る。何とか負けだけは、回避出来るかな。

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― 新着の感想 ―
[一言] 聖君兄さんは有能だけど運が悪いイメージがあるので水攻めに巻き込まれてうっかり死てそうな気もしますね
[一言] 水魔法で何%生き残っているやら
[良い点] 夜襲で戦果をあげるのかと思いきや… なかなかいいバランス 白紙講和で数年間の停戦までもっていけたら十分かな
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