柚子葉の飲み会 前編
大学での柚子葉の初めての飲み会は…
※真面目な柚子葉が好きな人は見ないほうがいいと思います。
ある日の昼休み。
深夜と直哉は会話をしながら大学の構内を歩いている。
直哉は歩きながら窓の外に顔を向けると講義を受けるまで降っていなかったのにいつのまにか雨が降り出している。
「げっ。雨降ってるよ」
「あ~、今日は学食行くかぁ」
「だな」
深夜達は普段学食は使わずに外で食べるようにしている。
大学の近くは値段は学食よりも少し高いがメニューも多く味も問題ない定食屋が多い。
深夜達はそこで食事をしている。食後は近くのコンビニで立ち読みをしたりして午後の講義まで時間を潰すのだ。
今日みたいに雨が降ってると外に行くのが億劫なので学食を使うようにしている。
学食に入ると講義を終えた学生が多く、空いてる席が少なかった。
二人はトレイを手に、食堂内を歩き出した。
「人多いなぁ」
「やっぱ雨だからなぁ」
「どっか空いてるとこねぇか?」
「えっと…。あ…」
深夜が食堂内を見渡すと一人で食事を取っている柚子葉の姿が見えた。
視線をとめた深夜に気づいたのか直哉が話しかけてきた。
「どっか空いてる?」
「あぁ、柚子がいるけど松本はそこでいいか?」
「いいよ。俺ももっと話してみたかったし」
「変なこと言ったら怒るぞ」
「分かってるって」
松本が了承したので深夜は柚子葉がいるところに歩いていった。
深夜が柚子葉の前の席にトレイを置くと、柚子葉は驚いた顔をして深夜に話しかけてきた。
「今日は学食なの?」
「雨降ってるから。柚子、ここ誰か使う?」
「ううん、大丈夫だよ」
「やっほ。久しぶりだね」
深夜と柚子葉の会話に直哉が割り込む。
柚子葉は直哉の顔を見て少し思い出す仕草をした。
「松本君、だよね?」
「そうだよ」
深夜は柚子葉の目の前の席に、直哉は深夜の隣に座った。
三人で食事をしていると数人の女性の学生が近づいてきた。
その中の一人が柚子葉に話しかけた。
「えっと、山下さんよね?」
「ええ。そうですけど…」
「今日ね、保育科の女子だけで飲み会をしようっていう話になってるの。良かったら山下さんも来ない?」
「えっと…、少し考えていい?」
「もちろん。あ、でも次の講義には聞かせてね」
そういって学生は離れていった。
深夜は柚子葉に話しかけた。
「いいじゃん、行ってこいよ」
「でも、秀太が…」
「俺が面倒みるから。お前だって女子大生なんだからたまには遊べよ」
「…うん、行ってくる」
「あぁ」
二人が会話していると違う女性の学生が近づいてきた。
「柚子葉、ここにいたの?」
「あ、知子。もう先生の話は終わったの?」
「うん。柚子葉、こちらは?」
「えっと…彼氏とその友達」
「うっそ!?柚子葉、彼氏いたの?」
「う、うん」
知子は深夜と直哉に目をむけた。
二人を見比べるようにした後知子は柚子葉に聞いた。
「…どっち?」
「…こっち」
「柚子葉と正反対じゃない。騙されてるんじゃないの?」
「そんなことないよ」
「あんた、柚子葉とどういうつもりで付き合ってるの?」
「どういうつもりって?」
「柚子葉のこと、本気なの?」
「もし、本気じゃないって言ったら?」
「別れさせるに決まってるじゃない」
「心配しなくても柚子のこと本気だから」
深夜は知子に真っ直ぐな視線を向けた。
数秒、にらみ合った後に知子は笑みを浮かべた。
「ごめんね、変なこと言って」
「いや、別にいい。柚子のことを思ってるのは分かったから」
「ありがとう。あ、柚子葉。今日の飲み会のこと聞いた?」
「さっき聞いたよ。知子も行くんでしょ?」
「もちろん。『も』ってことは柚子葉も行くの?」
「うん。私場所知らないから一緒に行ってくれる?」
「じゃあ、講義終わったら門のところにいるね」
「わかった」
そして、講義後。
今日の講義が終わった深夜は一人で歩いていた。
門を出るときに知子がいることに気づいた深夜はその場で少し考えたあと知子のほうに歩き出した。
「あ、柚子葉の彼氏」
「山上深夜。そういうあんたは?」
「板尾知子。で、何か用事あったんじゃないの?」
「あぁ…、これ」
「何これ?」
「俺の携帯。今日の飲み会で柚子が帰れそうになかったら電話して。迎えに行くから」
「分かった。店の場所はここからすぐの居酒屋。知ってる?」
「あぁ、大丈夫。んじゃ、頼むな」
深夜はそういって知子から離れていった。
知子が深夜の後姿を見ていると柚子葉が駆け寄ってきた。
「ごめん!待った?」
「ううん、大丈夫よ。じゃあ、いこっか?」
「うん」
そういって柚子葉と知子は飲み会が行われる居酒屋へ向かった。
柚子葉と知子が居酒屋へ行くと予定では女だけのはずが男も席に座っていた。
柚子葉達は顔を見合わせて近くに座っている子に話しかけた。
「ね、ねぇ」
「あ、会費は後でもらうよ」
「そうじゃなくて。今日って女性陣だけじゃなかったの?」
「それがね…どこかからバレて英文科と一緒になったの」
柚子葉と知子はとりあえず隅っこのほうに座った。
「どうする?」
「う~ん、とりあえず一次会は出て二次会は帰るよ。知子は?」
「じゃあ、私もそうしよっかな」
飲み会が始まって数時間後、知子は友人と話をしていた。
話の区切りがいいところで柚子葉のほうを見るといつもとは違う柚子葉になっていた。
それを見て知子は慌てて携帯を取り出してあるところに電話をかけた。
『はい』
「あ、もしもし」
『…誰?』
「板尾。大学で会ったでしょ」
『あぁ。柚子の友達ね。で?』
「すぐに来て。柚子葉が酔っ払っちゃって…」
『分かった。店入ったら誰の名前言えばいい?』
「えっと…岩田って言えば大丈夫だと思う」
『すぐ行く』
知子は携帯を切るとすぐに柚子葉の近くへ向かった。