開幕の刻
新連載です。
よろしくお願いします。
五十話くらいで完結予定です。
夜の暗い路地を黒い影と白い影が二つ走る。
「狛彦! 狛丸! そっちに行ったわ。結界を張って!」
紅白の注連縄をつけた二匹の白い犬が、可愛いもふもふのポメラニアンからいかつい狛犬へと変わる。
狛彦と狛丸と呼ばれた二匹の狛犬は標的の前に立ちはだかると主のいうとおり結界を張る。
「姫神様。追い込みました!」
「いざ、退治されるでごじゃりまする!」
追い詰めれた標的は小鬼だ。小さなあやかしだが、最近いたずらばかりしているので、この付近の住民が迷惑をしていた。
「狛達よくやった! さあ、あやかしの世界に帰りなさい」
姫神と呼ばれた少女はあやかしの世界への門を開ける。こちらへ戻ることは許さないとばかりに刀を構えていた。
敵わないことを悟ったのか、小鬼は素直にあやかしの世界への門を潜る。
小鬼の姿が見えなくなると、少女は門を閉じた。
「これで依頼完了!」
構えた刀を鞘に収めて、手を振ると刀は消えた。狛犬二匹はポメラニアンの姿に戻ると、てちてちと少女の元に駆け寄る。
「お疲れ様でございました。姫神様」
「今回のご活躍も父神様は喜ばれることでごじゃりましょう」
父神と言われた途端、少女の片眉がぴくっとはね上がる。
「いつも言っているけど、私のことは姫神じゃなく名前で呼んでいいよ。西園みやびっていう可愛い名前があるんだから」
少女……みやびは屈むと二匹の子犬の頭を撫でる。一見見分けのつかない二匹だが、語尾に「ごじゃります」とつけるのが狛丸で、そうでないのが狛彦だ。
「とんでもございません! 姫神様はこの土地の守り神様であらせられます」
「そうです! 姫神様の御名を呼ぶなど恐れ多いことでごじゃります」
(別に構わないのに。律儀なわんちゃん達だ。そもそもどうしてこうなったんだっけ?)
半年前の出来事を思い出す。
今日は同日同時間に壱話を更新しております。
よろしければ続けてお読みいただけると幸いです(*^▽^*)