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異世界流浪の料理人  作者: 開けドア
男の日常
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プロローグ  職場紹介

のろのろと自宅アパートの階段を上る三十路の男。

その職場は日本有数の観光地にあるイタリアンの店である。


政財界、芸能界の客も多い有名店だ。

世界中から人も集まる。

当然値も張り、ワインなどは庶民が見ることのないような銘柄が数多く揃えられていた。

一人当たりの支払いが何十万をも超える常連客を多く持つ高級店。


残念ながら、こういう店の常連客とは我儘であったり、特別扱いを望む客が多い。

そして当然ながら、店はそれをほとんど断れない。


営業終了後の「特別営業」に断りきれず対応し続けた結果、繁忙日のラストオーダーは23時で定着していた。

飲み物のラストオーダーは23時半。

当然、閉店は深夜を回る。


しかし遅くにくる客たちは気前が良く、料理も酒も高いものを好んだ。

お気に入りの給仕やソムリエ、時にはシェフを呼び、挨拶替わりに高いワインで乾杯をしてくれる常連客は珍しくない。


中でも、男の月収どころか年収すら超えるワインを開け、チップ替わりに結構な量を残していく客は有難い存在だった。

遅くにやってくる我儘な客のおかげで、自腹では絶対にまず一生飲めないであろうそれらを飲める。

独立志向の高い料理人たちには、長時間労働を強いられる繁忙日がむしろ歓迎されていたほどだ。

男も当然その内の一人であり、仕事はきついが、ほどほどに満足な日々だった。


飲食はブラックと言われる事が多いが、男の職場は拘束時間を除けば、まあまあ恵まれた待遇と言えるだろう。


店では繁忙期でなければ週に一度は必ず休みが取れる。

繁忙期明けには交代で4日間のリフレッシュ休暇がもらえ、男も毎年2回は帰省していた。

残業代はきちんと計算され、繁忙期には3食賄いがあり食費もかからない。

趣味や恋人などを持てる時間の余裕がない分、カネは自動的に貯まっていった。


当然、将来自分の店を持ちたい料理人には人気の職場。

料理人憧れの有名店だった。

同僚は皆、狭き門をくぐり抜けた猛者ばかりといえるだろう。。

料理人のみならず、ソムリエや給仕に至るまで、その道の一流どころが集まっていた。


それでも男の経歴だって負けてはいない。


高い格付けを持つ料亭で順調に和食のキャリアを積みながらも、30歳を目前にして退職。

古巣の調理師学校に戻る。

上級イタリアン専門科を専攻、2年の在学中に繁忙期限定の派遣料理人として学校推薦を受け入店。

慣れた包丁さばきで膨大な量の下拵えを引き受け、即戦力と歓迎される。

腕もコネも揃えて卒業を迎え、晴れてそのまま正社員となってから5年の月日が経とうとしていた。



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