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異世界流浪の料理人  作者: 開けドア
大草原脱出編
18/169

お月見


大自然に似つかわしくないアラーム音が草原に鳴り響く。

お月様チェックの時間がやってきた。

歩きながらも進行方向の右手側、東のお空に注目だ。



●18時

まだ月は出ていない。


●18時30分

まだ見えない。


●19時

まだ。


●19時30分

早く出ないかな。


●20時

まだかー。


●20時30分

あっ。

三日月発見!!

地平線から結構離れてるな。

昇るとこ、見逃したっ。

悔しい・・・・・。

15分おきにアラーム変えとこ。

そういえば空、赤いな。



20時半を過ぎた所で、空全体が赤いことに気付いた。

そろそろ日没だろう。

昨日も同じような時間に日没に気付いた事を思い出す。


休憩を取ることにした。

腰を下ろし、日没を見ながらパンを食べる。

食べたのは3分の1。

残りのパンは塊4つと3分の1。


ちなみに、水は飲みきってしまった。

節約しつつ飲んでいたが、そもそもパンは喉も乾く。

たいして残っていなかった水を飲みきっても、喉の渇きは一向に収まらなかった。

水が足りない辛さが、ボディブローのように男を襲う。

明日の朝までの我慢だ。

無理やり自分を納得させる。


喉の渇きは別として、少しでも体を楽にする為、21時までゆっくりすることにした。

ストレッチしよう。

三十路を超えた男は、翌日以降の筋肉痛にビビっていた。

あれは辛い。

食べたばかりだというのに、体のあちこちをひねって伸ばした。

胃腸の強さには自信がある。

消化不良よりも、筋肉痛対策が大事。

これで筋肉痛がなくなればいいのだが。

しかし入念にストレッチをしながらも、お月様チェックは怠らない。



●20時45分

まだ月は1つ。


●21時

2つ目の月は出ていない。

さあそろそろ出発するかな。


●21時15分

出てた!

2つ目!

これも三日月!

また見逃した!!!


●21時30分

まだ月は2つ。

月がまだ2つって、日本語おかしいよな。

でも本当に2つあるんだよな・・・・。


●21時45分

まだ2つ。


●22時

まだ3つ目は出てない。


●22時15分

3つ目来た!

また見逃した!!!

見たかったのにっ。


結局、3回とも「日の出」ならぬ「月の出」はみられなかった。

がっかりしつつ、腰を下ろす。

なんだか歩く気が失せてしまった。



今日は歩くのはここまでにしよう。

もう大分暗いし。



昨日より若干早く、男は歩くのをやめる。

気を取り直して、ゆっくりお月見としゃれこむ事にした。

何せ月が3つもあるのだ。

日本では考えられない豪華なお月見。

東の空をゆっくり見れるよう、スポーツバッグを枕にして寝ころんだ。



最後の月こそは、昇ってくるところをじっくりと見たかったな。

記念すべき3つ目なのに。



男はつくづく残念に思った。

月を見ながらぼーっとする。

しばらくして、すっかりやる気のなくなった男の耳にアラームが鳴り響いた。


●22時30分

アラーム忘れてた。

もう月も昇り終わったし、いらないよな。



一番初めに昇った月が、ちょうど空の高い位置まで登っていた。

真上のあたりだろうか。

月を見ながら、男は無用となったアラームを解除した。


それにしても喉が渇いた。

次に水が飲めるまで何時間も待たねばならない。

喉の渇きを我慢しつつ、ぼうっと空を眺める。


夜空に浮かぶ3つの三日月。

なんとも不思議な気分だった。


星はまだ確認できない。

かなり薄暗いとはいえ、まだ明るさが少しばかり残っているからこんなものだろう。

しかしこれだけ何もない所なら、真っ暗になった時には満天の星空となるはずだ。

今からちょっと楽しみだった。


そのまましばらく空を眺めていると、空の低い位置が若干明るくなったような気がした。

あのあたりなら、地平線だろうか。

なんとなくその1点を見つめる。

星にしてはかなり大きな光が見えてきた。

しかも光が大きく膨らんできたような気がする。



「はい?」



言葉が続かない。

大きな光はやはり星ではないようだった。

みるみるうちに、とはいかないまでも、見つめている間にその姿が明らかになってくる。

大きな星らしきものは段々と形を変え、縦に長細い姿をさらし始めた。

さらには湾曲してきている。



「・・・・・・・」



三日月の形になりそうな気がした。

続く言葉を失ったまま、凝視する。

そのまま数分、段々と全体が見えてきた。

やっぱり三日月。



「4つ目・・・・・・?」



4番目に登場した三日月は、その堂々たる姿を真っ暗になった夜空にさらしていた。


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