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第19話 挟み撃ち

伯爵同士の戦争は、数か月単位で時間がかかる可能性がある。というかそれが普通で、強固な城塞を保有していたら、それを崩すのだけでも凄い時間がかかるし、包囲しても延々と粘られる。一伯爵領持ち同士の戦争でも、1000人規模で殺し合うこともあるから、そう簡単には決着が着かない。


だけど来月には婚約者のリンデさんがフェンツ伯爵領にやってくるし、それまでには戦争を終わらせないと後ろからヴァーグナーが間違いなく刺してくる。シュルト公爵家との同盟があるとは言っても、フェンツ伯爵領にシュルト公爵の援軍が来るまで最短で1か月はかかるだろうし、シュルト公爵が別のところと戦争をしていたらそもそも援軍が来ない。


というわけで前の戦争で活躍した、異常な再生能力を有した元奴隷達と農民兵の半分、250人をフェンツ伯爵領の西側、クラウス公爵領に近い砦へ配置。ここにはダーヴィト軍相手に活躍した大砲を多く設置しているから、少人数でも防衛ぐらいなら何とかなるはず。まあ最低限、本軍が戻って来るまでの時間稼ぎぐらいは出来るだろう。


そして残りの1200人+傭兵300人程度で侵攻を開始。この傭兵団、団長が戦死したら逃げるように戦場から消えたから評価がめっちゃ低くて安くで雇えた。こんなのでも数合わせにはなるし、別に団員の練度が低いわけではない。一応、現団長の双子の妹を人質として本陣に置いているから大丈夫だろ。


「お兄様が逃げ出すわけないじゃない!というか私も武人よ!前線に出しなさい!」

「うるせえ人質。評価挽回したいから参戦したならつべこべ言わず俺に従え」


で、この傭兵団の現団長と妹のコルネリア・シュミーダーは北にある伯爵家の分家の分家の分家です。所領もない分家の分家の子供で、成人したと同時に傭兵団へ入ったらしい。双子ということで、若干忌み嫌われていた模様。この世界、双子だと基本片方を殺すからね。男女の双子だったから大丈夫だったみたいだけど、男女の双子は男女の双子で駆け落ちした夫婦の生まれ変わりとか言われるから煙たがられるという。


新しく団長になっている、コルネリアの兄のハンス・シュミーダーは16歳なのに特性頑丈と底力と剣術レベルⅣを持っているから結構強い。この傭兵団には、新しい玩具である破城槌の護衛をして貰う。破城槌は大きくて動かすのには時間がかかるけど、威力は折り紙つきです。太い丸太が吊り下げられていて、何回かぶつければ、城壁ぐらい簡単に破壊することが出来る。


一番の心配は壊されることだけど、まあアルフレートも雇ったことがある傭兵団が護衛だし大丈夫だろ。後は陽動部隊として、反対側からも奴隷兵に攻撃を仕掛けさせる。火薬を幾らか渡して、なるべく敵兵を引き付けるようにも指示。こちらの部隊の隊長は、新しく元帥になったグラミリアン。今回の戦争でも活躍したら家名をつけてやろう。


そうして始まった戦争は、僅か3日で佳境を迎える。向こうが最初から籠城を選択したから、道中の野戦はなし。後は破城槌を扱う古参奴隷を中心に、新しく購入した奴隷兵300人と傭兵団300人が西側から、反対側から回り込んだ奴隷兵300人と常備軍200人が東側から攻撃を仕掛ける。


農民兵は一応、アルトーが上手く逃げ出した時の対策として、薄く広く展開。ぶっちゃけ、農民兵は戦闘に参加されて勝手に死なれると領内の生産力が落ちるから極力使いたくはない。でもこういう包囲をする時は数の多い方が有利だし、戦争のことだけを考えると連れて来て損はないので連れて来た。


……それにしても破城槌の衝撃音というか、ズドンという衝撃は凄いな。反対側の東側からでも聞こえるレベルなんだけど。質量と速度を掛け合わせて、城壁を削っているからそりゃ大きな音は鳴るんだけど、これ城壁内にいるトリオレ伯爵領の領民にとっては恐怖を感じさせる音だと思う。


一方でグラミリアンは火薬で城壁を破壊した。城壁の近くに火薬をセットして、外側から火矢で爆破。一回で穴が空いたので、その穴に火薬を敷き詰め、再度爆破。2回の爆発で普通に人が入れるようになった。


……いやこれ破城槌要らなかったんじゃねえの。火薬を結構というか、グラミリアンに渡した分は全部使われたからめっちゃ金はかかったけど、わりと安全に城壁を突破出来たし。後は火薬で破壊した城壁から中へと奴隷兵と常備軍が流れ込み、反対側から破城槌を使って無事城壁を突破してきた奴隷兵と傭兵団の部隊が城壁内を蹂躙。アルトー君を探し出して捕らえたので、即刻処刑です。むべなるかな。


これで俺は、フェンツ伯爵領に加えてトリオレ伯爵領を統治することにもなった。伯爵の直轄領となる中心都市にある城壁は東西両方に大きな穴が開いており、修復には時間がかかるけど、これで俺も複数領持ちの伯爵です。


一応、ヴァーグナーが俺の宣戦布告の知らせを聞いて軍を動かしたという情報は入ったけど、この戦争があまりに早くに終戦したから振り上げた拳を振り下ろすことが出来なかったみたい。その腹いせかは分からないけど、またオーブリー王国に略奪を仕掛け、オーブリー王国の王都まで行って現王様の長男次男長女を捕らえたらしい。無敵かよ。


というかヴァーグナーがフェンツ伯爵領に隣接する地域に城塞を建築し始めたんだけど、完全に俺対策ですよね。略奪しに行く時も、こちら側へ常備軍の戦力をある程度残した状態で、主力は農民兵の2000人で略奪に行っていた。……同じ農民兵なんだけど、クラウス公爵領の農民兵はフェンツ伯爵領の農民兵と比べるとずっと強い。


それでも農民兵中心の2000人の軍に王都まで略奪されて蹂躙されているオーブリー王国はもう駄目だろう。農民の蜂起も多いらしいし、近いうちに解体されそうだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今話もありがとうございます! [気になる点] >この世界、双子だと基本片方を殺すからね。 >男女の双子だったから大丈夫だったみたいだけど、男女の双子は男女の双子で駆け落ちした夫婦の生まれ変…
[一言] 城塞造ったということはそこから先に進めないと認めたようなもんだろ へいへい、長男ビビってるよー!
[一言] むべなるかな
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