届かせたい
空中に出現した数百はある「疾風刃来」を見たコトネは慌てふためく。
「ちょっ、マジなのっ!?」
「姉さん防御魔法を! 「はばむけっかい」!」
その場にいる全員を覆うようにトシキの防御魔法が発動。半透明の防御壁がドーム状に全員を包む。
「ええ! シノブもお願い! 「みずのかべ」!」
「承知しました。「ぼうぎょへき」!」
続けて水による壁と半透明の壁が全員を隠すように出現する。
三重の防御によって安全を確保した直後、「疾風刃来」が一斉に降り注ぎ周囲を暴風が襲う。
先頭の水の壁が風を受けて波打ち、間にある半透明の壁と全員を包むドーム状の防御壁が軋み、暴風だけでなく飛んでくる小石等も防ぐ。
「だ、大丈夫なんですか、これ」
防壁が軋む音に不安を感じたマリがシノブに近寄って尋ねる。
「大丈夫です。あれが全部直撃ならともかく、このくらいの暴風なら防げます」
安心させるために微笑んでいるが、実は内心ちょっとだけ不安だったりする。
「しっかし何考えてんのあいつ。あんなにたくさん出して」
「目くらましにしても多すぎだし、物量で攻めようってのか? シューゴらしくねぇな」
波打つ水の壁を維持しつつ文句を口にするコトネに続きカズトが言うように、物量で攻めるのはシューゴらしくない。
確かに彼の魔力量は多いため、それに任せた魔法の物量で押す戦法をすることは可能。だが、思考して戦略を立てる指導を受けたシューゴはそうした力押しをあまり好まない。それだけにらしくなさが目立つ。
「冷静に見えて実は動揺しているのかな?」
「らしくない攻撃で、意表を突こうって考えたんじゃない?」
推測を口にするトシキとアカネだが、所詮は推測であってシューゴが何を思って物量で攻めたのかは分からない。
「ていうかおとーさん」
「大丈夫かな?」
さすがにあれだけの攻撃を浴びたら無事では済まないのではないか。そう不安になったアスカとアスハは、土煙の中にいるであろうコタロウを心配する。
そうした中で唯一マイペースを保っていたのはホノカだけだった。
「わー、凄いな。私もあんな魔法創ってみたいな」
彼女は割と大物なのかもしれない。
一方で手合わせをしているシューゴの方は、らしくないと分かっていながらも繰り出した物量攻撃の後にじっと土煙を観察しながら短剣を収め、「具現短剣」で生み出した短剣を両手に四本ずつ指の間で挟むように持って構える。
(この状況。師匠ならさっきの攻撃を防いだ上で動かないはず)
物量攻撃によって発生した土煙により、双方は互いに相手の姿を確認できない。
だが土煙の外にいるシューゴは土煙の中にいるコタロウの動きを土煙の流れから察知できる。だからこそコタロウは動かないだろうと推測し、防がれたことを前提に備えておく。
そうする理由はこれがコタロウに教わった戦法の一つで、相手が動けばそこを狙い撃ちし動かなければ作戦を立てる時間や回復する時間を稼ぐためのものだから。
(でも、俺がそう考えていると分かっているからこそ動くはず)
自分が教えた戦法であり、何のために利用するかを理解しているコタロウだからこそ逆に動いてくるとシューゴは推測した。
動かないと決めつけた所に不意を突かれればそこで終わりだが、逆に動くと警戒しておいて結果的に動かなければ単なる杞憂で終わる。
そうした天秤も含めた上で警戒しながら土煙を観察しつつ、気持ちを落ち着けながら何をしてくるか予測して待ち構える。
静寂の中で徐々に土煙が収まっていき、このまま何も起きずに終わるかと思った瞬間に足下に微かな振動を感じ、ある可能性に気づく。
(下……地中移動!?)
