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異世界流浪の料理人  作者: 開けドア
森でお勉強編
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楽しい実験


何もない空中から流れ出す奇跡の水。

透明で旨い水。

そんな奇跡の水を流したのは男の右手だった。

止める事ができるのも右手。

水を流すも止めるも自由自在。

右手が水を支配する。

夢ではない証拠があった。

水が流れ落ちた先の、地面も草もしっかり濡れている。

水たまりができるほどの勢いだった。



本当に大草原の七不思議なのか?

俺は何かに目覚めたのか?

超能力とか。

黄金の右手を持つ男にでもなったのか?



疑問はつきなかった。

同時に、ワクワクしてくる気持ちを抑えられない。

本日の一大イベント。

青空教室での実験大会。

大草原にて開催。



「やるか」



試したい事がたくさんあった。



●左手ではできるのか


すげぇ。

左手でもできる!

黄金の左手!

いや右とあわせて、黄金の両手!

俺ってすごいのか?


●高さはどこまで高くなるのか


うーん。

3~4メートルぐらいまではいけるけど・・・・・。

高いトコずっと見上げてたら、首が痛くなってきた。

しんどい。

よし、高さ実験はこの辺でいいか。

シャワーぐらいの高さOKが確認できたから十分満足。

次の水浴びはノビノビできるな。

うん、次行こー。


●距離はどこまで離れてできるのか


うん、5メートルは普通に行ける。

それ以上になったら出来たり出来なかったり。

まちまちっぽい。

10メートルぐらいは全然無理。



●寝そべって実験

うん、問題ない。


●立って実験

大丈夫。


●座って実験

おー。

胡坐は・・・・OK。

正座も・・・・OK。

足伸ばして座っても・・・・大丈夫。

よし、いっぺんエアー椅子に座ってみるか。

うぉっ・・・

これは辛い。

腿がプルプルする・・・・・。

急いでやるぞ。

・・・・出来た。

が、もう二度とやらん。

エアー椅子はウサギと走るより筋肉にクル。

これは危険、調子に乗り過ぎた。

反省。



男は細かく変化をつけつつも、何度も何度も同じことを試していた。

全く飽きることがない。

子供が新しいおもちゃを手に入れたようだ。

ひたすら水を流して、水を止める。

何回やったって楽しい。

右手、左手と変わらぬ動作を繰り返した。

見えないレバーを押して水を流し、レバーを上げて水を止めるエアーな動作。

動作はエアーでも流れる水はエアーじゃない。

本物の水がちゃんと流れてちゃんと止まってくれる。

動きに水がついてくる。

水を支配できている。

すばらしい。


水がないというここ数日の辛く苦しい経験が、さらに男のテンションを上げていた。

この充実感。

満足感。

何かを試して成功するたび、嫌味なく自画自賛ができてしまう。

出来なくったってそれが当然。

何のダメージもない。

男は十分に実験を楽しんでいたが、ただ一つだけ残念なことがあった。



「ペンとノートがあったらな・・・・・」



書く物がないのだ。

こんな世紀の大発見、ぜひとも記録に残したかった。


ペンやノートは、店や自宅に置いている。

スポーツバッグには入っておらず、つまりこの大草原に持ち込めなかった。

本当に残念だ。

男はレシピを考える時、必ずペンとノートが必要だった。

新作やコンテスト用のレシピを考える時は必須の持ち物。

孤独な作業のオトモダチ。

スマホはバッグに入っているが、男にはスマホでメモをとる習慣がなかった。

そもそも電源も入らない。

予定を整理するのだって、スマホはお呼びではなかった。

手の平サイズの手帳を使っているが、職場のロッカーに置きっぱなしになっているのが裏目にでた。

持ち歩いていれば紙だってペンだって使えただろうに。

つくづく何もないのが悔やまれる。


誰が見るわけでもない実験結果が記せないのを少し寂しく思いつつ、男は楽しい実験に没頭した。


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[良い点] 設定は好き [気になる点] 進展が無さすぎて読むのが辛い [一言] 今までありがとうございました
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