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完結後番外編  作者: タカ
Change The Relation×Promise
22/26

Triple Date 2話

トリプルデートの当日。

深夜と柚子葉は待ち合わせ場所となった駅の改札近くに立っていた。

元々優衣以外の5人は家が近いこともあって、5人が集まりやすい駅に集合しようと衛が言い出したのだ。

ただ、優衣の家は少し遠いので『伊藤は少し大変じゃないか?』と深夜が衛に聞くと、『前日に俺の家に泊まらせる』と言っていた。

それなら大丈夫だろうと言う事で、駅に集合することになった。

深夜と柚子葉は駅で朝食を取ろうということで早めに家を出たが、出るのが早すぎたようで朝食を取って駅の改札についたのが集合時間20分前だった。

二人で待っていると、集合時間10分前になって翔と華が待ち合わせ場所にやってきた。


「二人とも、おはようさん」

「おはよう」


翔と華が朝の挨拶をしてきたので、深夜と柚子葉も挨拶を返す。


「うっす」

「おはよう」


通行人の邪魔にならないように、4人は固まって残った衛と優衣を待つことにする。

携帯を開き、今の時間を確認してから翔は深夜に声をかける。


「俺らも早く来たつもりだったけど、そっちも早かったな」

「あぁ、駅で朝飯を食べるからってことで早めに出たんだけど、早すぎた」

「なるほどね」


深夜と翔が話をしている横で柚子葉と華もまた会話をしている。

その内容はあの、柚子葉が誤解したときのことを華が謝るものだった。


「この前は本当にごめんなさい。誤解させたよね?」

「ううん、気にしないでください。私が勝手に勘違いしただけですし、中田さんが気にすることないです」

「あれ?華、山下と会ったことあるっけ?」


柚子葉と華の会話が聞こえてきた翔は首をかしげる。

華は翔の疑問に一つうなずいて答える。


「うん。翔君の誕生日プレゼントを山上君と探してたら偶然に会ったの」

「そういえば深夜と探したって言ってたもんな。なに、それを見て山下は深夜が浮気したと思っちゃったとか?」


翔はからかうように言うが、まさしくその通りだ。

翔の言葉を聞いて固まる柚子葉と華を見て逆に翔はあわてる。


「え?マジで…?」

「俺が柚子に中田と会うってことを伝えてなかったのが悪かったんだよ。ま、なんとかその誤解は解けたけど」


慌てる翔に深夜はそのときのことについてフォローを行う。

そして、柚子葉と華に対しても声をかける。


「その誤解を生んだ俺が言うのもおかしな話だけど、せっかくこうして一緒に遊べるんだしそのことは忘れて楽しまないか?」

「…うん、そうだね」


深夜の言葉に柚子葉がうなずいたことを確認して、深夜が華に声をかける。


「で、凄い今更だがちゃんと紹介していなかったよな?俺の彼女の山下柚子葉」

「本当に今更だね。山下さん、よろしくね」

「こちらこそ」


深夜が柚子葉を紹介すると、華は笑顔で柚子葉に話しかけ、柚子葉もまた笑顔で応える。

そして、華は少し気まずそうに声を出す。


「あ、同級生だしこれから仲良くしたいから華って呼んで。…柚子葉ちゃんって呼んでもいい?」

「うん」


華と柚子葉の会話を聞いていて深夜は一安心した。

何しろ出会った時がほぼ最悪と言っていいシチュエーションだったため、心配だったのだが、お互いが近寄ってコミュニケーションを図ってくれたことでその心配も少し晴れたので安心できた。

