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無人島のダンジョン その2

 

「知らないだと? どういう事だよ! ヒック」


「だから、知らないってキャプテン・ジョーなんて名前の海賊」


「んー、確かによくよく見てみれば。 コイツ海賊みたいな格好してるな」


「みたいじゃ〜 ヒック! ねぇよ! ヒック」


「それでなんでスケルトンが海賊の格好なんかしてるんだ」


 とシーナが訪ねるとキャプテン・ジョーは…


「スケルトンじゃねぇ… あっ、でも今はハイスケルトンだったぁ… ヒック」


「どうやら元々は普通の人間だったようだけど。 死んでからハイスケルトンになったようだな」


「たまにいる 死んだ人間がそのままアンデット系モンスターになるって言うあれか?」


「ああ、どうやらそれみたいだな」


「な〜に 2人でこそこそと話してやがる」


 するとキャプテン・ジョーは腰に付けていた酒瓶を掴むとそれを自分の口に運び酒を飲み始めた。だが、スケルトンなのでもちろん飲んだ酒は骨を伝って足元の床を濡らした。


「あ〜あ、こんな身体になってからはいくら飲んでも全然酔わなくなっちまってたし。 味も全然わかんないぜ。 ヒック!」


「確かに味はわかんないかもしれないけど。 完全に酔ってはいるだろ」


「フッ 面白いヤツだな!」


「ちょっとシーナ! サトラちゃんがあんな状態にされてるんだよ」


 とチラッと後ろを振り向くアルフォード。


「ハァハァ… なんとか傷口を塞ぐことに成功しました」


 ウィーリアは本来魔法量が多い方の冒険者ではあるが妹のことでの動揺と細かいところの治療に集中力を使いすぎで少し疲労の表情を浮かべている。


「それで妹さんの容体は」


「浅い傷口でしたがかなり出血したので一時的に気を失っています」


 少し目元に涙を浮かべて話すウィーリア。


「そうか… なら、レタルさんに後の回復を変わってもらってウィーリアさんも少し休んだ方がいい」


「えっ…」


「ここから進むにしても出るにしても、回復役の人を失うのはチームとしていたいからな」


「………はい」


「ん… あのウィーリアさん?」


「えっ… ああ、ごめんなさいちょっと思い出してたことがあって」


「そうですか…」


 ハイドは後ろも警戒しつつ戦っているシーナ達の方を向く。そのハイドの後ろ姿を見てあることを思い出していたウィーリア。


 ウィーリアが思い出していたのは『ウトナの雪上戦』の時のことであった。


 彼女は傷を負った冒険者達の回復のため湖面を駆け回っていた。そして彼女が湖面の西側で負傷した冒険者達の回復をしていた際に背後からモンスターに襲われ、死を覚悟したウィーリアを助けたのがハイドであった。

 ハイドはその際のことを覚えてはいなかったが、ウィーリアはその出来事がきっかけでハイドに好意を持っていたのであった。

 なので今回の依頼(クエスト)をハイドと一緒に行えることを彼女は心から喜んでいた。これをきっかけにハイドとさらに仲良くなれることを彼女は望んでいる。


「さて、どうするアルフォード… このまま狭い通路で戦うよりも どこか広い場所での方が良くないか」


「確かに一理あるけど、どっちに向かう。 後ろにはいけないし。 前の十字路のとこにヤツがいるし、これじゃ動こうにも動けな…い? シーナなにしてるんだ?」


「前もダメ、後ろもダメなら 残るは…」


 シーナは話しながら通路の床を叩いていた。


「みんな着地に備えといて」


「えっ…着地って?」


 そして刀を振り上げるシーナ


「まさかシーナ!」


 とアルフォードが止めに入るよりも早くシーナは…


「大斬空!!」


 その一撃により床は崩れ周りに居た全員が下の階層へと落下した。そしてシーナ達が落下したのはネヴィとキャロさんがスケルトンと戦っていたあの場所であった。

 本来は2階層離れているはずなのだが、ちょうどこの場所は1階層分吹き抜けになっていたのでそのままネヴィ達の元へと落下してきたのであった。


 そのまま落下してきた瓦礫がネヴィ達の周りを囲っていたスケルトン達を倒してくれたのはラッキーである。


 そしてシーナは瓦礫から這い出てきて辺りを見渡した。


「いたたぁ みんな無事?」


「シーナ… さすがにみんな無事ではないぞ…」


 とアルフォードも瓦礫の下から出てきた。


「…シーナ」


「ん、あー! ネヴィ! なんでここにいるの?」


「……ネヴィからすると ……なんで …上から …降ってきたの?」


「いやー それがさ、かくかくしかじかなもんでさぁ」


「…なるほど …だから、この子 …負傷してる」


 そう言ったネヴィの近くにウィーリア達4人が居た。ネヴィは天井の崩壊とともに頭上から落下してくる瓦礫と一緒にウィーリア達4人が落下してくることに気づき地面に叩きつけられる前に瞬時に六面盾の能力で地面への直撃防いだ。


