デュロンの大森林 その3
その後、トカゲスープの入った鍋が空っぽとなり食事は終わった。
「ふう〜 食べ食べ」
「美味しかったですね」
「案外な」
「よし それじゃ 行くか!」
そう言ってシーナは立ち上がる
「ん? どこに行くんだ?」
「日課の水浴びだよ!」
「み…水浴びて あの水場でか?」
「そうだよ ほら! ラキちゃんも一緒行こう!」
そしてシーナはラキの腕を掴んだ。
「えっ… わたしも?」
「だって かなり歩いたから汗もかいたでしょ! ベタベタのまま寝るなんて 嫌でしょ」
「確かにそうですけど」
不安そうな表情になるラキ
それもそのはず、こんなモンスターがうようよいる森の中で無防備にも水浴びをしようなんて普通なら思わないだが、シーナは違う。
「大丈夫大丈夫! あたしが一緒にいるから」
「ですが…」
ここで俺が話しに入る
「お前 水浴びするなら 服は脱ぐだろ」
「そりゃあ 脱ぐでしょ」
「その時に 武器はどうしてるんだ」
「もちろん 服と一緒に置いてるけど」
「その時に モンスターが襲ってきたらどうするんだ」
「大丈夫大丈夫 前にも1人で水浴びしてたらモンスターに襲われたけど 難なく返り討ちにしたし!」
シーナは自慢気に答えた。
「それより オール」
「なんだ?」
「あんた ちゃんと お風呂入ってる?」
「ああ、組合に行く前に風呂屋に寄ったからな」
「それじゃあ そのパーカーは?」
「これは まだ洗ってない…」
「いつから着てるの?」
「依頼に行った時からだから 5日ぐらい」
「脱いで! 一緒に洗うから!」
「別にそんなに汚れてないし…」
「いいから脱ぐ脱ぐ ほら!」
「おい! 返せよ」
するとシーナは俺から無理やり脱がせたパーカーを鼻に近づけてて臭いを確認した。
「やっぱり! ニオイの元はこれじゃない! 問答無用で洗いますからね」
「おい 待てよ 今回はそれ以外パーカーの持ち合わせがないんだよ」
「いつも 同じの3着くらい持ち合わせているのに?」
「今日 家に帰って着替えようと思ってたら お前に出くわして ここに連れてこられたんだよ」
「あー… そう じゃあー 後はよろしくね!」
「て… 本当に何かあったらどうするんだよ」
「だから心配ないて それに 今回はオールがいるから大丈夫だよね!」
「ん?」
「だから あたし達が水浴び終わるまで見張り頼んだよー!」
そう言い残してシーナはラキの腕を掴んだまま水場の方へ走っていた。
「たくっ! 大丈夫だよねて… シーナのやつ」
すると水場の方からシーナが大声で…
「覗かないでよー!」
それに対して俺は
「しねーよ!」
すると水場の方から少し笑い声が聞こえてきた。
その後…シーナ達が水浴びをしている間、俺はルーエと一緒に森の中に入った。
「オールさん なにをするんですか?」
ルーエが訪ねてきた。
「今から コレをここからあそこまでの範囲に仕掛ける」
そう言って俺は魔法収納鞄からある物を取り出した。
「それはなんですか?」
「コレは、鳴子だ」
「鳴子?」
「そうだ コレを木と木の間なんかに仕掛ける 仕掛ける場所は代々足元ぐらいで目立たないように仕掛ける」
「なるほど! なにかがそこに触れれば それについた鈴が鳴るてことですね」
「ああ、そうだ だけどコイツは普通の鳴子とは違ってモンスターの魔力にも反応する代物なんだ それに鈴には魔法で大きく音を響かせるようにしてあるから まずモンスターが近づけばすぐにわかる」
「それは いいですね」
それから俺達は拠点の場所を囲うよに鳴子を仕掛けていた。
するとルーエが…
「オールさんとシーナさんは知り合って長いんですか?」
「シーナと… ああ〜 10年くらいかな」
「10年 長いですね」
「そう言えば アイツと始めて会ったのもここの森だったな」
「そうなんですか!」
そう、俺がシーナと始めて出会ったのもこのデュロンの大森林でだった。
遡ること約10年前…
当時冒険者に成り立てだったシーナは自主練習を兼ねて1人で大森林にやって来ていた。当時から戦闘の技術は高く冒険者に成ってすぐに階級をEからCへと昇格していた。
そして大森林でも、次々と襲い掛かるモンスター達を倒し倒してを繰り返していた。
だが、そんな矢先 シーナはモンスターとの戦闘中に足を痛めてしまう。そのせいで本来のポテンシャルで戦うことができずに苦戦していた。
「くっ… 足さえ 万全なら」
そう呟いたシーナの周りはモンスター達が囲んでおりシーナは足の痛みから背中を木にもたれかかっている状態であった。
そしてモンスター達が一斉にシーナに襲い掛かった瞬間… どこからともなく1本の矢が飛んできて1体のモンスターの身体を貫通しそのまま複数体のモンスターに飛び火した。さらに矢は複数の方向から飛んできてモンスター達を次々と射抜いた。
そして最後の矢が残るモンスターを射抜いたところで、あたしがもたれかかって木の上から声をかけられたの。
「大丈夫か?」
声に反応して上を見上げたらそこに、フードを被った人が木の枝に座っていた。
「おい 大丈夫なのか?」
それがあたしとオールの最初の出会いのだった。