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異世界流浪の料理人  作者: 開けドア
魔女の家でお勉強編
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魔女の家



「うぉーーーっ」



マンネリ化している奇声をあげつつ、水浴びをする男。

太陽の明るい光のなか、もちろん一糸まとわぬ生まれたままの姿。

つまりは裸族。

文明人の誇りも恥もあるわけない。

どうせ誰もいないのだ。



「うぉーっ・・・・」



この解放感。

プライスレス。

三十路にして人生お初、マッパな水浴びを満喫していた。


湖は岸のほうこそひざ丈の深さだったが、少し離れると足がつかなくなった。

かといってそれほど深くはない。

一番深い所でも、せいぜい3メートル程度だろうか。

マッパの男は、不格好に湖を泳ぎ回った。

時々沈んでいる。

その都度、湖の底を蹴って水面に浮き上がった。


浮き上がる直前、水の中から見上げる水面が美しい。

何度もわざと沈んでは、水面を眺めた。

もっと眺めていたいのに、勝手に体が水面に浮き上がってしまう。

体脂肪が多いのだろうか。

ちょっと気になる所だった。

それはそれとして、浮き上がった時の空気もまた旨い。

格別だ。


しかし楽しい時間は長く続くものではない。

終わりを迎えようとしていた。



「っぷはっ・・はっ・・はっ・・」



息が苦しい。

体力が続かない。

わざとではなく、本当に沈んでしまいそうになってきた。

次は浮き上がれなくなるかもしれない。

ぶくくと沈めば、ハイ終わり。

イロイロと終わってしまうような気すらしてきた。

ゼイゼイ喘ぎつつ、急いで岸に戻る。

なんとか水からあがり、地面に大の字になった。

青空を眺めつつ、息が落ち着くのを待つ。



「泳いだの・・・何年ぶりだろうーなー・・・」



湖に夢中で、目先の水しか見ていなかったが、落ち着いてくるとイロイロ気になる。

半身を起こして、辺りをそわそわと見回した。



「うぉっ!やべっ・・・・」



とび起きた。

慌てて服を着ようとして、べったりとついた土に気付く。

急いで空中シャワーで洗い流して、スポーツバッグに駆け寄った。

スポーツタオルを引っ張りだし、体を拭きつつ、散乱した服を急いで拾い集める。

あたふたと身につけた。

何とか文明人の姿を取り戻した後、そーっと目線を動かす。

もう一度、ある一点を見つめた。



「・・・・・・」



広いが全体が見渡せる湖の向こう右手側、ちょっと離れた所。



「・・・・・・魔女の家?」



年季の入った木造の家があった。

よく言えばログハウス。

三角の屋根。

いかにも魔女が住んでいそうな家だった。

なぜ裸族になる前に気づかなかったのか。



「・・・・・・やべーっ」



男は焦っていた。

それも当然。

マッパの泳ぎを見られていたらイロイロよろしくないだろう。

この土地にきて、初めてお会いするはずのお人。

第一森ビト。

記念すべき出会い。

感動のご対面。

しょっぱなから誤解されたくなかった。



ちょっとテンションがあがっていただけなんだっ。

水着もないし、自然と戯れていただけでっ・・・・・。

ちょっと童心にかえって遊んでいただけでっ・・・・・。

見逃してくれっ。

変態じゃないからっ。

絶対に誤解されたくないっ。



必死だった。

心の中で無罪を主張しつつ、人の姿を探す。



「・・・・・人、いない、セーフか?」



見た限りは、外に出ている人はいないようだ。



よかった。

助かった。

セーフ。



まだ濡れている髪をなでつけ、手櫛で整える。

残念ながら女子力ならぬ男子力の低い三十路の男のお泊りセットには、櫛なんてこじゃれたモノは入っていなかった。

風呂上りには寝ぐせもないし。

自然乾燥で十分。

それが男のスタンスだったが、この時ばかりは後悔した。

服についた土をパンパンと払い落とす。

散らばっていた光の花の針金も拾い集め、全ての荷物をまとめて持った。

若干緊張している。



お宅訪問。



男は緊張の一歩を踏み出した。


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