「ありがとうございます。 ネヴィさん」


「…いいの …それより …ウィーリアの妹が心配」


「大丈夫です。 傷口は塞ぎましたので、今はただ気を失っているだけです」


「……そう」


 するとネヴィはシーナの方へと向き直ると…


「…シーナ …ウィーリアとウィーリアの妹に謝って」


「確かに今回のはちょっと危険すぎた」


 アルフォードも賛同する。


「ごめんなさい! ウィーリアさんそれにサトラちゃんも」


「まったくですよ! でも、今度からは気をつけてくださいね」


「はい、そうします」


「さてと、続きに入るとするか!」


「うっし! やるか!」


 2人はキャプテン・ジョーへと視線を向ける。


「一緒に落下したはずなのにあの野郎全然ダメージ負ってねぇな…」


「…アイツを …倒せばいいの」


 ネヴィも2人の横に並び立つ。


「ああ、そういうことだ」


「なんかこの3人で一緒に戦うのって、久しぶりだね」


「そう言えば、ネヴィ。 他の連中は一緒じゃないのか?」


「…ダンジョン入って …すぐに …ネヴィ達 …転移トラップでバラバラに …された」


「ってこは、オールやリュオン達は最悪1人でダンジョンにいるってことか」


「…それは …わからないけど …たぶんあの2人なら大丈夫」


「それは言えてるな」


「ヒック、ヒック!」


 しゃっくりをしながら酒瓶を探すキャプテン・ジョーだが、落下の際に瓶が割れたせいで少し不機嫌そうに喋り出した。


「ちくしょう!! 酒が無きゃ、オレ様はどうすればいいんだよ」


「……… …変なスケルトン」


「そうそう少し変わったヤツなんだよ」


「……でも …敵なら倒す …だけ」


「油断は禁物だぞ。 アイツけっこうやる(強い)ぜ」


「あーあ! なんだか喉が渇いたが酒がねぇから… 変わりにお前らの血で喉を潤すことにするか」


 その言葉を発したキャプテン・ジョーはさっきとは違う雰囲気を醸し出していた。そして場の空気が変わり、シーナ達3人はキャプテン・ジョーと向かい合っている。


「ネヴィ… あたし達のことはいいから後ろのみんなを守ってやって」


 キャプテン・ジョーから視線を動かさないまま真剣な声でシーナが言った。


「…わかった」


「アルフォード ヤツが動いたら速攻でいくよ」


「ああ、シーナも無茶なことはしないでな」


「そいつは約束しかねるな」


「まあ〜 心配いらないさ。 俺が絶対にシーナのことを守から」


「アルフォード……」


 先に均衡を破ったのはキャプテン・ジョーの方であった。いきなり斬撃を放っなり一気にシーナ達との距離を縮めアルフォードの懐付近を一斬り仕様とするもアルフォードが剣で受け止めカウンターを放つがキャプテン・ジョーはそれを躱しさらに視界外からのシーナの攻撃も躱す。敵が斬撃を放てばこちらも斬撃を放ち相殺させ、こちらが斬撃を放てば敵も斬撃を放ち相殺する。


