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ちょっと東へ

 

 組合の建物に入るとすぐに依頼(クエスト)などの内容が張り出されている掲示板でちょうどいいぐらいの依頼(クエスト)を探していると…


「あら、こんにちはオールさん、ネヴィさん」


 と話しかけてきたのはいつもの受付さんであった。


「こんにちは受付さん」


「…こんにちは」


依頼(クエスト)をお探しですか」


「ええ、今回のは少し遠出しようかと」


「そうなんですか。 そう言えば先程シーナも掲示板を眺めていましたよ。 今はもう、行く依頼(クエスト)を決めて足早に言ってしまわれましたけど」


 俺達と話しながら新しく追加された依頼書(クエストシート)を掲示板に張り出している。


「今回はシーナさんとは一緒にやられないですね」


「……ええ、まあ…… たまには別々で、って感じで」


「そうですか。 でしたら今ちょうど受け付けも空いていますから、よろしければお探しのタイプの依頼(クエスト)を攫えてきますけど。 いかがですか」


「それなら、お願いします 俺達は()()()()()()に行ってますから あの部屋今空いてます?」


 その問いに対して受付さんは少し笑みを浮かべて


「はい、空いてますよ。 基本的にあの部屋はオールさんしか使いませんから、ちょうど1週間前のままになっていると思いましたけど」


 そして受付さんに依頼(クエスト)の条件を伝えると俺達はあの部屋へと向かった。


 部屋の前まで来ると俺はまず扉に耳を当てて、それから恐る恐る部屋の扉を開けた。だが、今回はいつものように積まれた本が雪崩にならず、何事もなく扉を開けることができた。


「ふぅー… 今回は崩れてこなかった」


 そして受付さんを待つ間、俺はいつもの椅子に腰掛けて適当に近くにあった本を取り読んでいた。ネヴィは積まれた本を綺麗に入る本は本棚に整理し、入りきらない本は雪崩にならないように綺麗に並べていた。


「…ねえ …オール …ここの本は …ほとんど …読んだの?」


「んああ、だいたいは読んだかなぁ… と言っても内容を全部覚えてる訳じゃないがなぁ」


「……オススメ …ある?」


「本の?」


「…うん」


 頷くネヴィ、オールは椅子から立ち上がると棚にある本眺め始め、そして棚から1冊の本を取りネヴィに渡した。


「こんがいいかな 推理ものの小説 作者は余り有名じゃないけど 俺は結構面白いと思った1冊だなぁ…」


「…ありがとう」


 本を受け取ると早速本を読み始めるネヴィ、オールも椅子に腰を掛け直すと本の続きを読み出した。


 それから数分後、扉をノックして受付さんが入ってきた。


「お待たせしました。 オールさん達の条件に見合いそうな依頼書クエストシートはこちらになります」


 受付さんは手にしていた依頼書クエストシートをオールの前にある机の上に置いた。そしてそれらに目を通すオール達。


「…オール …これが …いんじゃない」


「どれどれ」


 オールはネヴィが見ていた依頼書(クエストシート)を受け取り、内容を確認しだした。


依頼(クエスト)場所はイーストグラウンド(東の大地)にあるソファ山だけど 依頼書(クエストシート)を提示してるのはその奥にある イーストグラウンド(東の大地)最大の港街である『クジュリ』の組合だなぁ」


「…クジュリ …イーストグラウンド(東の大地) …最大の港街にして …イーストグラウンド(東の大地)では ……4番目に大きい都市」


「んで、依頼主はそこの港街にある灯台で灯台守をしている、トゥランさんて人からだなぁ」


「…依頼(クエスト)内容は …灯台の種火に …使う …()の採取」


「こいつは結構難しいかもなぁ」


「…それに ……少し遠い …けど …ここなら」


「そうだな 距離はあるけど 元々遠出しようと思ったし、モンスター討伐じゃなくて素材採取の依頼(クエスト)だからちょうどいいなぁ」


 それにここまで行けばさすがのシーナも容易に追っては来れないと思ったからだけど……


「そちらの依頼(クエスト)でよろしいですか」


「はい、これでお願いします」


「わかりました。 では、クジュリの組合にはこちらからお2人の参加を連絡しておきますね」


「ありがとうございます」


 そして受付さんは部屋を出ていった。


「さてと、今から街を出たとして、一旦は依頼主が居るクジュリの港街まで行かないといけないから」


「…夜通し …進んでも …着くのは …だいたい、明日の夕方か …くらいだね」


「んー、どうしたものか 転移の矢を使ってクジュリまで行くのも1つの手だけど クジュリまで行くとなると最低でも矢が5本か6本は使うはめになるなぁ」


「…ネヴィは …歩いて …でも、平気だよ」


 その言葉はほんと嬉しいんだけど、辿り着く前に俺がダウンしてしまうかも…… 最近はちゃんと身体を鍛え直してはいるけど… それでも、ネヴィの持久力には到底及ばないんだよなぁ……


