いざ北の都市へ
あーあ、何故俺はこんなにも憂鬱なんだろ… きっとこれから起こる出来事が面倒だからだろうなぁ… あーあ、家でゆっくりしていたい…
馬車に揺られながら遠くの景色を見つめながら心の中で呟くオールであった。だが、もう一方では…
「ほらほら! なーに、沈み込んでるの! これから久しぶりにみんなに会えるかもていうのに!」
いつも通り楽しそうにしているシーナを見てオールはため息をついた。
「てか… できればアイツらが1人も来てないことを祈るよ…」
「またまた、久しぶり会うからって照れちゃって」
「照れねーよ… たく、いったい誰が来てんだか…」
「それは、ついてからのお楽しみ♪」
そして、オール達が馬車でフィヨルに向かう中、王都からフィヨルに向かう者が1人。
「………」
そして、オール達よりも早くフィヨルについている者が2人。彼らは昼食を取りながらオール達の話しをしていた。
「久しぶりにクライネから手紙が届いたと思ったら まさか、ダンジョン攻略の依頼の推薦だなんて」
「クライネらしいといえばらしいけど。それよりも手紙に書いてあったことが本当なら 寧ろ俺はもの凄く嬉しいーんだよね!」
「あっ? 手紙になんか喜ぶようなことが書いてあったのか?」
「久しぶりに彼女に会える! クライネに感謝しないと!」
「彼女? あー、あのグレー女のことかぁ」
「ああ〜、早く彼女に会いたい!」
あまりの嬉しいさにその場に立ち上がり回りだす男。それを見て一緒にいた女は呆れ顔になっていた。
「ん? でも、お前確か1月前にもあの女に会ってるよな?」
その言葉を聞いて男は回るのをやめ、女に顔を近づけた。
「1月前だぞ! 1月前! 普通の人は短い期間というかもしれないが! 俺にとっては1年もの期間に感じるんだぞ!」
「近ぇー! 離れろ!」
女は男の顔を手で押し返す。
「たく! あの女に会ったら今度こそ仕留めてやる!」
「それは、無理だよ!」
「あっ!(怒り)」
「なぜなら、彼女を仕留める…いや、彼女のハートを射止めるのはこの俺だから!」
「はっ…? 無理でしょ…だってオールがいるもん」
女がオールの名を口に出した瞬間男の表情が変わる。
「オールだと… 何でみんないつもアイツの名ばかりあげるんだよ」
「だって、シーナと1番仲が良いのはオールだからな」
追い討ちをかけるようにオールの名を口に出す女。
「あーー!! ないないなあーい!! 断じてない!」
「あんたどんだけだよ… ホント呆れて何も言えないわ」
「こうしちゃいられない! 彼女に会うための準備しなくちゃあ」
「あーあ、ご勝手に」
女は片手をヒラヒラさせながらもう一方の手でジョッキを持ってグビグビと中の飲みものを喉に流し込む。
「後で冒険者組合で合流な」
「了解した」
そして男は店を出ていった。
「さてと、あの女に会う前に力を蓄えておかなくちゃな〜 おーい、店員さーん!料理お変わり!」
一方、店を出ていった男は鼻歌を歌いながらシーナに会った時に渡すプレゼントを品定めに周っていた。
「フッフン♪ フッフン♪ 何をプレゼントしようかな♪ 美味しい食べ物? それとも綺麗な洋服? それとも新しい刀? 何にするか迷ってしまう」
などと浮き足だって歩いていたら、強面な男とぶつかった。
「あー、すいません」
軽く謝ってそのまま進もうとしたら、強面男が男の肩を掴んだ。
「おい! 待てよ!」
「んー? なんですか?」
「ぶつかっておいて、なんですかじゃないだろ!」
「だから、すみませんって言いましたよ」
「テメー、オレ様にぶつかっておいて、すみませんで済ませるかよ!」
そして、強面男はいきなり殴りかかってきた。だが、男はそれをさらりと躱す。
「なんですかー、いきなり殴りかかってくるなんて」
「テメェ!! なに躱しってんだよ!」
「なんで黙って殴られてやらなきゃいけないんですか?」
「チッ! お前らこの男を逃すなよ」
「オウゥ!」
すると、強面男と一緒に歩いていた連中が男の周りを取り囲んだ。
「ちょっと、なにこれ? 少しぶつかったくらいで寄って集って1人相手にここまでするの? フツウ〜」
「うるせー!! 大人しく殴られてろー!」
強面のその言葉に反応して連れの連中が一斉に男に襲いかかる。
「ちょっと!」
男がそう叫んだ次の瞬間、襲いかかったはずの連中は皆その場に倒れ込んでいた。
「なぁ!?」
強面男が驚いている束の間、男は一瞬にして強面男に近づき鳩尾に1発をくらわせた。そしてその場に崩れゆく強面男に男はこう言った。
「相手が悪かったな… 素手でこの俺に勝つなんて千年早いんだよ」
「お…お前は……何者…だぁ……」
薄れゆく意識の中強面男は訪ね。
「あいにく 野郎に名乗るような名前はないんでね」
そして男はその場を後にした。
「さあーてと、プレゼント選びの続きをしますか! シーナは今頃なにしてんだろうなー!」
などと男が考えていた頃、オール達はというと……
「はぁーー…… なんでこうなるんだ……」
「なにため息ついてんの?」
「ため息もつきたくなるだろ… せっかく眠りについた時だったのに…」
「いいじゃないの ちょうど身体を動かしたいと思ってたところだし!」
背中越しに話す2人の周りをモンスター達が囲んでいた。
「あーあ、ホント面倒くさい…」
いやいや北へと向かうオール。
それを待ち受ける2人の冒険者……