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異世界流浪の料理人  作者: 開けドア
男の日常
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プロローグ  持ち物チェック

丑三つ時をとうに過ぎた深夜。

男はできるだけ音を立てないよう気を付けながら、2階へ続くアパートの外階段を上がる。


部屋に帰るのだ。

斜め掛けにしたスポーツバックは、いつも通りかなり重かった。

若干の余裕はあるものの、仕事に必須のモノを詰め込んでいるからだ。


例えば、命の次に大事な和洋包丁達が納められたアタッシュケース。

まずこれが重い。

2キロは優にあるんじゃなかろうか。


厨房衣の上下と汗染み予防の白シャツのセットが2つ(予備と使用済みの洗濯物)、厨房靴の入った靴袋。

パーティの出張料理人を任されることもある中堅どころの男には、必須のお仕事セットだ。


そもそも派遣料理人を受け入れる繁忙日には、厨房備え付けの使い慣れた包丁は譲らざるを得ない。

もちろん他の包丁もあるものの、慣れない道具を使うよりはマイ包丁でスピードアップもできて一石二鳥。

片付け清掃が一段落し、遅い賄いを食べ、深夜をとうに過ぎた時間から再開する仕込みの量は相当多かった。


他に入っているのは黒の長袖Tシャツが2枚、半そでが1枚。

黒のカーゴパンツが一本。

替えのトランクスや靴下に至っては3枚は常に入っている。

寝巻代わりのスウェットが上下一揃え。

いわゆる「お泊りセット」である。

ご丁寧にも風呂敷につつまれている。

男がお気に入りのドラゴン柄だ。


次にスポーツタオル2枚、石鹸、剃刀、歯ブラシに歯磨き剤という「お風呂セット」。

シャンプーなどのこじゃれたモノは入れてなかった。

顔から頭から石鹸一つあれば十分に用が足りる。


残念ながら三十路の半ばも過ぎた独り身の男、女子力ならぬ「男子力」は非常に低かった。

しかし、これだって別の風呂敷にちゃんと包まれている。

風呂敷が土産物になるような土地柄だからこそのもらい物だ。

これは残念ながら龍柄ではなく、いわゆる緑の「泥棒柄」であった。


ただし、お風呂セットもお泊りセットも色気のある使い方は全くされていない。

「飲んだら乗るな」で帰れなくなった時に大活躍するものだ。


仕事上、飲まざるを得なくなった日には原付で帰らずに休憩室で仮眠をしていた。

起きたら銭湯に行って身支度をする。

そしていつも通り、早朝から仕込みの続きに入るのだ。


「お仕事セット」と「お泊りセット」、「お風呂セット」に財布や携帯といったモノを加えると、スポーツバックがそれなりの重量となるのは当然だった。


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