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異世界流浪の料理人  作者: 開けドア
大草原脱出編
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水を集めてみた

太陽が昇り、しかし空には月が1つ残されている。

その月も地平線に近づいていた。

まもなく沈むだろう。


男は皮手袋を取り、ふくらはぎにグルグル巻いたスポーツタオルを触ってみた。

いい感じに濡れている。



よし、よくやった。



荷物の中から空のペットボトルを取り出す。

ふたを外して、倒れないよう両方のかかとでボトルを固定した。

濡れたスポーツタオルを足から外す。

まずは右足からだ。

若干重みを増したタオルに期待が高まってきた。

タオルを小さく畳んで両手に持ち、念入りにペットボトルの位置を調整する。



良い感じだ。



そのまま力いっぱいタオルを絞った。

タオルから絞りだされた水がボトルの中に入っていく。

ボトルの口が小さい分、上手く入りきらなかった水がこぼれてしまった。

もったいない。


絞ったタオルはもう一度ふくらはぎにぐるぐると巻き、しっかりと結んだ。

次は左足。

タオルを外し、慎重にペットボトルを置く角度も調整する。

今度は一滴たりとも無駄にしたくない。

さっきと同様、力をこめてタオルを絞った。



「・・・・・・っはー」



無意識に息をつめていたようだ。

絞り終わると、思わず声が出てしまった。

今度は、ほぼ全ての水を上手くボトルの中に入れることができた。

絞り終わったタオルは、また左足のふくらはぎにセットする。


朝露を集めて飲み水を確保する方法。

知識として知ってはいたが、試すのは初めてだった。



「けっこう取れるもんなんだな」



ペットボトルには半分を超えるぐらいの水がたまっていた。

貴重な本日の飲み水。

ペットボトルのふたをしっかりと閉めた。

スポーツバッグに入れ、立ち上がる。

皮手袋は手に付けず、カーゴパンツのポケットに突っ込んだ。


まだまだ太陽が昇ったばかりの早朝だ。

もう1時間程度歩けば、まだ水は集まるだろうか。


男は機嫌よく歩き出した。

背の高い草が密集する所をできるだけ通るようにする。

たまに山の方向を確認するぐらいで、視線はずっと下を向いていた。

余裕が出たのか、なんとなく草の観察が再開されている。



それにしても不思議な草原だ。



相変わらず植生は滅茶苦茶だった。

やはり男が知る様々な草とちょっと違う。


様々な高さの草、様々な種類が生き生きとその姿をみせていた。

緑の色にもいろんな種類があるもんだ。

ちょっと感心する。


観察に熱中しているとすぐに時間が経った。

ふと気づいて時計を見る。


午前5時41分。


ふくらはぎのタオルを触ってみた。

今度もいい感じに濡れている。



これは期待できそうだ。



腰を下ろし、いそいそとペットボトルを取り出した。

ついでに、栄養ドリンクが入っていた茶色い瓶も取り出しておく。


先ほどと同じように、タオルを絞り、出てきた水をペットボトルに入れる。

2本目のタオルを絞ったところで、嬉しいことにボトルの水はいっぱいになった。

しっかりと蓋をする。


タオルにはまだ水分が残っている。

もっと固く絞れば、もう少し水がとれそうだ。


瓶の蓋を外し、渾身の力でタオルを絞る。

ほんの少し、一口分だけ水がたまった。

大満足だった。



「ちょっと休憩するか」



瓶の水を飲んでみた。


うん、悪くない。

喉が渇ききっているからか、水は普通にうまかった。

一瞬で飲みきってしまう。

全然足りない。


まだまだ喉は乾いていたが、ここはぐっと我慢する。

明日の朝まで、命の水はペットボトル1本。

1日の必要量を考えると到底足らない。

それでも十分だった。

要は山に入るまで体がもてばいいのだ。

悩みを捨てた男は、実に楽観的だった。



ふと空を見上げると、月の姿は見えなくなっていた。


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