デュロンの大森林 その9
「エ…Sランクの冒険者…」
クライネがSランクの冒険者と知って驚きの表情を浮かべているルーエを見たクライネは…
「別に 階級がSランクだからて 戦闘技術などに関しては そこまで強くもないんだよ」
「クライネはモンスター討伐の依頼よりも 高難易度の薬草などの植物採集をメインとして依頼を行なっているんだ」
「何も階級がSランクの冒険者だからて別に全員がモンスター討伐が得意て訳でもないし ボクみたいに他の分野で成果を上げて階級を上げた冒険者だって何人もいるよ」
「へー だけどやっぱりそれってかなり凄いことですよね」
「よしてくれよ 別に褒められたことじゃないよ」
照れくさそうに頬をかくクライネ
俺達がそんな話しを続けていると…
「おーい! 話しが盛り上がってるところわるいけど そろそろ こっちも手伝ってくれないかー!」
そう言ったのは俺達が話しをしている間に準備運動をしていたシーナであった。
「ああ、ごめんごめん 今から足場を組むから」
クライネはそう言うと今、急成長させた薄細樹にさらに手を加える。
「本来 花粉から樹にはならないけど さっきボクは使ったのは植物の細胞情報から強制的に成長させるもので そして今度のは植物造形魔法で今急成長させた薄細樹の木をシーナが戦いやすいようにな足場へと造形する」
そしてクライネの造形魔法により急成長を遂げた樹はさらに枝から枝へと分かれてあっという間に水場の周りを囲むように足場が組まれた。
元々薄細樹はその名の通り薄く細い樹で枝分かれする際に枝が円盤状になりそこから新たに枝が伸びてゆくと言った変わった樹である。
むろん、クライネもそのことを知っていたので今回はそれを利用して足場を組んだのである。その際にシーナが乗った重みで円盤状の足場が壊れないように樹の強度も上げている。
「サンキュー クライネ! これでやっと少しはまともに戦える!」
そう言うとシーナは樹の足場を利用して上へ上へと駆け上がっていった。それを下から眺めているとクライネが俺の肩を叩いてきた。
「どうした?」
俺が何かあるのかと訪ねると…
「あのね… シーナのことはボクがちゃんと援護するから その間オールには別の相手をして欲しいんだよね!」
「待て、ちょっと待て! なんだその別の相手て?」
俺が訪ねるクライネはゆっくりと指先を森の中の方へと向けた。そして俺が暗い森の中を眼で確認するとそこには無数の飛び交う物体が見えた。
「クライネ 理由を簡潔に説明しろ」
「それがさ〜 ここに来る途中でうっかり彼らの巣を刺激してしまって それからずっと追いかけられていたんだよね!」
ニコニコした表情のまま話すクライネ
「それで 悪いんだけど こっちでシーナの援護しているから そっちは任せたよ」
「任せたて… あの数のアングホーネットを俺、1人で倒せと!?」
アングホーネット単体ではあまり恐ろしくないが、その数が多いと少し厄介な相手である。名の通り短気な性格な蜂型モンスターであり。冒険者が間違って巣を刺激してしまって襲われたと言った事例が多くあり。また、彼らが持っている毒は大したものではないが、針がかなり鋭利なものであるため過去にはその鋭さで腕を落とされた冒険者も存在するほどである。短気なうえに攻撃性が非常に高いのが彼らの特徴である。
「だって、シーナは今もすでに戦闘中だし 今日は朔の日で月明かりはないし 星明かりも木々が邪魔してろくに光を通さないから森の中はかなり暗いし でもオールなら その眼があるから 見えてるよね!」
「あーあ、わかったよ それよりクライネこれが終わったらちょっとこっちの依頼終わらすの手伝えよ お前がいれば早く済ませそうだから…」
「はいはい、じゃあ〜 頼んだよ!」
そしてオールは1人で森の中へと入っていった。
「それじゃあ ボクらは、彼女のところまで歩こうか」
「えっ… は、はい…」
ルーエはクライネの指示に従ってラキの元まで歩いた。その間、水場の上ではシーナが月嫌いと戦っていて、後ろの森の中からは弓の弾かれる音と飛び回る羽音だけが聞こえてくる。
「さてと… 2人共ボクから離れないでね」
「あの、クライネさん オールさんは暗い中でも物が見えるんですか?」
「 え〜っと、そうだね… 暗いところが見えるのはオールの生まれ持ってのスキルなんだよね」
「オールの眼はね どんなに暗いところでも昼間のようにはっきりとものを見ることができるんだ… 夜を見通す眼 それがオールだけが持つスキル『夜鳥の瞳』だよ」
蜂って夜動くのか?