そこからなら土煙の動きで気づかれることなく移動できると気づき、咄嗟にその場を離れながら右手の短剣を元いた場所へ投擲する。
直後に地中からスピンをしながらコタロウが有れ、飛来する短剣を全て弾く。
「そんなんありですかっ!」
叫ぶように文句を言いつつ左手の短剣も全て投擲するが、スピンが弱まったコタロウをそれを片手に二本ずつ指で挟んで受け止める。
「今のような状況を脱するのと、洞窟のような場所で危機に陥った際に役立ちますよ?」
受け止めた短剣の二本を足下に落とし、残り二本を解説しながら宙に放って両手で一本ずつ掴む。
コタロウの使う魔法をよく知らないシューゴは、致し方ないと分かっていながらも悔しそうにしつつ「具現短剣」を解除する。
するとコタロウに利用されそうだった短剣は弾かれた物と足下に落とされた物も含めて全て消え、自身は改めて収めておいた短剣に手を伸ばす。
「そういえばシューゴ殿はそういう魔法を創っていましたね」
短剣が消え去るのを見ながら自分の短剣を抜こうとした瞬間、もうシューゴはすぐ傍まで接近して右手の短剣を首元へ振り抜こうとしていた。
「はんのうきょうか」がまだ維持されているコタロウはこれに反応して受け止めようとするが、迫っていた短剣が消滅してシューゴの攻撃は空振りになる。
(今のは魔法による短剣。わざと空振りしてのフェイントから本命は――)
直後に左手での掌底がコタロウの腹部へ迫る。
(こちら!)
それを読み切ったコタロウは右腕で防御するが、それと同時にシューゴの左手は掌底の状態から変化してコタロウの右腕を掴み、今度は空振りした右手が裏拳となって戻ってくる。
(二重フェイントのこれならっ!)
首元への攻撃で防御を引きずり出し、そちらへ意識を向けさせたところで「具現短剣」を解除。空振りしてのフェイントから左の掌底を繰り出したが、これも防御されだろうと読み切ってフェイクとして利用。本当の本命は空振りした右手を戻しての頭部殴打。
右腕は左の掌底の防御に使わせ、左手は消滅させた短剣を受け止めるために顔の反対側にある。
さらに、回避されないよう右腕をしっかり掴んで確保している。この一連の流れを実行するために、左手での攻撃は拳ではなく掌底を選択した。
これなら通じうるはずとシューゴは思っていた。ところが次の瞬間、コタロウは思わぬ手で対応してみせる。
「ふん!」
「どおっ!?」
咄嗟にコタロウがやったのは予想外の頭突き。
裏拳が迫ってくると分かった途端にそっちを向き、額を叩きつけて逆に裏拳を弾き返したのだ。
「なんっ!?」
まさかこんな手段で対応されるとは思わなかったシューゴは動揺し、その隙に左手での拘束を解かれてしまう。
「しまっ」
「ふう!」
動揺から対応ができないシューゴからバックステップで少し下がったコタロウは回し蹴りを繰り出し、反応が遅れたシューゴの脇腹に命中する。
「身体強化」は身体能力と身体機能こそ強化させるが、防御能力は強化されていない。
モロに攻撃を浴びたシューゴへのダメージは大きく、体が崩れ落ちかけた。
「ごっ、おっ」
「はあっ!」
悶絶しかけていようと手を休めないコタロウは間髪入れず、腹へ右拳を打ち込み前屈みにさせて左の肘を背中へ落とす。
「あぐっ」
耐えられなかったシューゴはうつ伏せに倒れ、そこへ短剣が振り下ろされようとした。
(浮遊……動盾)
辛うじて出した「浮遊動盾」によって短剣を防ぎ、その隙に転がって脱出して起き上がる。
やろうと思えば追撃して追い込めたはずのコタロウだがそれをせずに見送り、脇腹を押さえて息を切らすシューゴから目を逸らさずに口を開く。
「今のはなかなか面白かったですね。思わず少しだけ本気になってしまいましたよ」
「それは……どうも……」
「特に短剣の消滅と故意の空振りはよく思いつきました。当てに行くという気持ちが入っていたので、そこから短剣を消して空振りすれば誰しも一瞬困惑するでしょう」
「師匠には通じませんでしたけど」
「それは私が、シューゴ殿が短剣を生み出す魔法を創っていると知っていたからですね。しかし、だからこそ最後の裏拳まで繋げようと考えたのでしょう?」
やっぱり分かってしまうのかと思いながらシューゴは頷く。
自分の思考ではまだコタロウの思考に追いつくいていないと思い知らされる中、さらにそれを痛感させられる指摘をコタロウから受ける。
