表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
姫神様はもふもふ達とあやかし退治をします~お社はタワーマンションの屋上です~  作者: 雪野みゆ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/16

 みやびにはもう一人学校で親しくなった生徒がいる。


 日本神話に関する文献を読んでみようと学校の図書室で探していたのだが、たくさんありすぎてどれから手をつけたらいいのか悩んでいた。頭を抱えているみやびを助けてくれたのが、図書委員である成瀬翔なるせかけるだった。


 迷っているところに声を掛けてくれたのが成瀬だった。彼に日本神話に関する本を探しているが、どれにしようか迷っていると話すと、日本神話の物語と神の系譜が詳しく書かれている本を選んでくれたのだ。


「成瀬君。この間はありがとう。この本とても読みやすかったよ」


 図書室のカウンターで本の整理をしていた成瀬を見つけるとお礼を述べる。成瀬はにこりと微笑む。背が高く、端正な顔立ちをしている成瀬は女子生徒に人気がある。


「そう言ってもらえると勧めた甲斐があるよ。今日も何か借りていく?」


 神の系譜を調べたが、父の言うとおり「ハシハナヒメノミコト」という名の神はいなかった。系譜を見ていて思ったのは父の子供はかなり多い。しかも一夫多妻だったようだ。母は嫉妬しなかったのだろうか?


 今日は日本神話の本ではなく、別に借りたい本があった。


「えと。居合いの本はあるかな?」


「あるけど、西園さんは居合いをやっているの?」


 居合いはやっていない。正確には刀の扱い方が知りたいのだ。先日みやびの武器を八雲が精製してくれたのだが、その武器と言うのが日本刀だった。八雲はペッと刀を吐き出した。神話どおり尾から出すと思い込んでいたみやびは吐き出さた刀を中々手に取ることができなかった。尾から出てきてもためらっていただろう。


「これから居合いをやってみたいと思って」


「女の子が興味を持つなんて珍しいな。良かったら俺が教えようか?」


 成瀬の意外な申し出に驚いたみやびはカウンターに身を乗り出す。


「成瀬君。居合いをやっているの?」


「うん。子供の頃から剣道と居合いを習っていて、師範の免状を持っているんだ」


 居合いの本を見て我流で覚えようと思っていたみやびには嬉しい申し出だった。


「お願いできるかな?」


「いいよ。日本刀は持っている?」


 持ってはいる。日本刀を所持するには資格はいらない。登録証がついた美術刀剣はだが。八雲が精製した刀には当然登録証はついていない。何せ神話上の生物が作った刀だ。そんな物騒な物を持ち歩くのは危険だとみやびは判断した。


「持って……いない」


 咄嗟にみやびは嘘を吐く。


「持っていなくても大丈夫だよ。うちの道場には刃引きされた日本刀が置いてあるんだ。それを使えばいいよ。女性用の日本刀もあるんだよ」


 成瀬の家には祖父が作った道場があるとのことだ。


「じゃあ、お言葉に甘えて道場の刀をお借りして教えてもらおうかな?」


 次の日曜日に成瀬の家で居合いを教えてもらう約束をして、教室に戻ったみやびだった。



 家に帰って父にその話をすると、とんでもない誤解をされた。


「彼氏ができたのか!? パパは認めないぞ!」


「成瀬君は彼氏じゃなくてただの同級生だよ!」


 とんでもない親バカだ。よく娘に彼氏ができると父親はやきもちを妬くと言うが、神とは言え父も例外ではないらしい。


「それなら直に会おうじゃないか! 成瀬とやらの家に行くことは許さん。うちに呼べ」



 父のとんだ勘違いのせいで日曜日に成瀬を自宅に招くことになってしまった。成瀬にそのことを話すと快く承知してくれたのだ。大人のくせに大人気ない父と違ってよくできた人間だとみやびは思った。


 日曜日に成瀬をマンションのエントランスで出迎えた。


「西園さんの家ここだったんだね」


「うん。マンションの名前どおりでしょう」


 最上階直通のエレベーターに乗ると、成瀬に謝罪をする。


「わざわざ来てもらってごめんね。うちの父はちょっと変わっているけど気にしないでね」


「よくよく考えたら男性が女性を自分の家に招くなんて俺が軽率だったよ。誤解されるのは当たり前だ。気にしないで」


 本当によくできた人間だ。父に彼の爪の垢を煎じて飲ませてやりたいと思うみやびだった。


 家に入ると父が仁王立ちして待っていた。成瀬を頭から足の先までじろじろと睨む。


「パパ。こちらが成瀬君」


「成瀬翔と申します。本日は西園さんに居合いを教えるために訪問させていただきました」


 しばらくの沈黙の後、むすっとした顔で父が口を開く。


「成瀬君。君はみやびをどう思っている?」


「ちょっ! パパ!」


「同級生です」


 不躾な父の質問に爽やかに答える成瀬だった。父のむすっとした顔が少しだけ緩む。


「居合いの稽古には俺も立ち会う。構わないな?」


「もちろんです」


 居合いの稽古は屋上ですることになった。屋上を見た成瀬は驚きで目を見開く。


「もしかして神社?」


「一応ね」


 自分の神社だとは言えない。


「ところでよく日本刀を持ち出せたな。未成年だろう?」


 成瀬が持ってきた日本刀を見て、父が疑問に思ったようだ。美術刀剣は刀と分からないように袋か風呂敷に包めば持ち出すことができる。


「俺は教育委員会に所持許可証を発行してもらっていますから」


「なるほど」と納得している父だが、みやびは日本刀について何も知らないので、二人の会話についていけない。


 成瀬は袋から日本刀を取り出すと、みやびに差し出す。


「こっちが西園さん用だよ。女性用に作られた刀なんだ」


 黒い鞘に収まった刀を少しだけ抜くと、刃引きされているのが目に入る。八雲が精製した刀は刃引きされていない。鞘から抜く時に手が切れるのではないかと恐る恐る抜いたのだ。だが、不思議な霊力に満ちているその刀は恐ろしいとは思わなかった。


「姫神様、その方は誰でございますか?」


「彼氏と言うものでごじゃりまするか?」


 狛彦と狛丸がてちてちとみやびの方に走ってくる。


「西園さんの家の犬? 可愛いね」


「えっ! 成瀬君犬たちが見えるの?」


 成瀬はあやかしが見える人なのだろうか?

ここまでお読みいただきありがとうございました(*^▽^*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