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プロローグと同日更新です。

 晴れ渡る青い空は美しく、流れる雲は様々な形をしている。


 誰が植えたのか分からない花たちが風に吹かれ、そよそよと揺れている。その様さえ美しい。


 河原で寝そべりながら、空を見上げてそんなことを思うみやびだ。


「美しい世界で生きたいな」


 誰にともなく呟く。私の住む世界は美しいかもしれないが、残酷だ。


「そろそろ帰らないといけないけど、帰りたくないな」


 今日は料理当番の日だ。早く帰って皆の食事を作らないといけない。


 みやびは生まれて半年くらいの時に児童施設の前に捨てられていた。親を知らないまま十六歳の今日まで施設で育ったのだ。今は奨学金を受けながら高校に通っているが、十八歳になれば施設を出て働きながら、奨学金を返さなければならない。


 だが、みやびは大学に進学したかった。幸い成績は良いので、国立大学に入れるだけの実力はある。奨学金を受けながら、アルバイトをして通うことはできるだろう。


 大学は寮があるところを選ぶつもりだ。


 卒業まであと二年半ある。自分の将来のことだから、じっくり考えて決めようとみやびは考えていた。



 しかし、この日みやびの運命は大きく変わることになる。


 施設に戻ると、駐車場に立派な車が止まっていた。テレビでしか見たことがない高級車だ。


 里親が見つかった子供がいるのだろうか?


 訝し気に思いながら玄関に入ると、子供たちが「ももちゃん」と呼んでいる施設の職員がみやびを呼び止めた。


「みやびちゃん、今すぐ施設長の部屋に行きなさい」


「え? ももちゃん。どうしたの? 私、何かした?」


 早く早くと背中を押されながら、施設長の部屋に連れていかれた。コンコンとドアをノックすると中にいる施設長にももちゃんが声をかける。


「施設長。みやびちゃんが帰ってきました。入ってもよろしいでしょうか?」


「入りなさい」


 施設長が入室を促す。ドアを開け「失礼します」とお辞儀をする。中には施設長と見知らぬ男女がいた。夫婦だろうか?


 男性は三十代後半くらいで派手な髪色をしている。長い髪を後ろで一つに束ねていた。


(ぎ、銀髪!? あり得ないでしょう。染めているんだよね?)


 女性は三十代前半だろうか? 二十代と言ってもおかしくないほど若く見える。


(すっごい美人! しかも優しそう。あれ? どこかで見たことがあるような?)


「西園様。この子がみやびです」


 西園と呼ばれた女性は涙を浮かべると「ああ」と口を手で覆う。


「やっと見つけることができました。感謝します」


 銀髪の男性は労るように女性の肩に手をかける。


「みやび。この方たちは君の本当のご両親だ」


「は?」


 突拍子もない施設長の言葉に思わず間抜けな声が出てしまった。みやびにはこれまで里親になりたいと申し出てくる大人がいなかったのだ。みやびの瞳の色を見る度に嫌な顔をされた。グレーの瞳だからだ。


 目の前の女性を見れば同じグレーの瞳をしている。なるほどこれなら親子でもとおるかもしれないと妙に納得してしまったみやびだ。


 早速、みやびを連れて帰りたいという両親に待っていてもらい、荷物をまとめる。荷物と言っても制服とジャージと教科書、ちょっとの着替えくらいで少ない為、すぐにまとめることができた。


 施設の職員と仲が良かった子供たちに別れを告げると、駐車場に止まっていた高級車に乗り込む。座席は向かい合わせになっていた。


「あの……あなたたちは本当に私の実の両親なんですか?」


 車が走り出すと、進行方向とは逆の席に座った男性に聞いてみる。実の両親と言われても全く実感がわかない。すると男性が面白そうにふっと笑う。


「お前は稲穂の刺繍が入ったお守り袋を持っているだろう? 中に『ハシハナヒメノミコト』という名前が書かれた札が入っているはずだ」


 確かにそのとおりだ。施設長がみやびを見つけた時、シーツ一枚にくるまれただけで荷物は何もなかった。唯一お守り袋だけを手に握りしめていた。親を見つける手掛かりになるかもしれないと物心がついた時に渡されたのだ。それ以来、肌身離さず持っている。


 お守り袋を制服のポケットから取り出し、中身を取り出すと札に『ハシハナヒメノミコト』と刻まれていた。


「それが俺たちの子供だという何よりの証拠だ。このスサノオノミコトとクシナダヒメのな」


「はい!?」


(今、なんて言った? この人……。)

ここまでお読みいただきありがとうございました(*^▽^*)

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