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異世界流浪の料理人  作者: 開けドア
大草原脱出編
21/169

光の花


夜空に浮かぶのは、5つの月。


地上に浮かぶのは、無数のやわらかな光。

暗闇の中、ふわんふわん。

色とりどりの光の珠が踊っていた。

鮮やかな光に照らされた大草原は風に揺られ、様々な表情をみせてくれる。


天と地が織りなす幻想的な光景。

360度見渡す限り、地球に非ざる絶景だった。


そして、その中に佇む三十路のおっさん。

台無し。

実に残念。

これが美少女などであれば、すばらしく絵になったはずだろう。

惜しい。

男の存在だけが、この光景を幻想から現実に引き戻していた。


しかし当の本人はそんな事実を気にするはずもなく、目の前の光景をただただ夢中で眺めている。



「すげーな・・・・・・」



さっきから同じ言葉しか出ない。

近くに浮かんでいる光の珠の一つだけを観察してみる。

赤い光の花だった。

比喩ではない。

本当に花の形をしていたのだ。


顔を近づけてよく見ると、バラのようにちゃんと花びらが一枚一枚重なっているように見えた。

バラのようでバラではない。

カーネーションに似ているようにも見えるが、そうでもない。

バラとカーネーションを足して割ったら、近いかもしれない。

見たことがありそうな花の形だが、どこか違う。

なんとも不思議な形をしていた。


花の中心が一番鮮やかに赤く光り、花びらの外側に近づくにつれ光が弱くなっている。

大輪の花というにはサイズが小さかった。

大きさは直径10㎝もないだろう。

それでもインパクトは十分。


満開のようだが、咲誇ると表現できるような派手さはない。

表現しがたい美しさだった。

鮮やかでありながら、やわらかい光。

楚々としつつも、艶のある姿。

地球のどんな美しい花にも例えることができない。

どれだけ近づいて見つめても、謎に満ちていた。

この世の花とは思えない。

幻想的な美しさだった。


そんな花でも、ちゃんと茎があった。

例えるならコスモスのような茎に近い。

コスモスの茎よりも細いが、折れもせずしなやかに風に身をゆだねている。

色は黒・・・ではなく暗い緑。

しっかり地面から生えている。


ただし、葉は一切ついていなかった。

この部分はコスモスとは全く違う。

よくよく見なければ、草原や闇に紛れてしまう。

光の花に比べて、あまりにも存在感が薄かった。

そのため、光の珠が草原に浮きあがるように見えている。



「なるほど・・・・」



次は色とりどりの光の花、その色の種類を確認してみた。


目の前で、じっくり観察した光の花は赤い色。

若干、朱色っぽいようなオレンジ寄りの優しい赤色だ。

赤いのに派手ではなく、やわらかい印象があった。


隣に目を転じると、紫の花が目に入る。

明るい色の花の中でも、しっかりとその落ち着いた存在感を主張している。


その他に色は3つあった。

青い光。すこし水色よりの明るい青。

白い光。蛍光灯というよりは、白熱球のような暖かな白っぽい光。

黄色い光。黄色を若干渋くしたゴールドに光る花。


色は全部で5色を数えた。

どれも赤い花と同じように、花の中心が一番鮮やかで光が強い。

外側に近づくにつれ光が弱くなっている。

色の違いはあれども、全体的にふんわりとしたやわらかい光り方だった。


花の大きさもチェックしてみる。

結論として、まちまちだった。

さっき観察した赤い花のような10㎝未満の花が一番大きい方に入る。

小さいものなら5㎝あるかないか。

蕾はなく、全ての光の花が満開に見えた。

色が左右する大きさの傾向はないようだった。

大きく光る赤い花もあれば、同じ赤でも小さいものもある。



高さは一番高いもので、男の腰に届かないぐらい。

低いもので腰から30㎝ほど下あたりだろうか。



「なんかおもしろいな・・・・・」



飽きることがなかった。

次から次へと目を奪われる。

ぐるぐると歩き回り、中腰になり、しゃがみ込んだ。

実に楽しいお花見だ。

色とりどりの幻想的な花のイルミネーションを満喫していた。


男を歓迎するかのように、空には5つも月が浮かび、地上では見たこともない光の花が咲いている。

大変に豪華なラインナップ。

贅沢で幻想的な光景が男の孤独を忘れさせていた。



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