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完結後番外編  作者: タカ
Change The Relation
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柚子葉の同窓会 中編

深夜は柚子葉の姿を確認するとホッとしたような顔になった。

そこに佐藤がニヤニヤ笑いながら近づく。


「よぉ、山上。えらい早かったな?」

「…佐藤。さっきの電話お前だな…」

「まぁな。にしても、早すぎだろ。お前…この近くで終わるの待ってた?」

「…たまたまだよ」

「ま、そういうことにしておいてやるか。とりあえず座れよ」

「あ、いや。俺は遠慮しとくよ。同窓会なのに俺がいたら話しが続かないだろ」

「まぁまぁ。そう言わずにお前を呼んだのには理由があるんだよ。とりあえず山下の隣空けてやって


佐藤の言葉を聞いて柚子葉の隣の席が空けられた。

だが、深夜が足を進めようとしないのを見て佐藤が強引に深夜を押す。


「ほら、さっさと行けよ」

「…おい、先に状況説明をしてくれ」

「まぁまぁまぁまぁ」


佐藤は深夜を強引に柚子葉の隣に座らせた。

佐藤はそれから違うグループに軽く状況を説明に向かい、その後姿を見送った深夜はため息をついて柚子葉に話しかける。


「柚子…状況を説明してくれ」

「えっとね、私が深夜と付き合ってるって言ったら皆が心配してくれたの」

「心配?」

「山上の噂を聞いてる奴がたくさんいるからな」


深夜の疑問に状況の説明が終わった佐藤が深夜の目の前の席に座りながら答える。

佐藤の説明で部屋の中はまた賑やかな会話がいろんなところで再開されている。

深夜は佐藤の言葉で自分が呼ばれた理由が把握できたようでもう一度ため息をつく。


「そういうことか…」

「さすが、山上。理解するのが早い。さて、何か飲むか?」

「あ~、じゃあウーロン茶」

「酒飲まねぇの?」

「こんな空気で飲める訳ないだろ」


深夜の言うとおり今この部屋の中は異様な空気に包まれている。

突然の深夜の乱入に楽しかった空気は無くなり皆深夜と柚子葉のほうに視線を向けている。

深夜の言葉に佐藤と柚子葉は苦笑いを浮かべる。

とりあえずウーロン茶を店員に頼んで佐藤が深夜に話しかける。


「え~と、どうしよっか?」

「俺に聞くな。あ、ところで噂ってどんな噂?」

「高校一年のときにお前が他の高校の奴を殴ったとか、そんな噂からお前が不良だから山下のこと心配したってわけ」

「あ~、高一だと心当たりが多すぎる。これ食っていいの?」


深夜は佐藤が言った言葉を何気なく肯定し、目の前の料理に手を伸ばす。

唐揚を手で摘んで口に入れると柚子葉がお絞りを深夜に渡す。


「はい」

「サンキュ。他に何か聞きたいことある?」

「そういえば山上と山下って何で付き合ってるんだ?」


深夜の言葉に佐藤が思い出したように呟く。

それを聞いた深夜は眉を顰めた。


「…どういうこと?」

「付き合うきっかけとかないのか?」

「あぁ、そういうこと。付き合うきっかけは、テストだよな?」

「うん」

「テスト?」

「高校二年のときに、違うクラスの子に『テストで一位になったら付き合って』って言われたの。断ろうとしたけど断れなくて、そのときに深夜が助けてくれたの」

「あ~、お前にカンニング疑惑が出たときな」

「お前だって騒いでた一人だろ?」

「…分かった?」

「あれで俺がカンニングじゃないって信じてるのって本当に一握りだと思うからな」

「そういえば…倉田は『山上はそんなことしない!』って庇ってたなぁ。そんな卑怯なことはしないって」

「倉田とは中学一緒だしな」


深夜と佐藤が話してる隣で、柚子葉と美智子が小声で話している。


「ねぇ、柚子葉」

「なに?」

「本当にあの人と付き合ってるの?」

「う、うん。そんなに意外?」

「意外だよ。だって、正直柚子葉と合わないもん」

「そんなことないよ」

「じゃあ、デートとかするの?」


美智子の質問に柚子葉は少し考えた。

隣で考えてる柚子葉に気づいた深夜が声をかける。


「柚子?どうかした?」

「あ、今聞かれたんだけどデートはあまりしないよね?」

「そういえばあまり二人きりで出かけることはないな」

「それって付き合ってるって言えるの?」


深夜が答えると美智子が小さい声で呟く。

それを聞いた深夜が美智子に尋ねる。


「なら聞くけど、付き合ってるから絶対にデートしなきゃならないって誰が決めたんだ?」

「え?」

「俺は柚子と一緒にいたいから付き合ってる。それだけじゃ駄目なのか?」

「でも…」

「ちなみに二人きりで出かけることは少ない。けど、柚子と出かけることが少ないってわけじゃない」

「それどういうことだ?」


深夜の言葉に美智子じゃなくて佐藤が首を傾げる。

美智子から佐藤に視線を向けて深夜が口を開く。


「柚子と二人きりになるほうが少ないんだよ。柚子に弟がいるのって知ってる?」

「あ~、聞いたことある。確かまだ小さいよな?」

「あぁ。で、柚子の弟も連れてどこかに行くことが多いんだよ。それこそデパート行ったり公園行ったり、な。だから、二人きりでデートっていうほうが珍しいわけ。な?」

「うん。二人きりで出かけることもあるけどほとんどは弟も一緒に出かけるの」

「二人きりで出かけるときは映画とかが多いな」


深夜は唐揚をもう一つ口に入れると立ち上がって『トイレ』と言って部屋を出て行った。

深夜が出て行ったのを確認した美智子が柚子葉の腕を引っ張る。


「ね、ねぇ、どうして柚子葉の弟と山上が仲良いの?

