表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/92

デュロンの大森林 その11

 

「アァツ!!」


 とシーナは声を上げる。


「んん… なんとか傷口は塞がったか……」


 普通なら、麻酔も無しにあんなことをすれば声も出せずに悶絶するか痛さのあまり叫び声を上げるようなものなのだが… やはりシーナは少し違う…


「お〜い! シーナ 大丈夫かい」


 声に反応して振り向くとクライネが後ろに立っていた。


「オォ! クライネ! なんでここ()にいるんだ」


「いや〜 下から見ていたら いきなりシーナの身体から血が吹き出したものだから 様子伺いに上がってきたんだよ」


 そしてクライネはシーナの傷口を確認すると


「ちょっと動かないでね」


「ヒール、それから|グリーン・リフレッシュ《翠の癒し》 」


 クライネは2つの回復魔法を使用した。さらに、クライネが調合した塗り薬をシーナに渡す。


「『回復薬草(ヒールハーブ) 』 『蒼い回復薬草(ブルーハーブ)』 『ランラ草 』 『ツユリの根』を調合して作ったものだよ」


「サンキュー クライネ」


 早速、渡された薬を傷口に塗り一緒に渡されていた包帯をぐるぐる巻いていく。


「これでよし! それよりクライネ ラキ達は?」


「後ろにいるよ」


 クライネの後ろに隠れていた2人がひょこっと顔出した。


「大丈夫ですかシーナさん!」


「大丈夫大丈夫! 前にこれより酷い怪我をしたことあるし」


「でも、無理は禁物だよ」


「わかってるて それよりオールは?」


「ああ、オールなら ()()の方の相手をしてるよ」


「別件?」


 そう呟いて下の森の中に眼を向けるシーナ。


「それより ボク達は目の前のアイツをどうにかしないとね… 」


 そう言ってクライネは月嫌いの方を向く。


「あのモーションて…」


 低い声で呟くクライネ


「あっ、あれって! さっきの時と同じモーション!!」


 焦る声でルーエが喋る。


「シーナ…」


「なんだクライネ?」


「今その状態で、あの攻撃を受けれるかい…」


 クライネは少し(けわ)しい顔で訪ねていた。


「傷が痛むなら ボクが変わるけど…」


 その言葉を聞いてシーナは…


「心配ないよ! あたしなら大丈夫」


 シーナは笑ってそう答えた。


 それを見てクライネはフッと笑ってから、ニコニコした表情に戻った。


「じゃあ… 任せたよ」


「任された!」


 そしてシーナは2本のナイフから刀へと武器を持ち変える。


「2人とも! クライネから離れるんじゃないよ!」


「はい!」


 ラキとルーエは同時に返事をした。


「うん いい返事!」


「シーナ 月嫌いはかなり魔力を溜めている 一気にけりをつけるみたいだね」


「みたいだな」


 最初に放った攻撃よりも溜めるに使う時間が長い月嫌い。それは月嫌い自体も相手の強さを感じてのことであった。そのために技の威力を増すために時間をかけている。もちろん集中してる間に相手の攻撃がないかと警戒はした状態である。


