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異世界流浪の料理人  作者: 開けドア
森でお勉強編
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普通の人に、オレはなるっ


今日も気持ち良く晴れた大草原の朝。

日本ならば春か秋という心地よい気温だった。

こんな日は胸いっぱい、深呼吸がおススメ。

素晴らしい1日の始まりを迎えられるだろう。


しかし冷たい空中シャワーを浴び続けている男には、そんな余裕はなかった。

服なんか着ていられない。

とっくに全て脱ぎ捨てている。

一糸纏わぬ体を冷やしても冷やしても、どうにもならない。

体の芯から末端に至るまで感じる異常な熱。

爆発するんじゃないか。

口から煙の一つも出るんじゃなかろうか。

体内の熱を少しでも逃がそうと、男は空気を求める魚のようにパクパクと口を開けて息を吐く。



俺はどうなってるんだ。

クルマだったらオーバーヒート。

では人間ならば。

人間だったらオーバーヒートはどうやって治すのか。

この熱は、何なのか。

どうすればいい。

助けてくれ。



水だけでは、熱が全然おさえられない。

とっさにクラッシュアイスを出した。

大量の水と氷を共に浴び続ける。

水に氷を加えたことで、体の熱の発生が若干緩やかになったようだ。

混乱しながらではあるものの、考える余裕を少しだけ確保する。



オーバーヒートはエンジンを切って冷やすのもアリだから・・・・・。

人間のエンジンって何だっ?

俺のエンジンってなんなんだっ?

自分のエンジン、どうやって切るんだっ?

考えろっ・・・・・。



必死だった。

間違いなく命がかかっている。

こんな病気や怪我の症状は知らなかった。

聞いたことも見たこともない。

何もわからない。

代わりに思いついたのが、クルマのオーバーヒートだった。

それは何かヒントになるか?

気が遠くなりそうな熱に抗いながら、焦って考え続ける。



エンジン、人間のエンジンッ・・・・。

オレのエンジン・・・・わからんっ。

クルマなら・・・・クルマのエンジンって、結局なんだっ?

エンジンは・・・・・鍵でエンジンかけて、クルマが動くっ・・・・・

鍵使ってエンジン切るっ・・・・



男の考える方向は的外れかもしれない。

しかしわずかなヒントに全力でしがみついていた。

クルマの仕組みからどうにか自分の仕組みに応用させようと必死だった。



じゃあ人間だったらっ

鍵でエンジンかけて、人間が動くっ・・・・。

人間が動く・・・走れるってことかっ?

鍵でエンジン切れるっ・・・・・

人間のエンジンの鍵ってなんだっ・・・。



なかなか答えが出ない。

体の熱にうかされつつ、さらに知恵熱が出そうな勢いだった。

頭の痛みに気を失いそうになる。

根性で、薄れる意識を自分の支配下に置き続けた。

まだ倒れるわけにはいかない。

そのままお陀仏したくない。



・・・・・考えろ考えろ考えろっ。

今の俺は普通の人間じゃないっ。

超人奇人変人びっくり人間っ・・・・



その時閃いた。

直感に従って、思い切りジャンプする

熱に浮かされながらも、異常な高さまで一気に加速して跳びあがった。



「よっしゃこれっ・・・・・」



確信を得た。



今、オレ超人変身中だっ。

めっちゃ動けるエンジンかかってるんだっ。

変身終わるっ、終わったら助かるっ・・・・・。



結論が出た。

しかし今度は変身を終了させるやり方がわからない。

水だったらエアーな動作で水を止める。

火だったらエアーな動作で火を止める。

変身やめるのは、どうしたらいいのか。

テレビのヒーローは、「へーんしんっ、とうっ」で変身するのを見たことがあった。

しかし変身をやめる所を見たことがない。

どうしたらいいのか。

大量の氷水で冷やし続けているはずの体が感じる熱は、どんどん酷くなっている。

もう時間がなかった。



一般人に戻りたい。

普通の人間になりたい。



引退するアイドルか。

ツッコむ者は誰もいない。

おっさんには似合わない言葉であっても、男は心の底から願っていた。

何せ命がかかっている。

真剣だった。



思いついた言葉を叫んだ。



「へーんしん、やめたっ・・・。普通の人にっ、オレはなるっ」



緊迫の一瞬。



プシューッ・・・・・・。


例えるならば、圧力鍋の圧が急激に抜けていくかのように。

男の体から熱が一気に抜けていく。

熱がおさまっていく。


ギリでなんとか。

危ない所で間一髪。


男の命は助かった。


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