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異世界流浪の料理人  作者: 開けドア
大草原脱出編
23/169

6番目の月は


豪華な真夜中のイルミネーションを独り占め。

この世とは思えない光景を、男は夢中で見つめていた。


赤、白、ゴールド、青、紫。

暗闇の中、光の花がふわんふわん。

緑の蝶々もふわんふわん。

やさしい光が乱舞している。

幻想的な祭りだった。



寝るなんてもったいない。

起きてて正解だ。



男は自らの判断を自画自賛する。

徹夜の目的など、早々に見失い、ただ楽しんでいた。


気が付いた時には、時計の針は随分進んでいた。

午前1時48分。



ついさっき、真夜中になったと思っていたのに。



あっという間に時間が経っていたことに少し驚いた。

もうすぐ午前2時がくる。



「そういや、月・・・・」



23時に4つ目、午前0時に5つ目と、月が増えていった事を思い出す。

たった数時間前の事なのに、随分前の事のようだ。



時計の針が1時間進む毎に、月が昇るのではないか。

じゃあ午前1時には6番目の月が昇ったりしてたのか?



5つ目の月を発見した時は、ちらっと6番目の月の事を考えていた。

しかし午前1時のお月様チェックなんて、全く思いつかなった。

月が増えていくことに慣れてしまったのか。

あんなに楽しんだ月発見イベント。

男の中では、既に終わっていたようだ。

せめてお月様アラームを1時にセットしていればとも思ったが、まあ仕方ない。

光の花のインパクトが強すぎたのだ。



改めて夜空に目を転じる。


6つ目の月は。



「・・・・・・・・」



出ていなかった。

がっかりついでに、月が減っている事にも気づく。

月が4つしかない。

確かに空には5つの月があったのに。



「いつのまに・・・・」



気付かない間に1つ、月が消えていた。

沈んでしまったようだ。

さらにもう1つの月も、かなり空の低い位置にきているのがわかる。

これも、もうすぐ沈むのかもしれない。



明日こそは、月が昇る所を5回とも見てやろう。

明日の晩もイルミネーションを見れるのか?

こんなライトアップ、見逃すなんてとんでもない。

夜中に寝るなんてもったいない。

明日からも徹夜しよう。



もはや徹夜は安全のためという義務ではない。

逃したくない楽しみだった。


ふて寝をするしかなかった昨晩とは大違いだ。

寝て起きたら、日本に帰れているかもしれないという淡い期待は今朝、裏切られたばかり。

しかしもう、いつ帰れるかはあまり気にならなくなっていた。

今日も生きている。

どこであろうが、明日からも生きていく。

絶対に生き延びる。

腹をくくった事は大きかった。

男はこの地に馴染み始めていた。


山に向かって草原を歩き、寝たその場所でまた目覚める。

移動できるのは自らの足で歩いた分だけ。

それが当たり前になってきた。

まだ大草原に来てから3日も経っていない。

だが、もうずっと前から大草原で寝起きしているように思えた。



明日になっても、明後日になってもこの地で目覚めるのだろう。

人がおらず、食料も残り少なく、水もない。

どことも知れないこの惑星でただ独り。

生きている。

それがあまり苦にならなくなっていた。


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