「そろそろ攻撃してくるとは思うんだけどね」


「どうする 攻撃が放たれたら すぐに反撃に移るかい?」


「んー… まっ、それは攻撃を無事に受けきれてからにしよう」


 そしてシーナは刀を構えた。


 いつでもこい!などと心の中で呟きながら月嫌いの動きに集中する。そしてその動きはすぐだった。月嫌いは先ほどと同様に攻撃をシーナ達へと放った。


 だが、次の瞬間その場に灰が舞った…


 その一瞬の光景を見ていたラキとルーエは何が起こったのかわからなかった。


「何が起きたの…」


「わかんない ただ、月嫌いが攻撃をしたはずなのに攻撃がシーナさんの前で消えたと思ったら 次の瞬間にはその場に灰が舞ってた…」


「今のはね 超高速な斬撃で相手の攻撃を打ち消したんだよ」


 ニコニコしながら2人に説明するクライネ


「でも、シーナさんは刀を動かしていませんでしたよ」


「動かしたよ」


 話しを聞いていたシーナが振り向きざまに即答した。


「えっ!」


「シーナ 普通の人には、速すぎて見えないて」


 えっ、そうなのと言いたげな表情を浮かべるシーナ


「それより 前々…」


「ん?」


 クライネが月嫌いを指差している。


 見ると月嫌いはすでに次の攻撃体制にはいっていた。


「それじゃあ 戦いの続きをはじめますか!」


 そう言って月嫌いに向かっていくシーナ


「あ! ちなみに今の技の名前は無灰(ムハイ) シーナだけが使える 防御技だよ」


 無灰(ムハイ)、その斬撃は攻撃を打ち消しその速さから生まれる摩擦熱によって灰が生じその場を舞う… シーナ扱う最大にして唯一の防御技である。


 攻撃によって魔力を消費した月嫌いは迫るシーナから距離を取ろうと翼を広げたが、クライネがそれを阻む。


「じっとしててもらうよ ディバインアイビー(束縛する蔦)!」


 足場としていた薄細樹(スライスウッド)から蔦が湧き出し月嫌いの身体に絡み動きを止める。


「シーナ! 動きを止めたよ」


「サンキュー! クライネ」


 シーナはそのまま、月嫌いの首を狙う。


「もらったー!!」


 刀の刃が月嫌いの首に振り下ろされようとした時、傷口から痛みが走り、シーナの動きが一瞬止まる。

 その動きを見逃さなかった月嫌いは炎で蔦を燃やし蔦の強度が下がったところで、絡む蔦を払いのけ。動きが止まったシーナに炎を放つ。


「シーナさん!」


 ラキ達が叫んだが、突如として湧いてきた痛みのせいで、その場を動けないシーナ。


 だが、そこに(ヒュー!)と音と共に1本の矢が炎を打ち消し。そのまま月嫌いの翼を射抜いた。


「今の矢は!」


「うん オールが放った矢だね」


 そう言ってクライネは下へと眼を向ける。


「さすがは、オールだね」


「へっえ くしょん! ん? クライネあたりが俺に対してなんか言ったな… しかし、今の矢は口を狙ったはずなんだけど 軌道が少しずれたみたいだな」


 樹の枝に座りながらオールは弓の角度を確認していた。オールは下からでも月嫌いが狙える範囲内へと移動していた。


「さてと アイツ(月嫌い)の翼が再生する前に終わらせないと 東の空が明るくなりつつあるし あーあ、コイツら倒すのに凄く疲れた〜」


 見ると倒されたアングホーネット(怒りぽい蜂)達が地面に転がっていた。


 てか、薬草採取に来ただけのつもりだったのに… あーあ、なんでこうなったんだか…… これが終わったら速攻で家に帰るか…… などと思いながら弓の弦を張り替える。


 シーナが使う無灰は高い防御力を誇るが、それ故に魔力と体力の消耗が激しい。無論そのことはオールとクライネも知っている。


「ちょっと底上げするしとくか 弾速アップ 貫通度アップ これで、仕留められるとありがたいんだげど」


 弓を引きながらオールが呟く。


「射抜け! ウィジストライク(突風を貫く矢)!」


 弦から手を離した瞬間その場に音を残し矢は月嫌いの喉をみごと貫通する。これにより月嫌いは炎を放つことが一時的にできなくなった。

 さらに、オールは手を止めることなく射抜いた箇所に狙い絞って矢を放とうとするが、喉を射抜かれた月嫌いは射抜かれた個所の再生のために翼で自らの身体を覆い守の体制にはいる。


「守りに徹するか…… だけど、動かない的なら逆に狙いやすくて助かる… けど後は、アイツに任せるか…」


 オールはそこで追撃を()め、後の始末をシーナに託した。


 その時、シーナは痛む箇所を手で押さえながらその場に立ち上がっていた。そして無言のまま 刀を構えている。それをクライネ達はただ黙って見守っている。


「フー… よし!」


 1回深く呼吸をしたシーナは構えていた刀を鞘に納めた。そして月嫌いに3歩近づくとそこで止まり居合の構えにはいった。


「クライネさん あれは…」


 ラキが訪ねた。


「居合斬りの構えだね どうやら決着の時みたいだ」


 そしてシーナは小声で何か呟いている。


「剣速アップ… 斬撃強化… 身体向上… フルアップ… 瞑想…」


 今の状態のあたしにはこれくらいかな… と心の中で呟くシーナ。


 そして決着の時は一瞬で終わった。


 シーナがピクッと動いたと思ったらそのままクライネ達の方に向き直って歩いてきた。


「終わったよ…」


 シーナはそう答えた。


 ラキとルーエは状況を理解できずに困惑した表情であったが側に立っていたクライネがニコニコしながら。


「終わったみたいだよ」


 すると次の瞬間、丸くなっていた月嫌いの身体が真っ二つに分かれその間から朝日が差し込む。

リアルに傷口を焼いたらくそ痛いと思う…

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