デュロンの大森林 その6
オールは水場の中央で浮遊するセレデュオンの動きを確認しつつ、シーナ達の位置を確認した。だが、すぐに目を背けて少し大きな声でシーナに話しだした。
「おい! シーナ!」
「オールやっと戻って来たか! 見てみろ、月嫌いだ!今夜はついてるぞ!」
「シーナ! それよりも…」
「わかってるて、ラキはちゃんとあたしが守るから」
「違う!!」
「ん? なに? 他になにか問題ごとか て言うかなんでそっち向いて話してるんだ?」
「シーナ! 服!」
「えっ? 服?」
「服を着ろー!!」
オールがそう叫んだ理由はシーナの格好がかろうじて下は履いているものの上はまだ何も着ていない状態で刀を持っていたためである。その為にオールはシーナの方を見ずに話しをしている。(ルーエも顔を背けています)
「あー… オール! 別に見られてもあたしは気にしないぞー」
「こっちは気にするんだよ!」
赤面しながら答えるオール(もちろんシーナの方を見ずに話しを続けています)
「シーナさん… 上着を…」
先に水場から上がっていたラキがシーナに上着を渡す。
「ああ、サンキュー! 」
シーナは渡された上着を羽織る。
「おーい オール! 上着たぞー!」
その言葉を聞いてオール達は恐る恐る顔をシーナ達の方に向けたが…
「おい! 前を閉めろ!」
シーナは上着を羽織ったものの中に何も着ていない状態なので胸が少し開けているので、オールは上着の前を閉めるように叫んだ。
「えー まだ少し濡れてるからやだよー それよりも どうする」
シーナの顔が真剣なものになったのを見てオールも月嫌いの方を向く。
「ルーエ」
「はい!」
「お前 遠距離系で使える技はあるか」
「一応 飛刃なら使えます」
「防御系の技はあるか」
「ダメージ軽減のスキルなら 1つだけ使えます」
「よし 今すぐに発動しとけ それとここぞというとき以外は 月嫌いを攻撃するな 攻撃のタイミングは俺が支持する」
「やっぱり戦わないとダメなんですか」
「俺もできれば戦わずにいたいが、ヤツは違うらしい… どうやらかなり腹が減ってるらしいな」
「わかりました」
「じゃあ 目立たないようにしろよ」
そう言ってオールはさっきまでいた森の方へと駆けていく
「ちょっと! オールさん どこに行くんですか!?」
「お前はヤツの動きだけ見ていろ 心配するな後ろには俺がいる!」
そう言い残してオールは森の中に姿を消した。
「ラキ あたしの後ろから離れないでよ」
「はい」
「それと ラキは自分を守る技は使える」
「はい! ですが相手が強いとあまり意味がないかもしれません」
「大丈夫! 自分を信じな! それから回復系の技は使える?」
「ヒールなら使えます!」
「よし それじゃあ 第1優先は自分で あたしがヤバくなったら 回復してくれる」
「はい もちろんです!」
「うん! いい返事」
するとシーナは自分の魔法収納鞄からなにか取り出すとそれをラキに放った。
「なんですかこれ?」
ラキはシーナが放った物をキャッチしてからシーナに訪ねた。
「それは『ユマのペンダント』 モンスターの魔法攻撃を8分の1減少してくれる…… だったかな…」
「いんですか! わたしが持ってて!」
「大丈夫大丈夫! あたしはそれほとんど使わないから」
そしてシーナは目線を月嫌いの方に戻す。月嫌いも依然としてシーナの方を向きながら浮遊をしていたが…
「来るよ!」
シーナのその言葉の通り月嫌いは動きだし、まずは威嚇混じりの咆哮をシーナ達にしかける。その咆哮は凄まじくラキとルーエは腰を抜かしてしまう。
「大丈夫かい ラキ 気をしっかり持ちな!」
「あ! シーナさん前、前!!」
「ん!」
月嫌いの尻尾がシーナに迫る。
「フン!!」
シーナは迫る尻尾を刀で弾いた。だが、月嫌いはすでに次の攻撃体制に入っていた。
「目を閉じろ!!」
森の中からオール声が響く。そしてシーナ達はその言葉の通り目を閉じる。
すると、(ヒュー)と音とともに森の中から矢が放たれた。その矢は真っ直ぐに月嫌いに飛んでいく。
「フラッシュアロー」
そう呟いたオールの通りに矢は月嫌いに当たる寸前で弾け強烈な閃光を放つ。
「シーナ!」
放たれた光によって月嫌いは一時的に目が絡んでいる状態。そして閃光が放たれた瞬間オールはシーナの名前を叫んだ。
「わかってるて! チャンスは逃さないよ」
そう言ってシーナは月嫌いに攻撃する。
「斬空!」
シーナが放った斬撃は月嫌いの左翼を捉えた。さらに追い討ちをかけるように森の中から無数の矢が放たれるが、月嫌いはそれらを全て尻尾で弾き防ぐ。
「あーあ、全部弾かれるか… 残りの矢筒はあんまり使いたくないんだけどな」
オールは木の枝に腰掛けながら自分の魔法収納鞄から矢筒のストックを確認しつつ新しい矢筒と交換した。オールは常に普通の矢が入った矢筒を20筒と特殊な矢が入った矢筒を3つ魔法収納鞄の中に入れている。1つの矢筒には20本の矢が収められている。