「どうしてって言われても…。一緒に遊んだりしてるから仲良くなったの」

「そうなんだ…。ねぇ、おばさんは知ってるの?」

「深夜と付き合ってるってこと?」

「そう。おばさん何も言わないの?」

「お母さん普通に応援してくれてるよ?それに信用もしてると思う」

「信用?」

「うん。『何かあったら深夜君に言うのよ?』っていっつも言ってるし」

「そうなんだ…」

「あ、ねぇ佐藤君」

「…なに?」


美智子との話が一段楽したところで今度は柚子葉が佐藤に声をかける。

丁度食べ物を口に含んでいた佐藤はそれを飲み干してから柚子葉に答える。

佐藤がこちらを向いたのを確認して柚子葉はさらに言葉を続ける。


「いつ深夜と仲良くなったの?」

「ん~と、二年の夏ぐらいかなぁ。辞書貸したのがきっかけだったなぁ」

「辞書?」

「そう。山上は最初倉田に借りに来たんだよ。あ、倉田って生徒会長な」

「うん。深夜と同じ中学だって聞いてる」

「そうそう。で、倉田は先に違う奴に貸してて、俺が貸すことになったんだよ。それから倉田を通じて話すようになった覚えがある」

「そうだったんだ。知らなかったよ、深夜と佐藤君が仲が良かったって」

「山上はそういうこと言いそうにないよなぁ」


そんなことを話してると深夜が戻ってきてまた当然の如く柚子葉の隣に腰を降ろす。

そして、目の前に置かれている唐揚にもう一度手を伸ばす。

それを見て佐藤が深夜に声をかける。


「お前唐揚好きだなぁ」

「晩飯食ってねぇから腹減ってんだよ。他の料理は皿とかないから取れないし」


深夜の言うとおり唐揚以外はサラダや刺身といった取り皿が必要な料理が多い。

だが、深夜の周りには既に使われている取り皿しかなく、新しい取り皿がないので深夜は唐揚しか口にしてないのだ。


「なんだよ、そうなら早く言えばいいのに」

「長居するつもりはなかったし」

「あ、なら深夜。このお皿使って」

「サンキュ。ちょっと借りるな」

「うん。私ちょっと御手洗い行ってくる」

「あぁ。そこ出て左に看板でてるから」

「うん」


そういって柚子葉は席を立ち、深夜は柚子葉の取り皿に料理を載せていく。

二人の会話の一部始終を聞いていた佐藤は美智子に話しかける。


「な?なんか普通にお似合いだろ?」

「う、うん。なんだろ、自然すぎて声をかけれなかった」

「そうかぁ?こんなもんじゃねぇの」


そういいながら深夜は料理をどんどん口に入れていく。

佐藤は深夜の食べっぷりを見ながらふと周りを見ると永沢の姿が見えないことに気づいた。

恐らくトイレだろうと思い、飲み物を口に含むと思い出したように深夜に声をかけた。


「そういえば山上」

「あ?」

「お前本当にたまたまこの近くにいたのか?」

「…いや、柚子が心配だったから。悪いか?」

「ちげぇよ。お前が山下についての独占欲が強いのは良く知ってる。で、どういう心配したわけ?」

「…俺さ、姉貴と姉貴の旦那と一緒に暮らしてる…ような生活してんだよ」

「なんだよ、その微妙なニュアンス」

「そこは今回の話には関係ないからおいといてくれ。で、今日同窓会だって言ったら姉貴達が言うんだよ。『こういう同窓会で付き合いだす人がいる』って」

「それで来たのか?」

「…それって柚子葉のことを信じてないってこと?」


深夜と佐藤の会話に美智子が口を挟む。

深夜は美智子に視線を向けると笑みを浮かべながら手を横に振って否定する。


「違う違う。これだけなら俺も笑って流した。『柚子はそんなことで付き合う奴じゃない』って姉貴達も分かって言ってるんだよ。ただ、次の言葉にはさすがに心配になった」

「なんて言ったんだ、そのお姉さん?」

「『こういう時期だと力づくで行動する奴がいる』って言われたんだよ。そうなると心配になるだろ、普通」

「こういう時期ってどういうこと?」

「これからいろんなところに行くだろ?県外に行ったりとか。そうなるとこんな風に会う機会もかなり減るから気になってた子に告白したりする奴がいるんだと。で、そうなっても柚子は断ってくれると俺は思ってる。けど、柚子が断ったとしても相手の男に、もし力づくで何かされても抵抗できないだろ。そう考えると心配になってな、結局店の近くの喫茶店で終わるの待ってた」

「…それ本当だったら山上すぐにトイレに行け」

「あ?」

「山下のこと好きそうなやつが今この部屋にいないんだ」

「…行ってくる」


佐藤の言葉を聞いて深夜はすぐに立ち上がり部屋を出て行く。

その後姿を見ながら佐藤と美智子は顔を見合わせる。


「…あの人、本当に柚子葉のこと大事にしてるんだ」

「あんな姿を見たら納得するだろ?山上は本当に山下のこと大事にしてるって。それよりも俺達も行くぞ」

「え?」

「あいつ、山下の事になったら何するか分からないからなぁ」


佐藤は一口飲み物を口に入れて立ち上がって深夜の後を追う。

美智子も慌てて佐藤の後を追った。

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