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グリーン・ウィッチ

 

 ダイアナからの物騒な贈り物が届いたその日のうちにダイアナの所へと向かい始めることになった。万が一何かトラブルに巻き込まれ時間内に辿りつけずに解毒剤が手に入らなければユスノアがお陀仏になってしまう、それだけは避けたいので早めに家を出発した。


 ダイアナが居るのは同じ中央の大地(センターグラウンド)であり、距離的には案外近いのである。俺の家がある街は中央の大地(センターグラウンド)北東部であり、ダイアナは北西部にいる。


 夜のうちに移動し朝方にはすでにダイアナ達がいる森の中に到着していた。


 だがここからが時間がかかる。なぜなら……


「なあ、ネヴィ こっちで合ってたか?」


「…こっちだっけ?」


「こっちだったかなぁ?」


「…あっちだった …気がする」


「ねえねえ、2人共ちゃんと場所分かってんの?」


 訪ねてきたユスノアに対して2人は…


「たぶん」


 と同じ返事をした。


「おいおい、お前ら大丈夫かよ…」


 ヒューララに呆れ顔で言われる。


「と言われてもなぁ…」


「…前に来たの …だいぶ …前だから」


「それに、ダイアナが張ってる結界とかのせいでそう簡単に辿り付くことができない上に来る度来る度に結界のパターンとかいろいろ変えるから、その都度道を探さないといけないからわかり難いんだよ」


「へーー…」


「…でも、変えるのは …第1結界の範囲 …だから …内に入れば …前のまま …のはず …だから …たぶん大丈夫 …だと思う」


「って2人共確証は無い訳…? 例えば、ここじゃないかとか、あのあたりだぁとか」


「んー、こればっかしわどうにもならないなぁ… ハァー面倒い…」


 しっかしこれだけ歩けばそれとなく、一部の者にわかる何かを残してるはずだけど、一向に見つかる気配がないなぁ… かと言ってダイアナの性格を考えると簡単ではないと思うが……


「…オール」


「ん、ネヴィ?」


「…見つけたよ」


「本当か!?」


 ネヴィの指示す先に1本の木が生えていた。近づくとネヴィが木の根元に視線を向けるように指示してきたので木の根元をよく見てみると木の根元に小さくGとDそれと六芒星のマークが記されていた。


 これはダイアナが目印などに使う時に記されるマークの一種であり、この木に何か仕掛けがあると言う意味でもある。


 オールは木の根元から上に視線を向けながら何か仕掛けがないか探すと木のある箇所に溝がありそこへナイフか何かを入れて栓抜きの要領で手前に引くとそこの部分が開き中に水晶パネルと数字が書かれたボタンが存在した。


 水晶パネルには『正しい番号を押せと』書かれている。


「正しい番号て何?」


「オール君何か心当たりあるの…?」


「ああ、ダイアナの手紙の裏面に長々と数字が記載されていてなぁ たぶんこれがそうだと思うんけど」


 間違ったら、なんか面倒いことにならんかと内心ドキドキしている…


「えーと、314159265と…」


 打ちこみ終わると水晶パネルに新たな文面が表示された。


『次の計算式を解け、ただし答えはランダムな数字の3進法で入力せよ』


「はっ? なんでそんな面倒くさい解き方しないといけなんだよ!」


 文面を読みイラつくオールそんな横でユスノアが…


「ねえねえネヴィちゃん、3進法ってなに?」


「…ネヴィも …よく知らない」


「ねえねえオール君、3進法ってなんのことなの?」


「あー……いいか、普段日常的に使用している数字は0〜9の10種類だろ、これを用いて使用する計算を10進法って言うんだ、だが3進法の場合は使うのはそのうちの0・1・2の3種類だけなんだ」