「はぁー……」


 思わずため息が出てしまうオール、そして部屋を出てどうするか考えながら階段を下っているとオールに話しかけてきた人がいた。


「あれ、オールさんじゃないですか」


 その声に反応して声の主の方を向くとそこには


「やっぱり、オールさんだ! お久しぶりです」


「あっ、キグナスさん」


 オールは階段を下りきるとキグナスの側に近寄った。


「お久しぶりですね、キグナスさん いつも家まで荷物を届けてもらってありがとうございます」


「いえいえ、仕事ですから」


 キグナスさんは配達業者であり、いつも白い配達員のユニフォームと白い帽子を被り、首元にゴーグルを下げている。髪の毛は黒の短髪で白い服を着てると少し目立つ感じがする。背丈は俺と余り変わらないが、配達で鍛えられた立派な腕をしている。


「ここには品物の配達で?」


「ええそうです。 今ちょうど受け付けに渡してきたばっかりでこれからまた配達で、今度はイーストグラウンド(東の大地)まで行くところです」


 その言葉を聞き


イーストグラウンド(東の大地)のどこまで」


「確かクジュリ港まで…」


 渡りに船とはまさにこのこと、すかさずオールが話しを切り出す。


「キグナスさん 実は俺達もクジュリまで行こうと思ってたんですよ それで配達のついでで悪いんですけど 俺達も一緒に運んでもらうことってできますか」


「お2人だけですか?」


「…うん …行くのは …ネヴィとオール …だけ」


「なら、良いですよ2人くらいなら運ぶのに問題ありません」


 キグナスは心置きなく引き受けてくれた。


「ありがとうございます」


「…ありがとう」


「それじゃあ、早速外に出て向かうことにとしましょうか」


 組合の外に出るとキグナスは待たせていた()()の名を呼んだ。


「お待たせベガ」


 キグナスがベガと呼んだ相手とは…


「……スカイソニック(空を翔る音速)


「そう言えばネヴィは初めてだったなぁ この()がキグナスさんの相棒のスカイソニック(空を翔る音速)のベガだよ それにしても相変わらず綺麗な翼をしているなぁ」


スカイソニック(空を翔る音速)』は体調3メートルから5メートルほどある怪鳥で翼を広げるとさらに倍の大きさになる。名の通り空を音速で飛行することが可能でまた、強靭な鍵爪で1トン以上の物を運ぶこともできる。

 また、身体から翼まで鮮やかな空色であり、これは空を飛んでいる時に外敵となるモンスターなどから身を守るために保護色としこの色になったと言われている。


「ベガ、2人も一緒にイーストグラウンド(東の大地)へ行きたいんだって」


 ベガはキグナスの話しかけに対して鳴き声で答えた。


「良いって」


「…ありがとう」


 ベガに近寄り翼を撫でるネヴィ。


「じゃあー、2人はそこにある荷物運搬用のバケットの空いてるスペースに乗ってください」


 キグナスが指した先にあったバケットは他にも色々と荷物が入っていたが人が2人乗れるくらいのスペースはなんとか確保することができた。


「先に言っておくけど、たぶんかなり揺れると思うからしっかりと荷物かバケットに捕まっててください」


 そしてキグナスはベガに取り付けている鞍に跨るとベガに合図を送る。それと同時にベガは翼を広げ羽ばたき始めた。


「よし! 飛べ!」


 キグナスの声に従いベガは翼羽ばたかせ一旦軽く空中へと飛ぶとオール達が乗るバケットの元へと降下し、そのままバケットについていた取手のような部分を鍵爪で掴むと再びキグナスが合図を送る。


「よし! 上がれ!」


 声と共に一気に空へと浮上するベガ。


 オール達も最初は身体が妙な感覚がしたが、すぐに慣れバケットから顔を覗かせた。


「おー、これは良い眺めだなぁ……」


「…うん …綺麗」


 いつも見慣れているはずの街も空から見るとまた違って見えてくるものであると思ったオールであった。


「2人共、乗り心地は大丈夫かい」


「ええ、大丈夫ですよ」


「そうですか、これから一気にスピードを上げるから落とされないように、何かにしっかりと捕まっててください」


「そのことなら大丈夫ですよ」


「?」


「ネヴィ」


「…了解」


 ネヴィは六面盾を包みから出すと


「…形態変更 …フォーメイション7(セブン) …オーブ」


 ネヴィは六面盾を使いバケットを丸ごと覆うた、これにより絶対にバケットから落下することは無くなった。


「なるほど、それならいくらスピードを出しても大丈夫そうですね。 それじゃあ行きますよ。 ベガ!」


 キグナスの掛け声に従いベガは飛ぶスピードを上げていく。


 それから2時間後…


「ただいまー!」


 勢いよく家の扉を開けたシーナであったが、オール達は依頼(クエスト)に向かったので当然家には誰もいなかった。


「あれ? オール? ネヴィ? 2人ともどこいったの?」


 誰もいない家へと入るシーナ、そして台所のテーブルの上の置き手紙を見つけたシーナ。


「えーと、何何 シーナへ ネヴィと2人で依頼(クエスト)に行ってきます。 夕食は台所に作り置きがありますのでそれを食べてください。 だいたい、2日・3日で帰ってきますので、それまで家のことをお任せた。 くれぐれも面倒ごとを起こさないように。 以上オール

 追伸 探しに来なくて良いからなぁ 以上」


 手紙を読み終えるとシーナはベランダに出て夜の森へと眼を向ける。


「やっぱりあたしじゃ、夜の暗闇の中は見えないや」


 そう呟くとシーナは家の中へと入っていった…

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