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第18話 準備

ダーヴィトの次男、アルトー君に対する正当化を待っていたら長男のアニエス・ロイターが他の公爵領の領主から攻められていた。完璧なハイエナ行為だが俺は文句を言うことが出来ないという。だってアニエス・ロイターが持つディール伯爵領への請求権が無いんだもん。一度に2つの伯爵領へ正当化を仕掛けることが出来る伯爵なんて、そうそう居ないです。


恐らくは、ダーヴィトの代からディール伯爵領を狙っていたのだろう。このディール公爵領の丁度真北を陣取っているジェレミアス伯爵は、カルリング帝国内でそれなりに有名な伯爵だ。その最大の理由は、カルリング帝国の宰相を務めているからになる。


ジェレミアス伯爵は領内の鉱山のお蔭で、とても金持ちな領主でもある。今回、ディール伯爵領へ侵攻をしたジェレミアス伯爵の軍規模は3000人。そしてそのうち、1500人が常備軍だ。傭兵を雇っているわけでもないのにこの軍規模は、金がある証拠だろう。


そしてジェレミアス伯爵の最大の特徴は、貨幣の鋳造を行っていることだ。皇帝から貨幣の鋳造をしても良いと許可を貰っており、領内に複数の貨幣の鋳造所がある。無限に湧き出るお金を使えるんだから、常備軍なんか雇いたい放題使いたい放題という状況。


領内に鉱山があるなんて羨ましいなー、と思いながら、俺はひたすらにアルトー君の支配するトリオレ伯爵領への請求権を得るため、教会に金を積む。……これをやらずに侵攻なんてしたら、最悪の場合クヌート教から破門され、教皇から聖戦を仕掛けられるというね。教皇の兵数は、約2万弱と皇帝であるパウルス4世の兵数と同等。頭おかしい。


2万人どころか、うちは2000人の軍を編成することすらままならないです。奴隷兵が増えたとはいえ、トリオレ伯爵領へ侵攻する時の軍規模は最大で1500人ぐらいかな。これでも一伯爵領しか持たない伯爵の中では多い方なんだけど。普通なら1000人超えないし。


そういえばシュルト公爵家に前回の戦争のことが伝わったようで、独立もしたことだし正式な同盟を結ぼうと向こうから言ってきた。もうじき13歳という、まだあと2年は子供の伯爵相手に同盟を結んでくれるところなんて他にないので即締結。来月の俺の誕生日には、リンデさんの方がうちのフェンツ伯爵領に来る予定が立った。


正直に言うと、シュルト公爵領とは発展度合いが比べ物にならないぐらいに低いし、リンデさんが実家に帰りたくならないか不安だけど……。まあカルリング帝国内では下の上ぐらいの経済力と中の下ぐらいの治安の良さだから大丈夫だろ。数年前と比べたら、治安はかなりマシになったと思う。


『どうせならそのまま移住しても良かったのですが、お母様が許してくれませんでしたわ』

「15歳まで結婚は出来ないし、流石に気が早いよ」

『中央の貴族達は結婚前から同棲を始めますわよ?』

「それは実家同士の距離が近いからだし……こっちに来たら実家に簡単には帰れなくなるから、今の内に親孝行はした方が良いよ」


リンデさんとの文通は、結局毎月1通か2通に落ち着いた。筋トレは相変わらずしているようだけど、外に出られる時間はあまり長くなってない模様。日の下に出ると力が抜けるヴァンパイア仕様のお嬢様である。本人には伝えなかったけど、夜なら戦働きが出来そうなぐらいには戦闘能力が高いし、戦場での活躍を期待したいです。


というか本当にまともな人材がいない。俺が求める能力なんて、四則演算が出来て文字の読み書きが出来てある程度の礼儀をわきまえていることだけなのに、全部出来ている人どころか全部出来ていない人の方が多いという。まあ全部なくても農民なら生きていけるし、義務教育なんてないから仕方ないんだけど。


「というわけで、お前は今日から宰相な。元帥の地位はグラミリアンに譲れ」

「ええ……」


男爵達に対して、強権を発動できるようにはなったから役職の入れ替えとかはスムーズに行えるようになった。今まで元帥を任せていた、元からいる男爵達の中では優秀なハルティング男爵を宰相にし、元奴隷のグラミリアンを元帥に。これで7つのポジションの内、3つはまともな人材が居座ることになったよ……。


残り4つのポジションは、人間性がまともじゃなくても下手な行動をしない奴ならしばらく居座らせよう。逆に人間性がまともでも、下手な行動をする奴なら殺す。無能な怠け者よりも無能な働き者の方が鬱陶しいのは説明不要の自然の摂理。


いやマジで勝手に「主君が戦争で素晴らしい才覚を発揮した」とか吹聴しないでくれるかな。もうちょっと機嫌が悪かったら一族郎党を皆殺しにしたかもしれない。既に難易度ハードな世界で、更に周囲の警戒度を上げる奴が味方なのは勘弁して欲しい。この世界での知名度向上は、それだけで死に繋がる可能性を高めることになるし。


そうこうしている内に正当なトリオレ伯爵領の請求権を得たので宣戦布告。何か俺の兄である次男アルフレートがいつの間にか女王の婿になっているし、後ろからヴァーグナーが刺してくるかもしれないけど、どちらにせよ、今の窮地を脱するにはもう一つ伯爵領を得る必要がある。


……まあ向こう側が600人に対して、こちらは1500人。よっぽどのことが無い限り、負けはないと思いたい。

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[一言] というか本当にまともな人材がいない。俺が求める能力なんて、四則演算が出来て文字の読み書きが出来てある程度の礼儀をわきまえていることだけなのに、 ↑ こんなの貴族に仕える人材です いたら取り合…
[良い点] > 勝手に「主君が戦争で素晴らしい才覚を発揮した」とか吹聴 アカンw これはお花畑思考が過ぎるわ……そら全権限握ってて愛着無い相手なら殺すわ。 相手からしたら「素晴らしいものをそうと広…
[良い点] 主人公がぶっとんでいる点 女神が主人公にチート能力をあげなかった点 (ただでさえヤバい人にチートを与えたら世界がヤバいことにされそう) [気になる点] 主人公が自身の周りを元奴隷で固めて…
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