「ふむふむ、それで?」


「いいか、普通の数字の順番で言うと2の次は3だろ」


「うんうん」


「だけど、3進法の場合は2の次にくるのは3じゃなくて10になるんだぁよ」


「えっ? なんで?」


「だから、さっき言ったみたいに3進法では3種類の数字しか使用されないんだよ」


「…なるほど」


 なんとなく理解したネヴィ


「んーよくわかんないけど、とりあえずそのやり方で計算式を解けばいんでしょ」


「あー、簡単に言えばそうなるんだがそこをさらに面倒くさくランダム数化したから、答えを導き出すのがさらにややこしくなったんだよ。 ハァーー……」


 深めの溜息をついてから水晶パネルに表示された計算式を暗算するオール。


 しかし、何故3進法何て手の込んだやり方の上にランダム数とか… 普通にすれば早く済む話なのにダイアナも意地が悪いなぁ…


 そんなことを思いながら答えの数字を導き出し入力していくオール。


『では、問2…』


 この後そんな調子の問題が問5まで続いた…


『おめでとう、第2結界内へとどうぞ』


 と表示されるとすぐ横の結界の一部が消え進めるようになった。


「やっとかぁ、しかもだいぶ時間を消費してしまったなぁ」


「ここの先から後どれくらいで目的地につけるの?」


「ダイアナのやつが何も変えてなければ、おそらく後2つ結界を過ぎればダイアナ達がいる()にたどり着けるはずだが……」


 ダイアナことだから、前よりも館周りの警備を増してる可能性も大いにあり得るかぁ…


「まぁなんとかなるはず」


 オール達は第2結界内へと足を踏み入れた。


「こっからは前と一緒だといいが」


「…たぶん …大きくは …変えてないと …ネヴィは …思う」


 周囲を見渡しながら確認する2人…


「となると、アレとアレがいるなぁ…」


「…そうだね」


 徐に魔法収納鞄(マジック・バック)の中から何か探すオールとネヴィ。そしてオールが目的の物を取り出すと


「ユスノア」


 取り出した物を投げ渡し、キャッチするユスノア。


「これは?」


 見たところ小さな水晶に見えるが…


「それはダイアナ特製の魔除石(まよけいし) それを持ってないとここから先を無事に進めないからなぁ」


「えっ? 無事ってどう言うこと……?」


「簡単に説明すると…」


 オールが魔除石を持たずに前に出ると左右の茂みが揺れ動き、植物の蔓が勢いよく飛び出してきた。


「!?」


 驚くユスノアをよそにオールは手を入れていた魔法収納鞄(マジック・バック)から手を出しその手には魔除石が握られていた。すると飛び出してきた蔓はその場で止まりそのまま茂みの中へと戻っていった。


「こう言うこと」


 振り向きながらユスノアに教えるオール。


「この第2結界内は多くの食人植物が生息している。 だから、このダイアナ特製の魔除石が無ければ植物達(コイツら)の養分にされる それとヒューララは戻した方がいい」


「えーなんでだよ!」


「ここの植物達(コイツら)は魔除石を持ってる人間を襲うことは無いが人間以外の者は排除せよとダイアナが暗示をかけている 例え魔除石を持っていてもそれが人間でなければ襲いかかってくる」


「ふん! なら、ヒューがまとめて刈り取ってやるよ…」


「やめとけ、植物達(コイツら)の心臓共言える球根は地面のはるか下の地中… それに刈ったところでまた直ぐに再生する 体力と魔力の浪費になるからここはおとなしく宝玉の中に戻ってろ」


「ヒューちゃんお願い聞き入れて、ヒューちゃんに何かあったらわたし嫌だもん」


 説得するユスノア


「チェ…… ユスーが言うなら仕方ないや、でもこれだけは言っておくよ、ヤバくなったら直ぐに呼んで」


「うん!」


 ヒューララはオールを睨みつけながら


「もしも、ヒューがいない間に何かあったらゆるさないからなぁ」


 思いっきり信用してねぇなぁ……


 ヒューララが消えるとオールはもう一つの物をユスノアに渡す。


「あとはこのポーションを飲め…」


「これって確か幻系の魔法を見抜く時に使うポーションだよねぇ…?」


「ああ、ここから先はこれを飲まないと正しい道を進めないからなぁ…」


「んー?」


 首を傾げるユスノアだが言われた通りにポーションを飲む。それからユスノア達の眼が黄色くなり、その眼で周りを見渡す。すると、道の先に黄色くなっているものがあった。ポーションの効力により幻の周りが黄色く表示されているように見えている。