「ですが、私の力技に動揺したのはいただけませんね。決まったという心の油断と、私がああいう力技を見せていないからといってやってこないという思い込みがそれを招いた事は反省するように」
これまで見せていないだけで、やらない訳じゃない。
知っているからこその僅かな心の隙と、少しだけ本気を出させたほど上手くいきかけた連撃によって決まったと思った心の油断。それが反撃の目を生じさせ、今の状況に陥ってしまったとシューゴは思い知らされた。
「肝に……銘じます……」
技術的な点は褒められたが内面的な点でまだ甘さがある事を指摘され、素直にそれを受け入れる。
一方でそれを見ていた見学者一同は、三重の防御魔法の向こうで行われていた攻防にそれぞれ違った反応を見せていた。
ポカンと呆然とするトシキとコトネとマリ、目を輝かせて関心を示すシノブとカズトとホノカ、父の強さを目の当たりにして驚くアスカとアスハ、脇腹を押さえて辛そうにしているシューゴを心配そうに見守るアカネ。
歯を食いしばって痛みを堪えたシューゴが再びコタロウへ向かっていき、激しい攻防を繰り広げるのを目の辺りにしたマリは唾を飲み、近くにいたコトネへ問いかける。
「あの、皆さんもあれくらいできるんですか?」
「……無理よ。悔しいけど今の私達じゃ、コタロウさんどころかシューゴにも敵わないわ」
それが一歩や二歩のような僅かな差でなく、十歩も二十歩も開いている大きな差だというのはコトネだけでなくカズトもトシキもシノブもアカネも分かっている。
「あいつの本気を見る度に、思い知らされるんだよな」
「差を広げられているとは思わないけど、近づいているとも思えないんだよね」
「冒険者学校へ入学してからは共に鍛錬をしていた以上、違いはそれ以前の修業への取り組み方と意識と姿勢とその積み重ね。それだけでこうも差がつくものなんです」
特に取り組み方と意識と視線については、入学初日の実力披露で素振り一つに対する考え方からそれを思い知らされた。
スタートへ立つ前に積み重ねて基礎部分が違うだけで、こうも差が出るものなのか。
シューゴの本気を見る度にそう思ってきた彼らは、今の戦いをみながらどうすれば一歩ずつでも差を縮められるのかと考える。
さらに差をつけられているつもりは無いが、縮められている気もしない。それをどう埋めようかと。
そんな彼らの思いがどうこう言っている場合ではないシューゴは完全に劣勢だった。
「こんのっ!」
コタロウの繰り出す拳大の氷塊を回避しつつ、避けきれないものは「螺旋廻弾」で相殺して凌ぐ。
「ふむ、これくらいなら対応可能ですか。ではもっと量を増やして範囲を広げて威力と速度を上げてみましょうか」
「なんか段々、修行時代の延長になっている気がするんですけどっ!」
量も範囲も威力も速度も増した氷塊を避けきれないと判断して「浮遊動盾」で防ぎながら逃げるが、次々にぶつかる氷塊に「浮遊動盾」に亀裂が走っていく。
「結構魔力を込めたのに!?」
慌てて追加で数枚出現させたところで先に出していた「浮遊動盾」が砕け、今度は追加した方へ降り注ぐ。
少しでも保たせるために角度をつけて威力を流して衝撃を軽減させ、さらに重ね合わせて強度も強化して防いでいる間に魔法を使う。
(今のうちに。「周刃貫刺」!)
「螺旋廻弾」と「疾風刃来」では放ったところで降り注ぐ氷塊に妨げられ、目の前に氷塊を防ぐ「浮遊動盾」があるため「火炎放射」を使えず、コタロウが「感電地」の指定範囲外にいるため残る「周刃貫刺」を使って反撃を試みる。
自身の周囲を取り囲むように刃が出現してもコタロウは慌てず騒がず、少し面白そうな表情をするだけ。
刃が一斉に襲いかかるとアスハとアスカが騒ぐが、コタロウは一旦氷塊による攻撃を止めて再び「まりょくのよろい」を使って全ての刃を受け止めた。
貫通効果のある刃だが、「まりょくのよろい」の防御力の方が勝ったため防がれてしまう。
(これも私の知らない魔法ですね。自身の周囲へ一度展開する回転する弾丸や風の刃と違い、相手の周囲へ直接出現させるのならあの状況からの反撃には向いていますね)
攻防一体となっていた氷塊の雨を切り抜ける手段の一つとして間違っていないと評価したコタロウの周囲から刃が消えると、「浮遊動盾」を従えたシューゴが迫る。
今度は何をしてくるのかと「まりょくのよろい」を維持したまま観察を続けるコタロウへ向け、シューゴが放つ次の一手は「火炎放射」だった。
(そうきましたか!)
