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姫神様はもふもふ達とあやかし退治をします~お社はタワーマンションの屋上です~  作者: 雪野みゆ


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 父に半ば強制的に転校させられた高校は挨拶が「おはよう」ではなく「ごきげんよう」の世界だったが、居心地は悪くなかった。まずグレーの瞳を綺麗だと言われた時には驚いたものだ。今まで通ってきた学校では最初に瞳の色を指摘された。カラーコンタクトではないかと疑われたり、ハーフと言われたり。親が外国人の生徒もいたので深く追求されることはなかったが、奇異な目で見られたものだ。


 この学校の生徒達は箱入りのお坊ちゃまやお嬢様ばかりで、純粋な紳士、淑女ばかりだ。最近流行りの悪役令嬢を予想していたみやびは当然意地悪されると思っていた。学校の教育方針がいいのか、親の教育がいいのか善意のかたまりみたいな生徒が多い。


 みやびには転校初日に友達ができた。彼女の名前は七城詩織(しちじょうしおり)と言い、茶道の家元の娘だった。家が遠いので、なんとウエストガーデンタワーで一人暮らしをしているそうだ。ちなみに家賃は破格に安いらしく、詩織にいくらか聞いてみたのだが、とても安いとは言えなかった。


「今日、みやびの家へ遊びに行っていいかしら?」


「たぶん、いいと思うけど、家に電話してみる」


 転校初日に最初に話しかけてくれたのが、詩織だった。グレーの瞳が綺麗だと褒めてくれたのだ。人懐っこい人柄の彼女は付き合いやすく、最近は一緒に行動している。


 父の携帯に電話をかけ友達を家に連れて行ってもいいか聞く。別に構わないと父は言う。今使っているスマホは父に渡されたものだ。スマホを使ったことがないみやびは使用方法が分からず困っていたのだが、詩織が丁寧に使い方を説明してくれた。おかげで電話のかけ方、メールの送り方、インターネットへのアクセス方法は覚えたのでそれで充分だ。他にもアプリやSNSなどについても説明してくれたが、今のところ使う予定はない。



 詩織を連れて家に帰ると「祝:みやびに友達ができた記念」という看板と花が飾られていた。みやびはそれを見て頭痛を覚える。おそらく父の仕業だ。


「おう! おかえり。友達ができたんだってな。ケーキを買ってあるぞ」


「パパ! 子供の誕生日会じゃないんだから!」


 いそいそとお茶の準備をしている父に抗議する。意外なことに父は家事上手だった。母に仕事をさせているダメ夫ではない。


 ぷっと詩織が吹き出す。


(すみません。うちの父が本当にすみません!)と心の中で謝るみやびだ。ところが詩織は意外なことを口にする。


「素敵なお父様ね。初めまして。七城詩織と申します」


 ころころと笑いながら、父に挨拶をする。


「よろしくな。うちの娘と仲良くしてやってくれ」


 詩織はバカにするどころか、父のことを素敵だと褒めてくれた。父と詩織が歓談しているとてちてちと足音がする。


「姫神様、おかえりなさいませ」


「今日もお疲れ様でごじゃりまする」


 狛彦と狛丸がみやびに駆け寄ってくる。もふりたいのだが、詩織の前では構うことができない。


「まあ! 可愛いわんちゃんが二匹もいるのね」


「えっ! この子たちが見えるの?」


 狛犬たちは人間に見えないはずだ。だが、詩織は可愛いわんちゃんと言っていたので、見えているということだ。


「そうか。詩織さんは見える人間だな?」


「はい。このわんちゃんたちもそうなのですか?」


 最近、あやかしが見えるようになったみやびは、詩織に茶道具の付喪神が憑いていたので祓おうとした。しかし、彼らは詩織を守っているので祓わないでくれと言う。今も詩織の周りをふよふよしている。


「もしかして、ふよふよしているのも見えている?」


「ええ。でも声は聞こえないの。見えるだけ」


 狛彦と狛丸もワンワン吠えているようにしか聞こえないらしい。詩織は付喪神たちに微笑む。


「みやびは声も聞こえているの? この子たちは何て言っているのかしら?」


「……詩織を守っているって」


「そう」と微笑むと、付喪神たちを撫でる。



 詩織は幼い頃から、あやかしが見えていたという。最初は付喪神たちにも怯えていた。ある日、小物ではあるがあやかしが詩織に襲いかかってきたことがあった。しかし、あやかしから詩織を庇いながら付喪神たちが追い払ってくれたという。それ以来、付喪神と仲良くなった詩織はいつも彼らを連れているとのことだ。


「いい話だわ。あんたら偉い! よく詩織を守った!」


 付喪神たちは「当たり前だ」とどや顔だ。


「あやかしが見える人間は霊力が高い。奴らにとって霊力の高い人間は格好のいい餌食だからな」


 付喪神は長い年月をかけて霊力を得た物が変化したものだ。人を誑かすと言われているが、詩織に憑いているのは、先祖が大切にしていた茶道具が付喪神と化してその家を守っている良いものだと父が説明してくれた。


「一応『神』と名の付くものだ。力が弱いあやかしならそいつらが追い払ってくれるだろう。だが、この土地には力の強いあやかしがいる。そうだ! うちの屋上の神社に参っていくといい」


「噂は本当だったのですか? このマンションの屋上に神社があるというのは?」


 そんな噂があるのかとみやびは思った。


「このタワーマンションに来てから、家の中にあやかしが入ってきません。それにこのマンションは清浄な霊力に包まれていて心地がいいのです」


「そうだろう? うちの屋上に祀られている神は強い神だからな」


「本当ですか? お賽銭を奮発しないと!」


 財布から最高額の紙幣を取り出す詩織だった。


「いやいや。出しすぎでしょう」


 屋上の神社の神はみやびだ。まだそれほど強い力はないし、最近神に任命されたばかりだった。このタワーマンションに満ちている清浄な気はおそらく父と母のものだ。神格が高い神の家に押し入ろうとするあやかしはそうはいない。口には出さないが、父の言いたいことは分かる。


「お前が詩織を守れ」


 そういうことだろう。

学生生活を謳歌しているみやびです。


ここまでお読みいただきありがとうございました(*^▽^*)

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