港町
あの会議室での出来事から2日後…
今、俺達は目的地のダンジョンがある場所の近くにある港に泊まっていた。
港の名前は『トマイ』、フィヨルから北東にある小さな港である。そして目的地のダンジョンがある場所が見える港でもある。
なぜならダンジョンがあるのは、この港から少し沖に出たところにある小さな無人島に存在する。と言うより無人島自体が1つのダンジョンとなっている。
そもそもこのダンジョンを発見したのはトマイの港で働く漁師達であり。たまたま、無人島に寄ったらダンジョンの入り口を発見し、それを冒険者組合に報告して、それから冒険者によるダンジョンの探索が始まったのであった。
まさか、たまたま発見されたダンジョンで20名以上の冒険者が帰ってこないとは誰も考えもしなかったはずであろう。
今やこの無人島のダンジョンは高難易度のダンジョンに指定されるほどである。
そしてオール達もこれからダンジョンに向か事になっていた。
「あーあ、ついにここまで来てしまった……はぁー」
と宿の窓から海を眺めながら、また深いため息をつくオールだった。
「ああ、またため息ついてる! そんなんじゃ、ずーっと幸せが遠のいて行っちゃうよ!」
とシーナ
「お前には、わからんさ…… 俺の憂鬱が…」
「もうー! オールたら!」
「…オール ……病気?」
「違うよネヴィ… 心配してくれてありがと…」
「ネヴィ、こんなオールを心配しちゃダメだよ」
「……どうして?」
首を傾げながらシーナに尋ねるネヴィ
「ただ、気が乗らないだけの人に心配の言葉をかけても、意味ないもん!」
「……そうなの?」
「そうそう!」
「お前なぁ…」
「だってオール一昨日の移動の時からうだうだ、ってしてたじゃん!」
「だって、気乗りしないんだもん 特にああいう奴と組むときは…」
そう言ってオールは窓の外から見えたデュープの方を見た。
「確かにあたしも好きな方の人じゃないけど 同じ依頼を行う者としてしょうがないでしょ」
「まっ… 確かにそうだけど 聞いた話しだとあいつら2ヶ月ほど前にSランクになったばっかりで、Sランクでの実績はまだほとんどないらしいじゃん」
「確かにね! でもSランクの冒険者になったてことはそれなりに戦闘経験もあるし、実力もそこそこあるとは思うよ」
「なら、お前より強いと思うか…」
「あー、それは無いね!」
「そこはきっぱりと答えるんだな」
「当然でしょ!」
「……ネヴィも …シーナの方が強いと …思う…」
「それより、チーム分けはどうするんだ」
「なぜ、俺に訪ねる」
「だってこういう時、決めるのはオールの仕事だから」
シーナは部屋の椅子に腰を下ろしながら言った。
「…… 嬉しくはないな… ただ、改めて全員の能力を確認して決めるしかないだろ」
そしてオールは部屋の机の上に何やら色々と書かれた紙を取り出した。
「なにそれ?」
「フィヨルを出発する前にアグイスさんに頼んで、俺達以外のメンバーの戦闘情報とかを調べてもらっておいたんだ」
「へ〜 なんだかんだいって、手回しが早いね!」
「一応、チームを組む訳だし、相手の情報ぐらいは知ってないと戦闘時の並びや力のストックができないだろ」
「…… 一理ある…」
「で、困ったことにメンバーの大半が攻撃系の冒険者しかいないから チーム編成をするのが難しい…
それで、シーナ…」
「なに?」
「お前は、奴と同じチームになっても大丈夫か?」
「んー…… 大丈夫だとは思うけど できれば組みたくないかな」
「だよなぁ…… となるとやっぱりこのチーム編成しかないか…」
すると、オールは机の上に新たに紙を置いた。その紙にはすでにオールが分けたチーム編成が書かれていた。そしてその紙を覗き込むシーナとネヴィ。
「んー… オール、ホントにこのチーム編成で行って大丈夫?」
「これが1番いい分け方だからな、それにおそらくこれ以外の分け方はできないだろうし…」
「……ネヴィは …問題無い…」
「後は… この編成で他のメンバーが納得するかどうかだな」
「リュオンとアルファードはともかく、残りのメンバーは… んーどうだろう…」
「だけど、このチーム編成にしないとなぁ…」
「とりあえず、話してみたら?」
「そうだな、それが一番早いな… 昼食の時間にでも、全員に集まってもらうように組合の人に頼んでおくか…」
そして昼食…
明日の探索についての話しがあると言って泊まっている宿に全員を集め昼食を取りながら話しを始めた。
ちなみに席の並びは俺の隣にネヴィとシーナ、シーナの隣にアルファードその隣にリュオンが座っていた。
そしてリュオンの対面する席にデュープが座りその隣にダンク、そこから横にハイド、サトラ、ウィーリアと座っていた。そしてウィーリアとネヴィの隣にの席に組合員のキャロさんとレタルさんの2人が座っている。
そして周りをざっと見て全員が食べ終えたことを確認したところで話しを切り出した。
「えーと、全員とりあえず耳だけ貸してくれ これから、明日のダンジョン探索でのチーム編成のことを話す」
俺がそう言った矢先にデュープが静かに手を上げた。
「ちょっといいかな」
「なんだ…」
「もしも、ワタシとチームを組むなら、Sランクの者だけで頼むよ」
あーあ、やっぱり言うと思った。
「ああ、悪いけどそれは無理だは」
その言葉に表情が変わるデュープ。
「なんだと!」
「いちいち口で言うのは面倒くさいけど、今から俺が考えたチーム編成を発表する えーと、まずAチームの者から、俺・ネヴィ・リュオン・デュープ・ダンク、それとレタルさんの6人がAチーム… 次にBチームだけど、言わなくても分かると思うけど今名前を呼ばなかった6人がBチームだから」
つまりBチームは、シーナ・アルファード・ウィーリア・サトラ・ハイドとキャロさんの6人である。
「待て! なんでそのチーム編成なんだ!」
「えーと、今から少し理由を説明するけど… まず第一に、ここに居るメンバーの殆どの者が攻撃を得意とする冒険者であること、なので回復役のウィーリアさんと防御系のネヴィを中心にしてチーム編成を組みました」
「確かにその案はいいとして、何故ワタシと君が同じチームなんだね」
とデュープがこちらを見ながら訪ねてきた。
「別に、どう組むか考えてたら たまたまこうなっただけだよ…」
「ふーん まあ、今回だけ一緒のチームなことを納得してやるよ」
「はいはい、寛大なお心遣い感謝します」
「でも、ホントにこの編成で宜しかったんですか?」
と訪ねてきたのはウィーリアであった。
「なにか、問題でも?」
「だって、皆さんは前々からチームを組んで依頼を一緒にされてきた仲ですから。 今回も一緒にチームを組んだ方が良いのではと思いまして」
確かにウィーリアが言ったことは正しい。だが、それをしてしまうと何かあった時に困るので今回のような編成に分けたのである。
「大丈夫ですよ 俺達もいつも同じメンバーで依頼をしている訳ではないので」
「そうそう、コイツは基本的1人で行動してるしな」
とアルファードが言った。
こうして無事にダンジョンでの探索チームの編成が決まり。いよいよ明日の朝、ダンジョンのある無人島へと向かうこととなった。