デュロンの大森林 その2
そして魔法収納鞄から火起こし道具を取り出し薪に火をつける。
「月明かりがなく暗くてしょうがないけど 逆に火の明かりだけを楽しむならちょうどいいね!」
そのどこからか湧いてくるかわからない楽天家な部分だけが、シーナの取り柄ではないかと俺が改めて考えていたら…
「で! 夕食はどうするの!?」
と唐突にシーナが聞いてきたので俺は、魔法収納鞄から携帯食料をみんなに渡した。
「えっ…! まさかこれだけじゃないよね?」
まさか冗談だよね、みたいな表情で俺を見つめるシーナ だがもちろんこれ以外持ち合わせが無いので、キッパリと
「他は無い!!」
と答えた。
するとその言葉を聞いてシーナは立ち上がり。
「よし! ちょっと夕食狩ってくる」
そう言って1人で森の中に入っていた。
「1人で行かせて大丈夫なんですか!?」
「問題ないよ…アイツ、サバイバーだから」
そしてシーナの戻りを待ちながら暇つぶしに話しを始めた。
「そう言えば まだ2人の名前を聞いてなかったね」
「そう言えばそうでしたね 改めましてわたしはラキと言います」
「僕はルーエと言います」
「2人はなんで冒険者になろうと思ったの」
少し考える仕草をしたが、すぐに答えてくれた。
「僕は、冒険がしたかったから!」
「わたしも!」
「なるほど それで2人はなに志望なんだい?」
「とりあえず 僕は戦士か剣士の志望です!」
「なるほど… ラキは?」
「わたしは一応魔法使い志望です…」
照れくさそうに話してくれた2人、そして今度は俺が質問された。
「オールさんは普段はどんな依頼をしているんですか?」
「普段て言われても… 最近は気が向いた時にしか依頼受けなくなったからな…」
そう言って夜空を見上げる。
「どうしてですか?」
「さて、どうしてなんだろうな……」
「単にやる気の問題じゃないの!」
そう言ったのは狩を終えて戻ってきたシーナであった。その背中には狩ってきたなにかを背負っているようであった。
「おいおい、いったいなにを狩ってきたんだよ…」
俺の問いシーナ笑って答えた。
「いや〜 なかなか獲物が見当たらなくて やっとの事で仕留めたのが、コイツだったて訳よ! よいしょ!!」
そう言ってシーナは背負っていた獲物を薪の前に下ろした。その獲物を目で確認した瞬間、その場が一瞬静かになったが、すぐに俺が口を開いた。
「おい… シーナ コレって……」
「ん? ブルツオオトカゲの子どもだよ!」
シーナが狩ってきたブルツオオトカゲとは、森林や草原などどこにでもいるトカゲのモンスターだが、その肌の色は青緑色でトカゲ系モンスターの中でも見た目がかなり気色悪くまずこんなものを食べようと思うヤツなど、普通はいない…
だが、シーナは普通とは少し違う…
「なにボーと見てんの? さばくの手伝ってよ!」
「コイツを食うのか…!?」
「当たり前でしょ! そのために狩ってきたんだから」
「あー…… ですね…」
その場は納得するしか他になかった。
「そしたらオール… その辺で臭みを取る薬草でも取ってきてくれない」
「あー…わかった」
「それから2人は あたしの手伝いね」
そう言って2人の方を向くシーナ
「は、はい…」
ラキとルーエは同時に返事をした。
その後…シーナは慣れた手さばきでブルツオオトカゲを調理し始め…俺はシーナに言われた通りに臭み消しの薬草を取ってきて調理中のシーナに渡した。さらにシーナは先程俺がみんなに渡した携帯食料を集めてそれも具材として調理に加えていた。
そして完成したのが…
「名付けて! トカゲ肉とその他いろいろスープだよー!!」
ネーミングセンスの無さを感じる料理名である。
「さあさあ! 食べた食べた!」
そう言ってシーナは、さっき俺が魔法収納鞄から取り出しておいた人数分の器にスープを注ぎ始めた。
「ほら、温かいうちに食べようよー!」
それからみんなで焚き火を囲むように座り、みんなで手を合わせてからシーナが号令をかける。
「それじゃー いただきます!」
「いただきます!」
そしてシーナ以外の3人は恐る恐るスープを口の前に運び、そこで手を一旦止めてシーナが食べるのを見ていた。
そんなことを気づいていないシーナはスプーンでトカゲ肉をすくうとそのまま口の中に放り込んだ。そして口の中でよく噛んでから飲み込む。
それから少しばかり俯いて黙っていたが、すぐに顔を上げると一言…
「美味しい!」
シーナのその一言と美味しそうにどんどんとスープを口に頬張る姿を見て安心した俺達だった。そして俺も一口食べて思ったことは…
トカゲは案外美味しいな…
リアルにトカゲを食べたいと思います?