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少しずつブクマが増えております。

ブクマしてくださった方々、ありがとうございます。

 自己紹介を求めたみやびに双子の姉かなではぷっと吹き出した。


「そこから聞く? みやびは面白い子ね」


 父と母も笑いを堪えているようだ。下を向いて肩を震わせている。だが、程なくして自己紹介が始まった。父は西園凪葉(にしぞのなぎは)、母は西園華蓮(にしぞのかれん)という名だそうだ。そして双子の姉は先ほど名乗ったとおり西園かなでだ。


「お前は今日から西園みやびだ」


 みやびは施設長と同じ『山本』という苗字を使っていたのだ。名前はお守り袋に入った札に『みやび』と書かれていたので、そう名付けたと施設長が話してくれた。みやびには『ハシハナヒメノミコト』としか見えなかったのだが。


「私は児童施設の前に捨てられていたそうですが、なぜですか?」


 両親がわざわざ迎えに来たのだ。産まれた時に両親が児童施設の前にみやびを捨てたとしても、何か事情があるに違いないとみやびは考えた。


「目を離した隙に攫われたんだ。神とはいえ赤子のうちは無防備だからな。どこかのあやかしが連れ去ったと考えて必死に探したんだが、見つからなかった。もはや生きてはいまいと諦めかけた時に、お前が育った施設の近くにある神社の主神から情報があったんだ。不思議な神気を纏った少女がいると」


 神気とは神が纏う気のことだと父が説明してくれる。施設の近くにある神社は子供の頃からの遊び場だ。みやびに神気があるのならば、神社の主神は子供の頃に気付かなかったのだろうか? 疑問を父に投げかけると、神社の主神は最近になってみやびが纏う神気に気付いたそうだ。


「お前は神だった頃の記憶がないだろう? 最近、妙なものが見え出したということはないか?」


「そういえば……何もない所のはずなのに何かがある気がしたことがあります」


 道を歩いていると目の前に何かがある気がするのだ。決まってその場所には透明な何かがゆらゆらして見える。何となく嫌な感じがするので避けて通ったりすることはあった。おかしいとは思いつつも目の病気かもしれないと考えたみやびは、近々眼科に行こうかと思っていたのだ。


 父はふむと頷くと、ソファから立ち上がる。


「ついてこい」


 言われたとおり、みやびはソファから立ち上がると父の後をついていく。再びエレベーターに乗ると「R」のボタンを押す。


――え? ここ屋上もあるの? ヘリポートとかあるのかな?


 エレベーターの扉が開く。五十階建てのタワーマンションの屋上だ。風に煽られると思ったみやびは身構えたが、風はない。それどころか家にいた時と同じ清浄な空気を感じる。前を見ると家と同じ佇まいの白い鳥居に木造の立派な社が建っていた。


「狛彦! 狛丸! いるか?」


 父が社に向かって呼びかけると、白い子犬がてちてちと走ってきた。紅白の糸で編んだ変わった首輪をしている。まるで注連縄しめなわのようだとみやびは思った。


――わあ。可愛い。もふもふだ。ポメラニアンかな?


 もふもふな子犬二匹は父の側まで走ってくるとお座りをした。


「お呼びでございますか? スサノオの神」


「お呼びにより馳せ参じましてごじゃりまする」


 父の声ではない。少年のような高い声だ。確かに子犬たちから声が聞こえた。


「もふワンコがしゃべった!?」


「こいつらが見えるか? どうやら最近目覚め出したようだな」


 謎の言葉を父が紡ぐ。父の足元にお座りをしている子犬たちは、普通に可愛い白ポメラニアンに見える。本来は見えないものなのだろうか? 最近目覚めたとはどういうことだろうか? みやびは屈んで子犬たちをじっと見る。


「この子たちがあやかしというものですか?」


「いや。こいつらは狛犬で神獣だ。神の使いなんだが、普通の人間には見えない」


 つぶらな瞳でみやびを見つめてくる子犬たち。思わずよしよしと撫でたくなってしまう。


「スサノオの神。その御方がもう一方ひとかたの姫神様であらせられますか?」


「スセリの姫神様にそっくりでごじゃりますな」


 お座りしていても尻尾がゆらゆらと揺れている。


「あー! もう我慢できない!」


 みやびは二匹の子犬をがばっと懐に抱き上げて、もふもふする。絹のように手触りのいいふわふわの毛だ。


「なんと! 姫神様が我らを抱き上げられた!」


「光栄でごじゃりまする!」


 二匹の子犬は嬉しそうに尻尾を振りながら、瞳をうるうるさせている。


「気に入ったか? そいつらはお前の眷属にするといい。そこの社もお前のものだ」


 みやびは動物が大好きなのだが、施設では犬を拾ってきても飼うことができなかった。この可愛いポメラニアンを二匹ももらえるとは嬉しい限りだ。実の家族に引き取られ、豪華な住居を与えられ、可愛い子犬を二匹も与えられて、一気に幸福な気持ちになったみやびだった。


 しかし、次の父の言葉で幸福度MAXだったみやびの気持ちはダウンした。


「よし! 明日から神の力をつける特訓をするぞ」


「へっ!?」


 思わず間抜けな声が出るみやびだった。特訓って何?

やっともふもふが出てきました。プロローグ以来ですね。


ここまでお読みいただきありがとうございました(*^▽^*)

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