「なるほど、この森は幻で隠した罠とかがあるから、それを回避するためにポーションを飲むんだねぇ」


「…違うよ」


「えっ? 違うの…」


「確かに普通だとそうするかもしれないが、ここでは逆に幻を目印に使っている だから、幻を辿っていかないと正しい道を進むことができないんだよ」


「…それに …よく見て」


 ネヴィの言葉に従い再度幻に視線を向けると


「あっ! 矢印形になってる!」


「そうそう」


「…森の一部と …同化させた幻は …ポーションを使わない …限り …目印に …気づくことが …できない」


 目印に従って先へと向かうオール達3人は無事に次の結界内へと続く場所に辿り着いた。


「ここが次への入り口なの?」


「ああ、確かそうだったと思うが……」


「えっ、何か前と違うの」


「んー、確かに違うと言えば違うんだけど……」


 悩みだすオール。


「どうしたの、まさか場所が違うの…!?」


「いや、場所合ってるが…… なあ、ネヴィ 前に来た時にこんなのあったかぁ?」


「…ネヴィが …覚えてる …限り …無かった …と思う」


「だよなぁ…… となると、新しく設置された物かぁ」


「ねえねえ、2人はどれのことを言ってるの」


 ユスノアが訪ねてきたのでネヴィがその物を指差した。


「…あの …変な顔の石」


 確かに指差した先には道を閉ざすように顔形の石が置いてあり、妙にニヤついているような表情でネヴィ達に視線が向けられています。


「んー、なんか気持ち悪い顔してる」


 ダイアナの考えからして、あの顔形の石にもなにかの細工がしてあるはず… 退かさないと先に進めないようになっているし、どうにかして動かすしかないが生憎力自慢な者はここにはいない… となると、1番手っ取り早く石を粉砕することにしよう…


 オールは徐に弓を構えると躊躇せずに顔形の石に矢を放つ。


 だが…


 矢が当たる寸前で顔形の石の口が開き、そのまま矢を口の中へと飲み込んでしまった。


「だよなぁ……」


 開いた口を閉じると再び元の体制へと戻る石であった。


「攻撃はダメとなると、普通に押してみるかぁ」


 オールは警戒しつつも顔面石に近づき石に手を当てて思いっきり押してみるが一向に動く気配はなかった。


「押してダメなら引っ張ってみるって言いたいところだけど、どうせ無理だと思うからあえてやらん」


「…どうする」


「と言われても…… …困ったなぁ」


 するとユスノアがちょんちょんと肩を叩いた。


「どうした?」


「石の手前の足元になんか書いてあるよ」


 ユスノアが言った通りに顔面石の手前の足元を見てみると何やら小さな字で何か書いてあった。


「細かいが読めなくもないな…… えっと………」


 暫し沈黙するオール、そして徐に魔法収納鞄(マジック・バック)から紙と鉛筆を取り出すと足元に書かれている字を写し出した。


「…どうしたの」


「いや、細かい字の上にどうやら暗号文になってるみたいで、頭で考えるより紙に書き写して解いた方が早いと思って」


 字を全て書き終えてから今度は暗号文の解読に入るオール。その間暫し休憩するユスノアとネヴィ。


「ダイアナさんは用心深いねぇ」


「…元々は …ナタリアが …結界を張ってた」


「ナタリアさん?」


「…ユスノア …会ったこと …ないの?」


「うん、名前は聞いたことあるけどまだ会ったことないんだよね」


「…そう …今ダイアナが …居る …グリーン・ウィッチ(森緑の魔女館)は …ナタリア()の …所有物なんだ」


「そこにダイアナさんが住み着いたの?」


「…ネヴィも …よくは聞いて …ないけど …ダイアナは …ナタリアと仲が良い …ナタリアも …ダイアナと仲良し」


「なるほどなるほど。 オール君、暗号解けた〜?」


「まだだ…」


「ダイアナさんって冒険者の中で1番すごい魔法使いなんだよねぇ」


「…うん …ダイアナ …自身が言ってるし …ネヴィも …そう思うよ」


「となるとそのナタリアさんって人もすごい冒険者なんだね」


「そいつは違うぞー」


 オールが横から話しに入ってきた。


「ナタリアは冒険者じゃない」


「えっ!? そうなの?」


「…うん」


「だがまー、ユスノアも会って見ればナタリアの凄さがわかるさ、別の意味でのだがなぁ…」


「んん…?」

館までの長い道のり

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