柚子葉と華を見詰めていた深夜に翔が話しかける。


「…どうにか仲良くなれたみたいだな」

「あぁ。とは言ってもまだ少しぎこちないみたいだし、今日次第ってところかな」

「ま、俺らもサポートすればいいだろ。それよりも衛達遅いな」


翔は駅に付けられている時計を見詰める。

深夜も時計を見ると集合時間の5分前になっていた。


「遅いって言ってもまだ5分前じゃないか」

「いや、こういう時は大体少し早めにくるもんだろ」

「翔…、衛が朝の集合時間に間に合う事今までにあったか?」

「…無かったな」

「だから、衛が遅刻してもいいように集合時間を少し早めにしたんだよ。柚子やお前、中田には悪いとは思ったけど」

「なるほどね。少し早いんじゃないかとは思ってたけど、そういう意図があったのか」


深夜の言葉を聞いて翔は納得したように頷いた。

確かに今から行く遊園地はここから少し遠い。とはいっても、こんなに早く集まる必要はない。


「とはいっても…伊藤がいるから集合時間に間に合うと思ったんだけどなぁ…。あいつも寝坊癖あるのかなぁ」

「伊藤?」


深夜が呟いた言葉の中で聞き慣れない人名が出てきたので、翔が深夜に聞くと深夜は『あぁ、そっか』と思い出したように呟いた。


「衛の彼女。まだ名前も言ってなかったっけ?」

「聞いてないよ。っていうか、どんな子なのかすら聞いてないんだけど」

「あー、それは本人に会ってからのお楽しみだろ。ま、普通の優等生って感じだな」

「俺らと同級生?」

「いんや、高一。衛の後輩だよ」

「衛の後輩ってことは華の後輩でもあるってことか」

「…私がなに?」


翔の声が聞こえたのか、華が会話に入ってきた。


「あぁ、衛の彼女のこと。華の後輩らしいよ」

「え?そうなの?」

「あぁ。南高校の一年だから、お前と衛の後輩になる」


衛と華、それに優衣は一緒の高校、南高校に通っている。

衛と華は高校三年、そして優衣は高校一年なのであまり接点は無い。

そして、学校では衛と華自体もそんなに話すことはないのだろう。衛が付き合いだしたということもついこの間知ったらしい。


「そうなんだ…。彼女さんの名前は何なの?」

「伊藤優衣、っていっても知らないだろ?」

「…うん、知らない」

「ま、会ってのお楽しみだな。そろそろ来るだろうし」


だが、集合時間を10分以上過ぎても衛と優衣が来る気配は一向にない。

少し心配になった深夜は衛に電話をかけるが、コール音が鳴るだけで出る気配はない。


「…駄目だ。出ないぞ」

「衛だから10分ぐらいは許容範囲ではあるけど、連絡が無いのは少し心配だな」


と、話していると遠くから走ってくる人がいる。

それは一目散に深夜達の所にやってきた。


「ハァ…ハァ…、すいません!遅くなりました!」


やってきたのは優衣だ。

急いできたのだろう、息が乱れている。

優衣の後ろからゆっくりと衛がやってきた。


「うっす。遅くなった」

「遅いわ。遅刻するならするで連絡しろよ」

「連絡するより急いできたことを褒めてくれ」


と、深夜と衛が会話をしていると息を整え終わった優衣が口を挟む。


「衛先輩、遅れるって連絡してなかったんですか!?」

「あぁ」

「あぁって…、私言いましたよね!遅れそうだから連絡お願いしますって。衛先輩、『分かった』って言ったじゃないですか!」

「あ~も~、面倒だったんだから仕方ないだろ!細かい事をグチグチ言うなよ!」

「細かくないですよ!」


来て早々口げんかを始めた衛と優衣を心配そうに見つめるのは華で、少し驚いたように見ているのは翔。

深夜と柚子葉は、以前遊園地のチケットを手に入れた日に衛と優衣の簡単な口げんかを見ているので少し慣れているが、衛達の声に駅の中にいる人が反応して見てくるには耐えられない。


「おい、駅の中で喧嘩するのは止めとけ。で、遅れた原因は?」

「優衣が寝坊した」

「なんで、そう簡単に嘘がつけるんですか!」


衛から出た言葉に即座に優衣が反論する。


「寝坊したの衛先輩じゃないですか!」

「しょうがないだろ。昨日遅くまでゲームしてたんだから」

「それも衛先輩がいけないんじゃないですか…。しかも、簡単に認めるんなら嘘つかないでくださいよ…」


喧嘩なのか漫才なのかよく分からない会話をまた繰り広げる衛と優衣に深夜は一つ溜息をつく。


「お前らが仲がいいのは分かった。とりあえず、翔達に伊藤の事を紹介した方がいいんじゃないか?」

「あぁ、そっか」


と言うと、衛は優衣の隣に立ち背中に手を添える。


「これ、俺の彼女の伊藤優衣。南高校の一年で俺の後輩」

「伊藤優衣です。よろしくお願いします」


衛に紹介された優衣が自己紹介をした後、頭を下げる。

優衣が頭を上げた後に、翔が笑顔で優衣に近づく。


「俺、前田翔。衛の幼稚園からの幼馴染なんだ。よろしくね」

「あ、衛先輩から少し話しを聞いてます。よろしくお願いします」

「そっか。あ、俺の彼女の中田華。君と同じ南高校の三年なんだ」

「中田華です。よろしくね」


翔に紹介された華が優衣に手を差し出し、優衣も『よろしくお願いします』と言いながら華と握手する。

華は優衣の手を離すと衛の方を軽く睨む。


「衛君、どうして彼女ができた事言ってくれなかったの?」

「んなこといっても、違うクラスということもあって元々学校でも廊下ですれ違うぐらいでそんなに話さないからなんか言うタイミングを逃してさぁ」

「もっと早くに紹介して欲しかったなぁ。ねぇ、翔君?」

「そうだぞ、衛。しかも、深夜と山下には紹介しておいて俺達にだけ内緒なんておかしいだろ」


翔も加わり二人から責められ、衛は少し困惑気味に退いた。

とりあえず遊園地の入園時間もある事だし深夜はひとまず助け船を出すことにした。


「まぁ、詳しい事は後からゆっくりと聞けばいいさ。とりあえず移動しないか?」

「そ、そうだな。早く行こうぜ」


深夜の言葉に助かったと言わんばかりに衛は同意し、近くにいた優衣の手を引っ張って改札へと逃げるように向かっていく。

残った4人は顔を見合わせると苦笑いを浮かべ、衛達の後を追って改札に向かう。

こうして、6人のトリプルデートは始まった。

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