表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/95

第21話 側室

この世界は今でこそ分割相続だけど、元々は長子相続だった。これが分割相続に移行した理由は、封臣達に力を持たせないようにする目的もあるだろうけど、歴史を調べていると御家断絶のリスクを下げるためでもあることが分かる。


カルリング帝国が出来た初期の頃は、分割相続自体が禁止だった。禁止された理由は元々、分割相続自体を貴族達が嫌っていたという理由もある。しかし後継者となる長男の急死、または長男が男児を残せないなどの不確定要素で容易に家門が断絶する時代において、徐々に分割相続を望む家が増えていったのだ。


長く皇帝から領地を任される家になると、今度は御家断絶を避けるために次男以降を血の存続のために残す方が望まれるようになったというわけだな。というか長子相続は長子相続で、次男以降が長男の命を狙うから上手く行かないケースもあるから安定はしない。結局は、社会の成熟を待つ必要がある。


とりあえずこの世界では、分割相続によって幾つも家を分けること。そうすることによって、御家断絶になった時に、全く無関係の他者に領地が渡ることを避けることが出来る。そういう思想になったというわけだ。


あと分割相続と言っても、領地の中核となる土地は長男に受け継がせることが多い。クラウス家だって、クラウス公爵領の中にあるクラウス伯爵領は必ず長男が受け継ぐことになっているし、シュルト家だってそうだ。後は分けられない公爵の称号とか割り切れない領地の部分は、長男が受け継ぐ。


兄弟間の対立が多いことは否めないけど、協力し合うところも稀にあるし、まあ分割相続も良いところはあるんじゃない?俺がもうちょっと権力持ったら、長子相続に法を切り替えるけど。そもそも側室が3人、本妻も含めたら4人の女性と結婚出来るのに、男子が生まれなくて御家断絶とか早々ない。


「おきろー。……おう。マジで目が死んでやがる」


部屋にお持ち帰りしたコルネリアの頬をペチペチと叩いても反応がないので、マジで死人みたいだ。いやメンタル弱すぎだろ。唯一の味方である兄に裏切られたからショックで茫然自失とか、元から味方が居なかった俺に謝れ。


しかししばらくするとポロポロと泣き始めたので、完全に死んでは無かった模様。情緒不安定な奴だなこいつ。


「……早く慰み者にしなさいよ」

「いやお前にそんなこと求めてないし、そもそもそんな価値あると思ってるの?貧乳」


コルネリアは全てを諦めたような声で慰み者にしろとか言うけど、そういうのはまずリンデさんとするので別に良いです。じゃあ何で側室に迎えたかって?そんなの、ただで働かせられる枠に有能そうな人材を埋め込んだだけだけど。この枠、女性にしか使えないから不便だけど。しかも3人までだし。


貧乳と言うと、咄嗟に胸を腕で覆うコルネリア。若干メンタル回復してるじゃねーか。そしてキッと睨みつけてくるけど、剣を持ってない剣士は怖くないです。というか兄の立場を考えるならコルネリアは俺に対して恭順一択だと思うのだが、精神的に幼いのだろうか。まあ16歳だし兄があれだからしょうがないけど。


「何それ。お兄様じゃなくて、私の力が目当てだったの?」

「ハンスなら家令として働かせるよ。補給線の管理とか傭兵団の金管理が得意だったんだろ?だから副団長になったんだろうし、そういう役割を期待して雇った」

「……じゃあ私は?」

「……俺の婚約者の補佐?」

「あんた婚約者いるの!?」

「成人間近の独立貴族に婚約者がいないわけねーだろ。どんな無知だよ。あと次にあんたとか言ったらその無い乳斬り落とすぞ」


冗談めかして俺の嫁の補佐とか言ったけど、純粋に暗視持ちの指揮官がいれば夜襲の成功率がグッと上がるだろう。コルネリア本人に確認のため聞くと、完全に真っ暗闇な夜中でも30メートル先ぐらいまでは見えるらしいし、わりとぶっ壊れ性能だと俺は思う。直接的な戦闘能力には関わらないから、この世界での評価は低いし、そもそも数がいないレア特性だから拾えたのはラッキーだった。


……あとはコルネリアが、可愛かったのもあります。無い乳とか貧乳とか言ったけど、リンデさんに比べたら無いってだけで、寝てても膨らみが分かるぐらいにはあるし。まあ俺も男だし、そろそろ性欲真っ盛りのお年頃だから仕方ない。ここまで条件が揃っていて、しかも妹が嫁に行ったということで裏切り辛い有能な家臣が増えるというのはメリットが大きいと思った。


しばらく会話を続けると、完全に死んでいたコルネリアのメンタルが回復した。どうやら冷静に考えて、今の自分の境遇はそんなに悪いものではないと思い至ったらしい。まあ伯爵貴族の側室なら庶民視点だと完全に勝ち組だし。これから先、ずっとただ働きが確定したわけだけど、まだそこまで頭は回ってなさそう。


これで一先ず、コルネリアが側室になることに問題は無くなったわけだけど……もうすぐリンデさんが、フェンツ伯爵領にやって来る。この世界、男は4人まで結婚が認められているとは言っても、本妻と側室が仲良しになるという訳ではない。むしろその逆の方が多く、下手すりゃ互いに殺し合う可能性すらあるという。


第一印象は大事だし、どうやってリンデさんにコルネリアのことを紹介しようか。これで婚約が破棄されることは無いだろうけど、下手したらリンデさんの怪力で俺やコルネリアの身体が真っ二つに裂ける恐れはあるんだよな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 手を出さずに初手から嫁の補佐って言った。 [一言] 姫将軍?
[良い点] 生存戦略全振り三男の鬼子っぷりよ。 [一言] 愛され長男(チート) ラッキー次男(チート) 廃棄物三男(畜生) なんと酷い三つ巴なんだ…。
[良い点] 今話もありがとうございます! >この世界は今でこそ分割相続だけど、元々は長子相続だった おお、この世界の在り方について補完されている。 異世界から見たら奇妙な制度や風習も、 当の世界…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