至近距離へ詰めての「火炎放射」に対し、コタロウは即座に回避行動を取る。
(やっぱり避けた!)
シューゴが「火炎放射」を使った理由は炎で攻撃するというよりも、熱で攻撃するためだった。
「まりょくのよろい」の防御力を突破するのは難しい。だが、鎧のように身に纏っているのならば防御魔法越しに熱を伝えられるのではないかと考え、「火炎放射」を使って「まりょくのよろい」越しに熱を伝えて攻撃しようとした。もしもこの推測が当たっていればコタロウなら避けるだろう、という推測も含めて。
結果は正解。防御魔法を身に纏っているのにコタロウは回避行動を取った。
(だからこそ「周刃貫刺」!)
検証が済めば後は策の実行とばかりに、再度「周刃貫刺」を使って刃で囲む。
(またこれですか? だとすると何か別の手による仕掛けがあるはず)
あのシューゴが無暗に同じ手を使うはずが無い。
そう確信しているからこそ、すぐにスピンをして地中へ潜ることはせずシューゴを観察。そして気づく、自身の足元へシューゴの視線が向いていることに。
(地面に何かを? 「ちょうやくりょく」!)
(感電地!)
刃に囲まれた内側の地面全てへ「感電地」が発動したのと、跳躍力を強化する魔法で後方へ高く跳躍して回避するのは紙一重の差で回避行動が勝った。
そのまま刃も飛び越せるほど跳躍したコタロウは、微かに電撃が走る地面を見て魔法を察する。
(地面に電撃を発生させ、攻撃するか麻痺をさせる魔法ですね。やはり避けて正解でしたか)
如何に全身を覆っているとはいえ、呼吸のために顔の部分だけは守られていない。
電撃が「まりょくのよろい」の表面を伝って顔まで到達すれば、攻撃にしろ麻痺効果にしろ影響を受ける。
熱同様に数少ない対抗策だったが、避けられてしまっては意味が無い。これだけで終わりであれば。
(地面に電撃を発生させ、わざわざあの刃で囲う魔法を出したのは唯一の回避場所を空中に限定させるため。ここで彼がやってくるであろう手は一つ)
(火炎放射!)
「周刃貫刺」からの「感電地」は「まりょくのよろい」と地中回避への対抗策であると同時に、唯一の逃げ道である空中へ逃れさせるための誘導。
まだ一度も見せたことの無い「感電地」すら囮に利用し、回避行動の取れない空中へ逃れたコタロウへ「火炎放射」が迫る。
「まりょくのよろい」は維持されているが、これでは熱までは防げない。今度こそ直撃かとカズト達は思ったが、コタロウが自分の防御魔法の欠点への対処を考えていない訳がなかった。
(らせんすいへき)
防御魔法の切り替えのために「まりょくのよろい」を解除したコタロウが使ったのは、やや前方に回転している円形の水の盾を出現させる防御魔法。これに命中した「火炎放射」は消火され、回転によって威力が分散され流される。
「防御用の魔法が二つ⁉」
「なるほど、それぞれの特性に応じて使い分ければ一方の欠点を補えるのですね」
同じ用途の魔法を二つも創っているとは思わなかったカズトが驚きの声を上げ、シノブは冷静に分析する。
全方位からの攻撃に対応できる「まりょくのよろい」と、それでは防ぎきれない熱や通電対策の「らせんすいへき」。これがあるからこそ、跳躍すれば放ってくるであろうと予測した「火炎放射」にも落ち着いて対応できた。
やがて通じないと分かったのか、「火炎放射」が消えるとコタロウも「らせんすいへき」を解除する。
(今のは良かったですね。さあ、次は何を)
してくるのかと思考しようとした瞬間、消えた「らせんすいへき」の向こうからシューゴが短剣を手に迫っていた。
「なっ――」
思わず驚きの声が漏れたのも無理はない。
