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異世界流浪の料理人  作者: 開けドア
魔女の家でお勉強編
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ベッドで寝る幸せ


魔女からの手紙を読み終わった。


魔法を使える女性とくれば、魔女なのだろう。

なんかすごい。

ファンタジーに馴染みのない男には、聞き覚えのない単語が多かった。

なかなか飲み込めない。

少なくとも、すぐに2枚目の紙を読む気にはなれなかった。



ちょっと休憩しよう。



気分を変えたい。

男は指輪を置き、ゆっくりと立ち上がって、玄関から外に出た。

澄んだ湖面をみつめつつ、大きく伸びをする。



300年も年下の夫と、あと500年は生きられる?

この惑星には、そんなに長く生きられる人種がいるのか。



エルフという単語に聞き覚えのない男には、手紙の主は宇宙人的なイメージもあった。

地球外生命体。

そんな単語がぴったりだった。

しかしダサいながらも、新品だという白い服は人間の男女が普通に着れるサイズ。

それにこれほどの家、家財道具を惜しげもなく、くれると言う。

地球外生命体と言えども、寿命が長いだけで人間とそう変わらないのかもしれない。

ラーシャさん。

カタカナ名前だから、欧米人的な見た目に近いのだろうか。

少なくとも、パンを食べたいと思うのは男と一緒だった。

エルフと言う人種に、親近感を覚えなくもない。



「あれ、小麦が正解なんだな」



麦の種類がわからなかった黄金畑。

一つ疑問がなくなってちょっと嬉しかった。



まずは掃除だ。

急がないと日が暮れてしまう。



男は気持ちを切替え、掃除を再開すべく家の中に戻った。



やがてベッドや床、窓など全てを拭き上げた頃には太陽は随分と傾いていた。

日没も近いのだろう。

ちなみに台所は明日へ回すことにした。

明らかに時間が足りなくなるから我慢した。

まずは建物の中で、寝れるようになっただけで良しとしよう。


まだ台所が使えないから、今日も外でバーベキューだ。

今日は朝に背肉の肉バームを焼いただけで、何も食べていない。

急に腹も減ってきた。



「今日は久々に野菜が食えるな」



肉以外を食べるのはいつぶりだろう。

楽しみだった。

土間におり、藁でできた大きなザルを確保。

雑巾を入れたものよりも、一回り小さなタライも見つけた。

いそいそと裏口から畑に出る。



「やっぱり見たことないよな」



料理人の好奇心を刺激してやまない野菜たちに、目移りしてしまう。

じっくり選びたいところだが、今日は時間がなかった。

光の花が咲く草原とは違い、日没後2時間もすれば朝まで暗いままだ。

月と星だけの夜が訪れる。

せっかく掃除を頑張ったんだから、今日からは屋根の下で寝たい。

ベッドだってあるんだし。

明るいうちに、手紙だってもう一度読み返したい。


ウサギの赤身肉は焼き上がるのに時間がかかる。

急がなければならなかった。



「今日は無難そうなのだけにするかな」



そのままかじれるトマトでいいだろう。

日本のスーパーで出回るトマトよりも一回り大きく、楕円形にボコボコとヘタの近くが盛り上がっている赤い実を1つ。

同じ茎になっている他の種類も、適当にもいでおく。

黒い大きな実。

オレンジ色の大きな実。

黒いのと、黄色いミニトマトはそれぞれ3つずつ。

水をはったタライで冷やしておけば、残ってもいいだろう。


家の前のちょっとした広場で、エアーキャンプファイアーの火をおこした。

肉を焼き、美味しく食べる。

赤身肉はようやく柔らかくなっていた。

それでもクセのある味を、トマトがさっぱりさせてくれる。


ただ、トマトの味には色々とモノ申したい事がありすぎた。

ツッコミ所のある味。

丸かじりをするには危険な味。

なぜにたったひと房から、こうも違う味の実がなるのか。

しかし研究するのは明日から。

いろいろ後回しにして、久しぶりのみずみずしさをウンチク抜きで味わう。

大目にもいだのに、残すことなく結局全て食べてしまった。


手紙を見直そうと思っていたのだが、食事を終えると急に眠気が襲ってくる。

日没は迎えたものの、まだ外は明るかった。



「今日はいろいろ疲れたしな・・・・」



男は黒のダウンを敷布団がわりにし、早々にベッドに横になることにした。

上下、グレーのスウェットに着替える。

見上げた天井には、ちゃんと天井があった。

青空や夜空ではない天井が新鮮だった。

文明人にまた近づいたと満足する。



家だ家。

オレの家。

今度はちゃんとホントのマイホーム。



男はベッドで寝る幸せをかみしめつつ、眠りについた。



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