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完結後番外編  作者: タカ
家族or兄妹orカップル?
26/26

プレゼント

聖慈が雫に渡したものは・・・

キッチンの方から物音が聞こえる…。

その音で目が覚めた聖慈は布団に入ったまま、枕元に置いてある時計に手を伸ばす。

目覚ましが鳴る10分前だ。だが、自分の隣に寝ているはずの雫の姿はない。

さっきの音は恐らく朝食の支度をしているのだろう。

目覚ましが鳴らないように設定を変え、聖慈は寝室からリビングへと繋がるドアを開ける。

リビングへ入り、キッチンの方へ視線を向けるとやはり雫が朝食の支度をしていた。

朝食の支度をしている雫へと近づき声をかける。


「おはよう」

「あ、おはよう。もうすぐできるから座ってて」


雫に言われ、聖慈はテーブルに腰を降ろし、テーブルの上に置かれていた新聞を手に取る。

社会人であり、営業の仕事をしている聖慈に取って情報収集は欠かせない。

その間に雫が朝食の準備をするというのが毎朝の流れになっていた。


「聖慈さん、ご飯出来たから新聞読むのは止めてね」


朝食を作り終えた雫が料理を運んできた。

伊集院家では朝食は米を中心とした和食だった。小さい頃からその習慣で育ってきた聖慈達は今でも朝食は和食だ。

焼き魚、玉子焼き、味噌汁、海苔…まさにこれぞ和食と言うメニューがテーブルの上に並べられた。


「よし、いただきます」

「いただきます」


一口おかずを口にした聖慈は感想を述べる。


「うん、相変わらず上手い」


この回答も毎朝の定番となっている。

慣れ親しんだ母親の味に元々そっくりな雫の味付けはさらに聖慈への好みにあうようにどんどん変わってきている。

朝食をぺろりと平らげた聖慈が先に洗面所を使い、その間雫が洗いものを済ませる。

洗面所での支度を終えた聖慈が戻ってくると洗いものを交代し、今度は雫が洗面所へと向かう。

そして、その後は各自支度を行う。聖慈はスーツに着替え、雫もまた学校の制服へ袖を通す。

先に聖慈が部屋を出るため、雫は制服姿のまま見送る。


「じゃあ、行ってきます。今日は営業会議があるから遅くなるから先に飯食べてていいからな」

「うん、分かった」


そう言うと聖慈と雫は顔を近づけ唇を合わせる。いわゆる、行ってらっしゃいのキスだ。


「…ん?」


唇を話した聖慈が雫をじっと見つめて来た。


「聖慈さん、どうかしたの?」

「…いやなんでもない。んじゃ行ってくる」


そう言って聖慈は家を出ていった。

先ほどの聖慈の行動を思いかえし、『なんだったんだろう』と雫は疑問には思ったが気にしてもしょうがないと考えて自分もカバンを持って部屋を出た。


      ◆      ◆      ◆      ◆      ◆


営業として外回りをしていた聖慈は次の約束をしている会社へと足を向けていた。

このまま順調にいけば約束よりもかなり早く着いてしまう。

どこか喫茶店でも入って時間を潰そうかとも考えたが、今朝の事を思い出した。


「この辺に薬局とかなかったっけ…」


聖慈は自分の頭の中に地図を拡げる。

自分の記憶が正しければもう少し行った先に薬局があったはずだ。

まだ約束の時間まで余裕もある事だし、聖慈は薬局へと足を向けた。


      ◆      ◆      ◆      ◆      ◆


その日の夜。

学校、そして少しだけの芸能の仕事を終えた雫は家でゴロゴロしていた。

既に食事も終え、風呂にも入っている。後は寝るだけと言う状態で聖慈が帰ってくるのを待っていた。

雑誌をめくっていると玄関のドアが開いて少し疲れた様子の聖慈が入ってきた。


「ただいま…」

「おかえり。…どうかしたの?」

「会議が長引いて疲れただけだよ」


そういって聖慈は雫の横を着替えるために通り抜けようとしたがふと思い出してカバンからあるものを取りだした。


「雫、これ」

「え?わっ…」


聖慈が急に何か投げて来たので雫はつい取り損ねてしまった。

雫はそれを拾い上げると自分の目線へと持ち上げた。


「これ…リップクリーム?」

「そ。雫、少し唇荒れ始めてるぞ」

「え!?嘘!」


雫は自分の唇を触るがそれほど荒れてる印象はない。

聖慈は上着を椅子にかけると雫に近づき、あごを持ち上げる。


「今は少しだけだけど、これから乾燥してくるし予防しといたほうがいいだろ」

「うん!ありがとう、聖慈さん」


雫が笑顔でお礼を言うと聖慈も笑顔で雫の頭を撫でる。


「ま、こんな小さいものだけど俺からのプレゼントとして受け取ってくれ」

「うん!ありがとう!」


また聖慈は雫の頭を一撫でし、雫の手にあるリップクリームを取る。

そして、雫に上を向かせ塗ってやろうとする。


「ほら、塗ってやるから上向け」

「…自分で塗れるよ」

「いいから」


聖慈の言葉に雫は観念したように上を向く。

すると、聖慈は雫の唇にリップクリームではなく自分の唇を当てた。

最初は驚いた雫だが、ゆっくりと目を瞑った。

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