将武その3「将武・徳川 家康!!」
放課後、生徒達が下校し、男子校舎も、居残り雑談をする者たちが殆ど。
下校しようと廊下を歩く千代子は、使い慣れた鞄の底に触れた。
「将武パンツ……かぁ。それがあればお兄ちゃんみたいに強い不良になれるのかな。」
……。そんなわけない。いくらヒーローを目指す兄とはいえ、そんな珍妙なパンツで戦うなど、漫画じゃああるまいし。
どうせ、子供の頃から付き合ってきたヒーローごっこの延長のようなものだ。きっとすぐに帰ってきて、自分は普通に戻るのだから。
榊原が探しているのなら、うまく隠れて、いい感じにやり過ごせばきっとなんとかしてくれるはず。
……だれが?兄の竹康はいない。忠勝もいつも一緒にいて、フォローをしてくれる訳じゃあない。
だれが、なんとかする?
だれが、この状況を変えられる?
いったいだれが……自分を助けられる?
その思考を遮ったのは背後に一直線に迫る風と、迫り来る何か。
反射的に、横へ飛び退いた。
ズドンッ、と壁が、棒状のものに貫かれる。鉄パイプ?違う。棍棒?違う、こんなに太く長いものは見たことがない。これは……この持ち主は……。
「見つけたわよォタケちゃァーん?」
端正な顔立ちに外跳ねた金髪の、うちの制服ではない白い学ラン。
艶やかな紫の一角獣を純白の下窓から雄々しく猛らせた背の高い男は女性のような口調で、そう話しかけてきた。
榊原 村正、解体屋のバラだ。
こんなにも早く見つかるとは運の悪いことで、そしてなにより千代子は榊原から伸びるその太長い、太長い……3メートルほど伸びたモノに釘付けになっていた。
「貴方には初めて見せるわよねぇ、タケちゃん。立派なものでしょアタシの将武パンツ…いえ、鼓帝架『榊原 康政』!!後ろからいかせて貰ったけど…見向きもせずにかわすなんてやるわね。ますます……ビンッとくるわぁ…」
舌なめずりをしながら妖しく微笑み、仄かに赤く染めた両頬に手を添えて、ふぅう、と笑い混じりのため息をつく榊原は、言葉を続ける。
「でも、今日は遊びに来たんじゃあないのよ。アタシがきたのはタケちゃん…あんたの最近の日和ッた行動!桶高のカチコミの時よ!以前のタケちゃんなら舎弟たちにだけ行かせず…自分が先に突っ込んでたってのに…動かず座ったまんまの人任せ…焦らしかと思ったら全くの他力本願なんて…そんな萎えたあんたを扱き直しに来たってことよ。」
桶狭間高校の件で、榊原が探していたのは本当だった。理由は違うようだが……彼がやる気満々なのは明白である。
気を落ち着かせることなど出来ないし、逃げても追いかけられるのは確かだ。いや、しかし逃げ切れるのでは?
なにより…榊原の言う将武パンツ…彼は鼓帝架と言っていた。これほど太長いモノを常に穿いているとなればきっと速さも、さほど恐れるほどのものでは無いはず。
階段を数段抜かせばいいだけ、なのに動けない。次の攻撃がくる。避けなきゃ。逃げなきゃ。そして助けを求める。……誰に?誰もいない。正体をばらす?もっといやだ。なら戦う?……無理だ。解決策が何も思いつかない。恐ろしさで足が動かないのだ。
「ぼさっとしてんじゃないわよォ。それとも……そんなに早くイッちゃいたいのかしらぁ!?」
鼓帝架が壁から抜かれて横に薙ぎ払うように迫り来る。バラされる……バレる、バラバラにされる……!!咄嗟に鞄を盾にして、千代子は攻撃を防御した……その時だったッ!!
「えっ……!?」
「……あらぁ?」
千代子の鞄は榊原の鼓帝架により切り裂かれ、。鞄の中身が散乱する中はらりと落ちたトランクス。それは黄金に光り榊原は静止して、何事かと様子を伺う。
「…っ!!」
鞄の奥に押し込んでいた兄、竹康のトランクスが……金色に光っていたのだ。ウエスト部分には紅い葵の家紋。そのトランクスを千代子が手に取ると、声が、聞こえた。
『漸く言葉を交わせるか。余は徳川 家康ッ!!さあ、今こそ余を穿くのだ!千代子よ!』
将武・徳川 家康…顕現!!
次回、本格的な将武パンツバトルが開始されます。
榊原の将武、鼓帝架は…皆さん画像検索で、自己責任の上でお調べください。
あえて言わせて頂くならば鼓帝架とは、前しっぽアクセサリーなのです。




