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第23話 破門

リンデさんとコルネリアは互いに相手からの印象が最悪な状態から関係が始まったけど、リンデさんがコルネリアを壁に叩きつけた後は、思いのほか和やかな雰囲気だった。2人とも大人な部分があって助かったというか、コルネリア側はリンデさんをヤベー奴だと思っただろうし、リンデさんもコルネリアの頑丈さには驚いただろう。地味に屋敷の壁に穴が空いたんだけど、シュルト家が弁償してくれるんですかね。


「私と友達になって下さいな」

「はい……」


いや違う。和やかな雰囲気というよりは、壊れない玩具を見つけて喜んでいる11歳児とまた何もかも諦めた目で虚空を見つめている16歳児の図だ。にしてもこの2人が並ぶと、身長は一緒なのか。リンデさんの身体が如何に大きいのかよく分かる。俺と背は一緒ぐらいだもん。


リンデさんがどんな力を持っているのか何となく察したコルネリアは、友達が増えてテンションの上がったリンデさんにハグされて怖がっていた。このままギュッとされたら内臓とか色々飛び出るだろうから、コルネリア視点は恐怖だろうね。


……嫁が2人いるだけでも、わりと心中穏やかじゃないわ。これが4人とか、わりと肝の据わった男がこの世界には多いんだな。うちの兄のアルフレートとか、すぐに4人まで嫁を増やしたし……何ならその後、更に増やしている。


ヴァーグナーとの戦争中に、ボルグハルト王国の女王の婿となったアルフレートは、ヴァーグナーと和平を結び独立。実質的にはアルフレート側が勝利した形でクラウス家の長男次男争いには終止符が打たれ、ボルグハルト王国の王として権力を振るい始めた。


その後、当然のように4人目の側室、つまりは5人目の嫁と結婚を行い、続け様に他の女とも結婚を行う。最終的には、うちの実家から連れ出したメイド全員と結婚していた。あれ、絶対愛人としてメイドを何人か囲っていたな。どんな好色家だよ。


ボルグハルト王国の最大権力者となり、すぐに8人の女と結婚をしたということで、今では12人の嫁がいるアルフレート。周辺国含め、一躍超有名人となったアルフレート。当然、クヌート教の教皇から破門された。嫁は4人までというのをクヌート教の教義としている以上、言い逃れの出来ない破門であり、クヌート教が国教の国の王やその貴族達が挙って攻め入るも、全員アルフレートに撃退されている模様。


……何であんなに好色で屑な奴が才能、運、実力、金、家柄の全てを持ち合わせているんだろ。というか12人の嫁ってどうやって管理しているんだ。そしてどんな性豪だよ。既に4人の息子が生まれてるとか、聞きたくもねえ情報が入ってきている。こっちは未だ童貞だよ。


まあでも、王様になって権力を握ったら後宮を作りたいって欲望は分かる気がする。近年の地球だと、名前は出さないが1982年に死んだとある国の第7代国王が70人の王妃、210人の息子と娘、1000人以上の孫がいたな。なんだ、それに比べたら12人の嫁なんてまだまだじゃん。


……そのうち、ボルグハルト王国は長子相続に切り替えるだろう。アルフレートに関しては色欲に溺れて、没落というルートだけは絶対に辿らないだろうと確信してるし。肝心のボルグハルト王国自体の動きは、オーブリー王国に照準を合わせているようだから、恐らくはヴァーグナーの餌を横取りする気だろう。


あれ、ということはヴァーグナーとアルフレートの両方からオーブリー王国は宣戦布告を受ける可能性があるな。元々、3つの公爵領を持ったオーブリー王国の初代王様が、カルリング帝国の代替わり時に独立した小さな王国だし、受け切れるわけがない。


しかもその3つの公爵領の内の1つが既にカルリング帝国とヴァーグナーに奪われているから、実質的な領土は公爵領2つ分ぐらい。来年辺りにはオーブリー王国が地図から消えて、オーブリー家が歴史から消えるか。


「私のことはお姉さま、で良いですわよ」

「え、私の方が年上……いえ、何でもないですお姉さま」


リンデさんとコルネリアは、今は完全に力関係が表面化しているけどしばらくしたら仲良くなるんじゃないかな。とりあえずリンデさんは、しばらく領内を見てもらった後、ちょっとした力仕事をやらせようか。


「そういえばリンデさん、荷台にあった岩は何?」

「……私のことも呼び捨てで良いですわよ?

あとあの石は、ここに来るまでの道中で拾った石ですわ」

「石……?

何かに使うつもりとかあるの?」

「護身用に、投石用の石を載せているだけですわ。道中で使ってしまって、新しく補充したのがちょっと大きかっただけで……普段はもう少し小さいですわよ?」


ついでにリンデさんが乗って来た馬車の後ろの荷台に、大きな岩があったので何か特別な材質なのか聞いてみたら、ただの護身用の石だった。直径1メートルぐらいある、どう見ても1トンはある岩が護身用の投石用って……。よく荷台が保ったなと思ったけど、案の定アーティファクトだ。しかも商人向けで値段が高い奴。


そして道中で使ったということは、リンデさんの被害にあった盗賊や強盗がいたのだろう。……流石にリンデさんクラスが戦場にゴロゴロいるとは思えないけど、公爵クラスになると1人か2人、抱えていると思っていた方が身のためだ。この手の化け物対策も、ちゃんと練っていかないとこの先拡張するのは難しいかな。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今話もありがとうございます! [一言] アルフレートもヴァーグナーに負けず劣らず、といった所ですな。 >何であんなに好色で屑な奴が才能、運、実力、金、家柄の全てを持ち合わせているんだろ。…
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