 3人による攻防は続いたが戦いを優位に進めていたのはシーナとアルフォードの方であった。


「ヒックヒック… あ〜っと、こいつはちょっとオレ様が押されてる(攻められてる)なぁ〜 ここは出し惜しみなしにいきますか…」


 その呟きが終わるとキャプテン・ジョーの周りの雰囲気がまた変わる。それを感じて一旦後ろに距離を取る2人。


「さあさあ、いつまで寝てやがる! キャプテン(船長)命令だぁ!さっさと仕事に動き(かかり)やがれ! 野郎ども!!」


 キャプテン・ジョーのその言葉にその場にバラバラで転がっていたスケルトン達の破片が動き出し、そして破片が再生を始めた。


「おいおい、こいつはちょっとヤバくなるかもな」


「狼狽えなさんなって どんなに数が増えようとも()()()()なら()れるでしょ!」


「………」


「どうしたのよ 固まったままあたしの顔を見つめて」


「やっぱり、シーナは素敵だなぁと改めて再確認してたところ」


「なんじゃそれ?」


「とにかく、早めに倒そうってことだよ」


「ああ、なるほど」


「なにをごちゃごちゃ話してやがるんだ〜 ヒック! まあ〜いいか〜」


 そしてスケルトン達の再生が終わりキャプテン・ジョーの指示のまま一斉にこちらに向かってくる。


「だから、雑魚の頭数増やしたところで…」


 斬撃の音と共に再生したばかりのスケルトン達はまたバラバラになぎ払われていた。


「そうそう、これでも俺達A+の冒険者だから」


「ってこれでもはないでしょ アルフォード!」


「いや… 今のは言葉のあやと言うか… 」


「まあ、いっか それより早くヤツをぶっ倒してオール達を探しに行こう!」


「俺は別にアイツ(オール)のことはどうでもいいけど、とにかく早くヤツを倒してここを出たい」


「ヒック! ケケケ、オレ様も甘く見られたもんだぜ。 けどまあ〜いいか」


「あっ! そうだ倒す前に聞いときたいことがあったんだ えーっと名前なんて言ったけ」


「確かキャプテン・チョーじゃなかったかな?」


「いや、キャプテン・ピョーだったような?」


「いやいや、キャプテン・ギョーじゃないけ?」


「あっ、確かキャプテン・ミャーだよ!」


「キャプテン・ジョーだぁ! 馬鹿やろ!!」


 と名前を散々間違えられて腹が立ったキャプテン・ジョー。


「あー、そんな名前だったけ? とにかくそれは置いといて おい!骸骨」


「散々間違えておいて! 結局見た目で呼び始めやがった!!」


「なに、ぎゃあぎゃあ騒いでんの… それよりお前あたし達がここに来る以前に他の冒険者と遭遇してないか?」


「他の冒険者だと?」


「何十人もここに来てるはずなんだけど!」


 すると、キャプテン・ジョーはケケケッと笑い出した。


「ああ、全員は知らねえがオレ様と出会した冒険者共なら。 全員斬り捨ててやったよ」


「何人殺めた!」


「いちいち覚えちゃいねぇよ… オレ様が行き来してんのはこの階層と上2つの合計3つの階層だけだ。 後の階層は他のヤツら(モンスター)のエリアだからよく知らねえ ヒック!」


「他のヤツら?」


 とアルフォードが聞き返した。


「ああ、このダンジョンにはオレ様よりもやべえ(危ない)ヤツが居るんだよ!」


「そんなことは今はどうでもいい!」


 といきなりシーナが怒鳴った。


「それよりもお前が多くの冒険者を殺めたことがわかればそれでいい」


 そしてシーナは深く呼吸をしてから刀の刃先をキャプテン・ジョーに向ける。


「殺めた冒険者に悔いながらあの世に送ってやる」


 そこからは再び3人による攻防が始まった。さっきよりもシーナの一撃一撃の重みがましていることに気づいたキャプテン・ジョーだがここでシーナの一撃によりキャプテン・ジョーの右腕(スケルトンだから骨だけど)を切り落とした。


「おっと!」


 すかさずアルフォードが追撃をするがキャプテン・ジョーはその攻撃を躱しアルフォードを足払いで倒す。アルフォードは一瞬体制を崩したがすぐさま立て直し攻撃を続ける。キャプテン・ジョーはその一瞬で切り落とされた右腕を拾い攻撃してきたシーナを払い除け自身は後ろに後退しつつ拾った右腕を繋げた。


「チッ! 回復が早い!」


「ヒャハハァ! そんなんでオレ様に勝てると思ってんのか〜 ヒック」


「おいおい! 喋ってる暇なんてあるのかい!」


 いつのまにかキャプテン・ジョーの背後に回っていたアルフォードがそう言った。


「おっと!? いつのまに」


「くらえ! 赤兎刃(せきとば)!」


 アルフォードが放った赤い斬撃を躱そうとしたキャプテン・ジョーだったが…


「フッ…」


 赤い斬撃はキャプテン・ジョーが動いた方へとバウンドしそのままキャプテン・ジョーに命中した。


「グァ…!」


 なんだこの斬撃は!?


「ほらどんどんいくぞ!」


 さらに赤い斬撃を放ち続けるアルフォード。そしてその斬撃を躱そうと動き回るキャプテン・ジョーだったが斬撃は地面をバウンドしながら複数方向から()んでくる。


 何故だ! 跳んでくる赤い斬撃は最初に比べて当たる寸前のところで躱しているはずなのに… なのに!


「グァ… ガハァ!」


 なのに何故ダメージをくらっているんだ!? チッ!あの赤い男の攻撃のことを考えたいが、灰色の女が手強くて考える暇も無い!


「どうした? さっきと違って少し悲痛な表情に見えるぞ」


 とシーナが煽る。


「チッ! 調子に乗るなよ!!」


 激しく刃が打つかり会う。


 ヤツめ、俺の攻撃を躱したはずなのにどうしてダメージを受けているのか不思議なはず… 確かにこの技は初見の相手には見極めるのが難しい攻撃だけど、答えは単純。


 なぜならヤツにダメージを与えているのは赤兎刃(せきとば)ではなく攻撃時に俺がもう1本の剣から放っているウラカゼ(透ける刃)によるダメージ。

 そう、赤い斬撃である赤兎刃(せきとば)に相手の意識を集中させ相手がそちらに集中しているところにウラカゼ(透ける刃)が襲いかかる。


 赤に集中させてクリア(透明)な斬撃でダメージを与えていく。 少し卑怯な気もするけど…… まあ、女の子に傷を与えた報いてことで…


 ちなみに赤兎刃(せきとば)もちゃんと当たれば結構なダメージになるんだけどね…

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