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異世界流浪の料理人  作者: 開けドア
大草原脱出編
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持ち物チェックをもう一度


大草原に一人きり。


しばらく呆けていた男は我に返った。



とりあえず職場に連絡をしなければ。

もしかしたら、既に電話がかかってきていたのかもしれない。



気を取り直してスポーツバッグからスマホを取り出した。

だが画面は真っ暗なまま、いつものような反応をしてくれない。

力いっぱい電源を押しても同じ。



「くそっ、動いてくれよっ」



気持ちばかり焦り、何度も何度も電源を押した。

ほかのボタンも押してみる。振ってみる。

しかし全く反応がない。

電池が切れているのか、何をどうしても立ち上げられなかった。



「ダメか・・・・・」



しばしの奮闘の後、男は仕方なくあきらめた。

起動しないスマホから目をはなし、目の前に拡がる大自然を見つめる。

人間を癒してくれるはずの緑の景色は、今の男には何の役にも立たなかった。



「いやちょっと待ってくれよ・・・・・。」



何もかもがわからなかった。

不安になり、なんとなく身の回りを確認してみる。


草の上に脱ぎ捨てられた黒いダウンジャケット。

ポケットにはスクーター用の革手袋が入っていた。

黒の長袖Tシャツを着て、カーキ色のカーゴパンツを穿いている。

足元はグレーの靴下のみ。

靴は履いていない。

スポーツバッグ。

コンビニの袋。

しわくちゃになった大きめの紙袋。

以上。


つまりは寝る前に部屋に入った時の服であり、持ち物だ。

次に持ち物の中身の確認もしてみる。


スポーツバッグの中にはお仕事セット、お風呂セットにお泊りセット、愛用の長財布。

一つも欠けることなくちゃんと入っている。


コンビニの袋も確認する。

飲み終えたビールの空き缶、ペットボトルのお茶が一本、茶色い瓶に入ったファイトな栄養ドリンクが一本。


続いて紙袋。

中には朝食用にもらった賄いのパンがそのまま入っていた。

大きな塊が6つ。

ちゃんと1つずつ、しっかりしたビニール袋に入っている。

早朝出勤者はミーティングしながら焼き立てを味見するので、営業後の残りは遅出の者が全部持って帰ることになっていた。

余ったら冷凍でもすればいい。

しかし残念ながら、愛用の高機能冷蔵冷凍庫が見当たらない今となってはどうやって冷凍するのかわからないのだが。


まあとりあえず、何一つ欠けることなく入っているのを確認した。

少し安心する。


落ち着いてきた男は胡坐をかき、ペットボトルのお茶を飲むことにした。

半分ほどを一気にあおり、一息つく。

喉はまだまだ渇いていたが、何故だか飲み干すのが躊躇われた。


そのまま目の前の大草原を眺める。

大自然のすばらしさを主張する、どうどうとした佇まいだ。



「・・・・・・わからんなー。」



なんでここに居るのか。

どうして大草原なのか。

なんで。

どうして。



わからないことだらけだった。



「宇宙人にでも誘拐されたのかねー。」



ツッコむ者のいない冗談を口にしてちょっと寂しい気分になった。

そんなはずはないと思ってはいても、冗談と言い切れないのが辛い。



「泣いてもいいんじゃねーか・・・・・」


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