デュロンの大森林
その後…街から出発して依頼書に書かれていた場所までやって来たのだが、場所が場所だったので俺はシーナにもう一度内容を確認させたところで、依頼内容に気づいたのであった。
そして現在に至る…
「ごめんごめん! いやー まさか 回復薬草の採取の依頼かと思ってたら 間違って『ヒュールメイダの球根』採取の依頼だったとは!」
その場を笑って誤魔化そうとしているシーナが言った『ヒュールメイダの球根』とは、解毒作用が非常に高い植物であり この球根から作られる毒消を使えば大抵のモンスターの使う毒ならばすぐに解毒してしまうほどである。
「で… それはいいとして これからどうするんだ?」
「どうするって? ここで野宿するしかないでしょ」
「お前 ここが『デュロンの大森林』だって! わかって言ってるんだよな!?」
『デュロンの大森林』とは希少な素材が多くありまた、モンスター達も多く住んでいることから冒険者が自身の技術などを向上させる為に訪れることが多いそのため別名を鍛錬の森とも呼ばれている。
「大丈夫だって もしもしの時はあたし達でどうにかすればいいし それに不安そう表情を浮かべてると2人も不安になるよ」
「誰が不安そうだって… 俺の表情が沈んでるのは何か面倒なことになりそうな気がするからだよ」
「確かに 今夜は朔の日だから ちょっとは不安かもね」
それから俺はここまで連れて来てしまった2人の方を向くとまず最初に…
「悪かったな こんなところにまで来させてしまって」
と頭を下げた。それに対して2人は少し慌ててから
「そんな 依頼を一緒にと頼んだのは僕達ですし」
「そうですよ だから顔をあげてください」
「そうそう それに頭を下げるなら まずはフードくらい外しなさいよ!」
そう言ってシーナは俺が抵抗するよりも早くフードに手をかけフードを捲られた。
「おい!」
「いいじゃん!! フードばっか被ってると暗く見えるし それに被ってなくたって 死にゃしないでしょ!」
「んぬ…… 確かそうだけど 被ってた方が落ち着くんだよ俺は!」
「あーそー…」
「それよりも 寝床を確保するのが先決だろ」
「そうだね」
すると、シーナはその場に倒れ込んだ…
「どうしたんですか!?」
それを見て慌てる新人2人
「大丈夫だ… 心配しなくても」
俺は2人を落ち着かせるために声をかける
「ホントに、ほっといて大丈夫なんですか!!?」
すると倒れているシーナが声を上げる
「ちょっと! 静かにしてくれる」
「えっ…は、はい……」
「あのー… あれはなにをしているんですか?」
女の子の方が俺にシーナがなにをしているのかと訪ねてきた。
「あれは…水の音を聞いているんだよ」
「水の音ですか…?」
「ああ… 旅先で野宿するなら、近くに水場がある場所を確保した方がいいからね」
「なるほど…」
「よし!」
「見つかったか…?」
俺は地面から立ち上がるシーナに訪ねた。
「多分 こっちの方向に5分くらい歩けば 水場に出ると思うよ!」
シーナのその言葉を頼りに指さされた方向へと歩くと小さな水場があった。そしてそこから少し離れた場所で今夜は寝ることになった。
「薪はこんなもんで充分だよね!」
「なら、火をつけるか」
「あ! オールさん それてもしかして!?」
「ん? ああ… コレか…」
新人の2人の目は俺のバックに向けられていた。
「それって 魔法収納鞄ですよね!」
「わたし 始めて見た!」
新人の2人が興味を示したのは冒険者のマストアイテムである魔法収納鞄。このバックは階級がCランクの冒険者になった際に組合の方からお祝いとして職人の工房を紹介してもらえる。
基本的にはほとんどのバックはその人の要望に合わせて作られるためこれといって同じ物は存在しないらしい。冒険者のほとんどは魔法収納鞄を所有しているが、階級が上の冒険者ほど魔法収納鞄が小さいのである…
それは戦闘際に大きいと邪魔になるからであり。そのためシーナが持っているような腰のベルトに付けるポーチタイプの魔法収納鞄が多く使われている。
だが、俺が持っている魔法収納鞄は、シーナが持っている物よりも少し横幅が広く大きさも一回り大きい物を使用している。
その理由は……単にこのサイズが気にいったからである。