「ちょうやくりょく」を使ったコタロウは未だに空中高くにおり、如何にシューゴが身体強化の魔法を使っても届かないと推測していたからだ。だからこそ、着地の瞬間を狙うか別の攻撃用魔法を使ってくると予測していたところへ、いつの間にか目の前に現れている。これが驚かないはずがない。
しかしそれも数秒。攻撃体勢へ移っているシューゴに冷静さを取り戻し、すぐさま対応する。
「はぁっ!」
「せいっ!」
双方が相手へ向けての一撃を放つ。
短剣を突き出すシューゴと拳を突き出すコタロウ。
直撃したのはコタロウの右拳。半ば反射的に繰り出したが見事に鳩尾に決まり、シューゴは苦悶の表情を浮かべている。
一方でシューゴの攻撃はコタロウに避けられていた。空中移動の手段がない限り避けようがないとはいえ、全く動けない訳ではない。右拳を突き出す勢いを利用して体勢を変化させ、左肩を狙った突きを回避したのだ。
これを実行して後出しで攻撃を当てたのは、前線を引退したとはいえ長い鍛錬と多くの経験を積み重ねてきた成果だろう。
ただし、完全な回避とまではいかなかった。
「……当たった」
予想外の展開への驚きによる数秒の空白と、先にシューゴが攻撃体勢に入っていこと。
この二点が直撃こそ免れられたものの、短剣が僅かにでも当たった感触をシューゴへ伝えていた。
「……見事」
その一言を聞くとシューゴは痛みで力が抜け、空中で体勢が崩れそうになる。
咄嗟に体を支えたコタロウは、脱力の影響で自然消滅していく階段状に配置された「浮遊動盾」を見て気づく。
(なるほど。炎を防がれるのを予測し、私の防御魔法と防がれた炎を目隠しに利用。私の視界がそれらで塞がっている隙に、これを足場にしたのですか。防御壁として使うだけでなく、こうした使い方をしているとはね)
自然落下しながらこれほどの高度に届いた理由を理解し、もたれかかって息を切らすシューゴの顔を見る。
(たかが三年、されど三年。よく成長しましたねシューゴ殿)
しばらく会っていない間に成長した弟子に関心しつつ、揃って着地する。
途端に崩れ落ちそうになるシューゴをそのまま支え、ゆっくりと横にさせた。
「「シューゴ!」」
「「シューゴ君!」」
「シューゴ殿!」
激しすぎる手合わせが終わったのを察し、駆け寄ってくる仲間達。
横たわるシューゴの傍に駆け寄って心配する様子に、仲間にも恵まれているようだと現役時代の仲間達との日々を思い出す。
そんな昔を懐かしんでいるコタロウへ向け、上半身を起こしたシューゴは告げる。
「師匠。次はもっとまともな一撃を叩き込んで、俺が勝たせてもらいます」
今ので満足なんてしないという決意の現れを聞き、そうこなくてはと笑みを浮かべる。
「その前に私に本気を出させる方が先ですね」
「どっちもやってみせます」
「楽しみにしていますよ」
実力を確かめ合った師弟の姿にホノカ辺りが感動仕掛けた、その時だった。
「おいおい。なんか派手にやり合っているから様子を見に来たが、なんだこの有様は」
勝負の後のいい雰囲気を壊すかのように、使用した魔法により抉れた大地を見た誰かの声が響く。
シューゴ達には聞き覚えのある声にそちらを見ると、カタギリタウンの駐屯地にいるはずのセンリが馬に乗って部下を従えてそこにいた。
「えっ? 支部長さん?」
「うん? おお、坊主達じゃないか奇遇だな」
偶然友人に会ったような反応をするセンリが何故ここにいるのか気になっている最中、さらなる爆弾が投下される。
「あっ、ママ。おかえり」
『えっ?』
「おお、そこにいるは我が愛する娘のマリじゃないか! 母が帰ってきたぞ!」
マリの発言に驚く一方でシューゴは思い出した。
どこかで聞き覚えのあるマリという名前は、合同研鑽会に参加していた時に聞きたくもないのに聞かされた、夫と娘を自慢するセンリの話の中に出てきた娘の名前だったことを。




